「着物の袖丈直しは、どのような工程で進めるの?」
「袖を短くしたり長くしたりするには、どんな作業が必要なの?」
手持ちの着物の袖丈が合わず、お直しを考えていても、具体的な作業内容がわからないと不安ですよね。
袖丈直しは、現在の寸法を確認し、必要な縫い目を解いて、希望する長さに仕立て直す作業です。
ただし、着物の構造や生地の状態によって工程は異なります。
この記事では、次の3つのポイントを解説します。
- 袖丈直しの基本的な工程と作業の流れ
- 袖丈を短くする場合・長くする場合の具体的な手順
- 失敗を防ぐ注意点と、自分で直せるかの判断基準
大切なのは、長襦袢とのバランスや生地の余裕を確認してから作業することです。
着物をきれいに整えるために、袖丈直しの工程を順番に見ていきましょう。
Contents
着物の袖丈直しとは?工程と流れを最初に確認

着物の袖丈直しとは、袖の縦の長さを希望する寸法に仕立て直すことです。
譲り受けた着物やリサイクル着物の袖丈が合わない場合、必要な部分を解いて縫い直し、着用しやすい長さに整えます。
基本的な流れは、寸法の確認から始まり、縫い目を解く、長さを調整する、縫い直す、仕上げるという順番です。
ただし、短くする場合と長くする場合では、作業の進め方が異なります。
また、袖丈と裄丈は混同しやすい寸法です。
違いを理解していないと、直す必要のない部分を調整してしまうこともあります。
ここでは、袖丈と裄丈の違い、袖丈直しの5つの工程、短くする場合と長くする場合の違いを確認しましょう。
袖丈直しとは?袖丈と裄丈の違いも解説
袖丈直しは、袖山から袖底までの縦の長さを調整するお直しです。
一般的な着物では約49cm(1尺3寸)が袖丈の目安として使われますが、着物の種類や仕立てられた時代によって寸法は異なります。
振袖のように、長い袖を特徴とする着物もあります。
一方、裄丈(ゆきたけ)は、背中心から肩を通って袖口までの長さです。
袖丈が袖の縦方向を表すのに対し、裄丈は腕の長さに関係します。
たとえば、腕を下ろしたときに袖口が手首より大きく上がって見える場合は、袖丈ではなく裄丈を確認します。
裄の見え方は、着付けによって調整できる場合もあります。
ちなみに、「着方だけで裄を長くする方法」では、衿の合わせ方を工夫し、着付けによって裄を長く見せる方法を詳しく解説しています。
ただし、これは裄の見え方を調整する方法であり、袖丈そのものを長くするお直しではありません。
まずは、直したい部分が袖丈なのか裄丈なのかを正しく見極めましょう。
袖丈直しの基本的な5つの工程
袖丈直しは、一般的に次の5つの工程で進めます。
- 寸法を確認する
現在の袖丈を測り、希望する仕上がり寸法を決めます。 - 必要な縫い目を解く
袖底など、寸法変更に必要な部分を丁寧に開きます。 - 長さを調整する
新しい袖底の位置を決め、縫い込みや縫い代を調整します。 - 袖を縫い直す
仕立て方に合わせて縫製し、袖の丸みを整えます。 - 仕上がりを確認する
左右の寸法や縫い目を確かめ、必要な仕上げを行います。
この5工程は、袖底を中心に寸法を変更する場合の基本的な流れです。
実際には、裏地のある袷や、柄の位置を調整する必要がある着物では、袖を大きく解いて作り直すこともあります。
また、袖底の角にある「丸み」は、仕上がりを左右する部分です。
希望する寸法に合わせるだけでなく、左右の形をそろえる必要があります。
工程の全体像を把握しておくと、どの段階で何を確認すべきかがわかり、お直しを依頼するときにも役立ちます。
袖丈を短くする場合と長くする場合の違い
袖丈直しには、袖を短くする「袖丈詰め」と、長くする「袖丈出し」があります。
袖丈詰めは、現在より短い位置に袖底を作り直す方法です。
余った生地を内側に残すか、必要に応じて裁断して仕上げます。
一方、袖丈出しは、内側に折り込まれた生地を利用して袖を長くする方法です。
使える生地の量によって、変更できる寸法が決まります。
それぞれの違いを整理すると、次のとおりです。
| 比較項目 | 袖丈詰め | 袖丈出し |
| 目的 | 袖を短くする | 袖を長くする |
| 主な作業 | 新しい位置に袖底を作る | 縫い込みを利用して袖底を下げる |
| 主な制約 | 柄の位置や余る生地の処理 | 生地の余裕や以前の折り跡 |
| 確認事項 | 生地を残すか裁断するか | 希望する長さまで出せるか |
袖丈詰めは余分な生地の扱い、袖丈出しは使える生地の量が重要です。
どちらも、希望する寸法と実際に可能な仕立て方を確認してから進めます。
袖丈直しの前に確認したい寸法と準備

袖丈直しをきれいに仕上げるには、作業前の確認が欠かせません。
希望する長さだけを決めても、長襦袢と合わなかったり、生地の余裕が足りなかったりすると、思いどおりの仕上がりにならないためです。
特に、袖丈を長くしたい場合は、内側に残された生地を使えるかどうかが重要になります。
また、柄の位置や生地の傷みも、作業方法を決める判断材料です。
事前に確認しておけば、どの程度の寸法変更ができるのか、専門店に相談すべき点は何かを整理できます。
ここでは、現在の袖丈と仕上がり寸法の測り方、長襦袢とのバランス、縫い込みや生地の確認方法を解説します。
現在の袖丈を測り、希望する仕上がり寸法を決める
袖丈直しの最初の準備は、現在の寸法と希望する仕上がり寸法を明確にすることです。
着物を平らに広げ、袖山の上端から袖底までを測ります。
左右の袖をそれぞれ確認し、長さに違いがないかも調べておきましょう。
たとえば、現在の袖丈が53cmで、49cmに直したい場合は、4cm短くする計算です。
ただし、一般的な袖丈の目安だけで仕上がり寸法を決める必要はありません。
着用する長襦袢や着物の種類に合わせて判断します。
採寸したら、次の3つを記録しておくと便利です。
- 現在の袖丈
- 希望する仕上がり寸法
- 変更したい長さ
専門店に依頼する場合も、「少し短くしたい」と伝えるより、数字で希望を示した方が正確です。
なお、測った寸法はあくまで仕上がりの長さです。
実際に縫う位置や必要な縫い代は別に考えるため、採寸した線をそのまま裁断位置にしないよう注意しましょう。
長襦袢の袖丈とのバランスを確認する
着物の袖丈を変更するときは、長襦袢の寸法も一緒に確認します。
着物と長襦袢の袖丈が合っていないと、袖の内側で生地が余ったり、長襦袢の振りが着物からのぞいたりすることがあります。
まずは両方の袖丈を測り、重ねたときに無理なく収まるかを確かめましょう。
長襦袢の袖丈が長い場合は、着物ではなく長襦袢側を調整する方法もあります。
動画「襦袢の振りが着物よりも長い時の対処法」では、長襦袢の脇の下付近をつまみ、袖の長さを調整する方法を紹介しています。
これは長襦袢側で行う調整であり、着物の袖底を縫い直す袖丈直しとは異なります。
また、長襦袢の袖が着物から出る原因は、袖丈だけとは限りません。
裄丈の違いによって袖口から見えてしまう場合もあります。
こちらは動画「襦袢の袖が着物から飛び出す時の対処法」でも解説しています。
着物と長襦袢のどちらに調整が必要なのか、袖丈と裄丈を区別して判断しましょう。
縫い込み・柄の位置・生地の状態を確認する
袖丈直しの可否を判断するには、着物の内側と表面の状態も確認します。
まず、袖底に残っている「縫い込み」を調べましょう。縫い込みとは、仕立てる際に内側へ折り込まれた生地のことです。
袖丈を長くする場合は、この生地を利用します。
ただし、縫い直すための縫い代も必要なので、縫い込みの長さをすべて袖丈に加えられるわけではありません。
次に確認するのが柄の位置です。
袖底に近い部分に模様がある着物では、袖丈を変えると柄の見え方も変わります。
特に訪問着や振袖などは、仕上がりの印象を考えて作業方法を決める必要があります。
さらに、以前の折り跡や色ヤケ、生地の傷みも確認してください。
長く折り込まれていた部分を表に出すと、元の折り目や色の違いが目立つ場合があります。
希望する寸法に直せることと、きれいに仕上がることは別の問題です。
生地の余裕だけでなく、仕上がりの見た目まで確認してから、お直しの方法を決めましょう。
袖丈を短くする場合の工程と具体的な手順

袖丈を短くする「袖丈詰め」は、現在より短い位置に袖底を作り直すお直しです。
長めに仕立てられた着物を着用しやすい寸法に整えるときなどに行います。
基本的には、必要な縫い目を解き、新しい袖底の位置を決めて縫い直します。
ただし、袖の角には丸みがあるため、単純に一直線に縫えば完成するわけではありません。
ここでは、単衣の着物で袖底を調整する場合を基本例として説明します。
実際に解く範囲や縫い方は、元の仕立てによって異なります。
作業は、縫い目を解く、印を付ける、袖底と丸みを縫い直す、仕上げを確認するという4工程です。順番に見ていきましょう。
工程① 袖底の縫い目を解いて必要な部分を開く
袖丈詰めでは、新しい袖底を作るために必要な縫い目を解きます。
単衣の着物では、袖底や丸みなど、寸法調整に関係する部分を開くのが基本です。
ただし、元の縫い方や変更する寸法によって、解く範囲は変わります。
作業には、糸切りばさみやリッパーを使います。
糸を一度に引き抜こうとせず、縫い目を確認しながら少しずつ解きましょう。
特に正絹は、無理な力を加えると生地を傷める原因になります。
縫い目を解いたら、元の折り目や縫い代の状態を確認します。
この段階で重要なのは、必要以上に生地を解かず、元の仕立てを把握することです。
袖の構造がわからないまま作業を進めると、縫い直す位置や丸みの作り方を判断できなくなります。
袷の着物は表地と裏地が組み合わされているため、単衣と同じようには扱えません。
構造を確認できない場合は、無理に解かず専門店に相談してください。
工程② 希望する袖丈を測って印を付ける
縫い目を解いたら、新しい袖底の位置を決めます。
着物を平らに広げ、袖山から希望する仕上がり寸法を測りましょう。
左右の袖は同じ基準から測り、寸法がそろうようにします。
例えば、袖丈53cmを49cmに変更する場合、新しい袖底は元の位置より4cm上になります。
ただし、仕上がり寸法の位置と、生地を切る位置は異なります。
縫い直すための縫い代が必要なので、仕立て方に合わせて印を付けることが重要です。
印付けには、和裁用のへらや、糸で位置を示す切りじつけなどを使います。
表地に消えにくい跡を残さないよう、生地に合った方法を選びましょう。
また、袖底の角にある丸みも、新しい寸法に合わせて位置を決めます。
この段階では、まだ生地を切らない方が安全です。
寸法を測り直し、縫い代を確保できていることを確認してから、必要な処理を判断しましょう。
工程③ 袖底を縫い直し、袖の丸みを整える
新しい袖底の位置が決まったら、元の仕立てに合った方法で縫い直します。
袖底の縫い方は、着物の種類や仕立て方によって異なります。
単衣では縫い代を適切に収め、表から縫い目が不自然に見えないよう仕上げます。
特に丁寧に整えたいのが、袖口側の下角にある「丸み」です。
丸みは、袖の角を自然な曲線に仕上げる部分です。袖丈を短くした後も、左右の形をそろえる必要があります。
丸みを作る際には、丸み型などを利用し、縫い代を曲線に沿って収めます。
布が一か所に重なると、角に厚みや凹凸が出るため注意してください。
また、和裁では縫い目を表に出にくくするために「キセ」をかける技法があります。
キセとは、縫い目に少し布をかぶせる仕立て方です。
ただし、丸みや縫い代の具体的な処理は、元の仕立てに合わせて選ぶ必要があります。
寸法だけを優先せず、袖底の線と角の形が自然につながるように整えましょう。
工程④ 左右の寸法と縫い目を確認して仕上げる
縫い直しが終わったら、左右の袖を比較して仕上がりを確認します。
まず、袖山から袖底までを測り、希望する寸法になっているかを調べましょう。
左右の長さがそろっていることが基本です。
次に、袖底の線と丸みを確認します。
袖の角が片方だけ大きくなっていないか、縫い代の厚みが表に響いていないかを見てください。
縫い目に引きつれや糸の緩みがないことも重要です。
仕上げには、素材に適した方法でコテやアイロンを使います。
ただし、正絹などの生地は熱や水分の影響を受けるため、強く押さえたり、安易に蒸気を当てたりしないよう注意が必要です。
最後に着物を広げ、袖が自然に下がるかを確認します。
左右の寸法・袖底の線・丸み・縫い目の4点が整っていれば、袖丈詰めの基本的な仕上げは完了です。
実際に着用する前には、長襦袢と重ねた状態でも袖の収まりを確認しておきましょう。
袖丈を長くする場合の工程と具体的な手順

袖丈を長くする「袖丈出し」は、袖底の内側に残された生地を利用して、現在より長い寸法に仕立て直すお直しです。
袖丈詰めと大きく異なるのは、希望する長さまで必ず伸ばせるわけではないことです。
内側の生地が足りなければ、袖底を下げることはできません。
また、以前の折り目が表に現れることもあるため、寸法だけでなく仕上がりの見た目も考える必要があります。
ここでは、使える縫い込みを確認する、縫い代を調整して縫い直す、折り跡や色ヤケを確認するという3つの工程を解説します。
袖丈を長くする際の判断ポイントを押さえておきましょう。
工程① 袖底の縫い込みを確認し、必要な縫い目を解く
袖丈出しでは、最初に袖底の縫い込みを確認します。
たとえば、袖丈49cmを53cmに変更したい場合は、4cm長くする必要があります。
しかし、内側に4cmの生地が残っていても、そのすべてを袖丈に使えるわけではありません。
新しい袖底を縫うための縫い代が必要だからです。
まずは、希望する長さを出した後も、十分な縫い代を確保できるかを確認します。
対応できると判断したら、袖底や丸みなど、必要な縫い目を丁寧に解きます。
このとき、無理に生地を引っ張らないようにしましょう。
長年折り込まれていた部分には、折り癖が付いていることがあります。
縫い込みを使い切って長さを優先するのではなく、縫製に必要な余裕を残すことが重要です。
また、袷の場合は表地だけでなく裏地の余裕も必要になります。
どちらか一方の生地が不足している場合は、別の仕立て方法を検討しなければなりません。
工程② 縫い代を調整して希望の袖丈に縫い直す
使える生地を確認したら、新しい袖底の位置を決めます。
袖山から仕上がり寸法を測り、左右の袖に印を付けましょう。
袖丈を長くする場合は、元の縫い込みを表側へ出すため、袖底の縫い代が以前より狭くなることがあります。
ただし、必要な縫い代を確保できない状態で縫い直すのは避けてください。
縫い目が弱くなったり、生地がほつれたりする原因になります。
縫う位置が決まったら、仕立て方に合わせて袖底を縫い直します。
袖丈を変更すると、袖口側の丸みも新しい位置に合わせて整える必要があります。
元の曲線をそのまま使えるとは限りません。
袷の着物では、表地と裏地の長さや収まりを合わせながら作業します。
長さを出すことだけでなく、縫い代の強度と袖の形を保つことが大切です。
縫い直した後は、左右の袖丈を測り、予定した寸法に仕上がっているか確認しましょう。
工程③ 折り跡や色ヤケを確認して仕上げる
袖丈出しでは、縫い直した後に以前の折り跡が目立つことがあります。
内側に折り込まれていた部分は、長い間同じ位置で折られていたため、筋状の跡が残っている場合があるからです。
また、表に出ていた生地だけが日光などで退色し、内側の生地との間に色の差が生じることもあります。
このような色の違いは、縫い直しただけでは解消できません。
折り跡については、専門的な仕上げや「筋消し」と呼ばれる加工で目立ちにくくできる場合があります。
ただし、折り跡や色ヤケが必ず消えるわけではありません。
特に正絹は、熱や水分の扱いを誤ると生地を傷めるため、家庭用アイロンで強く押さえることは避けましょう。
仕上げでは、袖底の線が自然に整っているか、以前の折り目がどの程度見えるかを確認します。
袖丈出しは、希望する長さに変更できても、見た目に影響が残ることがあります。
仕上がりの状態を含めて、無理のない方法を選ぶことが重要です。
袖丈直しで失敗しないための注意点

袖丈直しでは、寸法が合っていることと、着物がきれいに仕上がることの両方が大切です。
特に注意したいのが、仕立ての構造、袖の形や柄の位置、そして生地を切るかどうかという判断です。
これらは作業方法だけでなく、着物を将来どのように使えるかにも関係します。
一度裁断した生地は元に戻せません。
また、仕立ての違いを理解せずに作業すると、表地と裏地のつり合いが崩れることもあります。
ここでは、単衣と袷の違い、丸みや柄合わせによる仕上がりへの影響、生地を残すか裁断するかの考え方を解説します。
大切な着物を長く使うための判断基準として確認してください。
単衣と袷では袖丈直しの工程が異なる
袖丈直しの難しさは、着物の仕立て方によって変わります。
単衣(ひとえ)は裏地のない着物です。
袖の構造が比較的シンプルなため、縫い代の状態を確認しやすく、袖底の調整方法も把握しやすい特徴があります。
一方、袷(あわせ)は表地と裏地を合わせて仕立てた着物です。
袷では、表地だけを希望する長さに変更しても、裏地とのつり合いが合わなければきれいに仕上がりません。
例えば、裏地が短すぎると袖底が引っ張られ、反対に余りすぎると内側でたるみが生じます。
また、袖の構造によっては、表地と裏地をそれぞれ調整するために、解く範囲が広がります。
そのため、単衣と袷を同じ手順で直せると考えないことが重要です。
特に袷の着物は、完成した状態では見えない部分にも仕立ての工夫があります。
和裁の経験が少ない場合は、表地と裏地のつり合いを自己判断で変更せず、専門店に相談する方が安心です。
袖の丸みや柄合わせによって仕上がりが変わる
袖丈直しでは、袖の形と柄の見え方も仕上がりを左右します。
袖口側の下角にある丸みは、着物の袖を自然な形に見せる部分です。
左右の丸みがそろっていなかったり、角に不自然な厚みが出たりすると、袖を下ろしたときの印象が変わります。
また、訪問着や付け下げ、振袖など、袖に柄が入った着物では模様の位置にも注意が必要です。
特に袖底に近い部分に柄がある場合、丈を短くすると模様が隠れたり、途中で切れたりすることがあります。
柄の見え方を優先したい場合は、袖底だけを直す方法では対応できないこともあります。
その場合は、袖を大きく解いて位置を調整し、作り直す方法を検討します。
ただし、柄のつながりや生地の余裕によって、対応できる範囲は異なります。
専門店に依頼するときは、希望する袖丈だけでなく、残したい柄や仕上がりの印象も伝えましょう。
寸法と見た目の両方を確認することが、納得できるお直しにつながります。
生地を切る前に縫い代と将来のお直しを考える
袖丈を短くするときは、余った生地を内側に残す方法と、切り落とす方法があります。
生地を切れば内側の厚みを抑えやすくなりますが、裁断した部分は元に戻せません。
例えば、今は短い袖丈で着用していても、将来、家族に譲る際に長さを変更したくなることがあります。
そのため、思い出のある着物や、今後も仕立て直して使いたい着物では、生地を残せるか検討しておくことが大切です。
ただし、余った生地を多く縫い込むと、袖底が厚くなったり、表側に響いたりすることもあります。
生地を残すことが、必ずしも最もきれいな仕上がりにつながるわけではありません。
現在の着姿を優先するのか、将来の仕立て直しに備えるのかによって、適切な方法は変わります。
裁断する前に、どの程度の生地を残せるか、再び袖丈を変更する予定があるかを確認しましょう。
判断に迷う場合は、専門店に生地を残した場合と裁断した場合の仕上がりを相談すると安心です。
袖丈直しは自分でできる?専門店に依頼する場合との違い

袖丈直しの工程を理解すると、自分で作業できるか気になる方もいるでしょう。
単衣の着物であれば、和裁の経験を生かして袖底を調整する方法があります。
ただし、寸法を正確に合わせるだけでなく、縫い代や丸みをきれいに仕上げる技術も必要です。
また、袷や柄のある着物では作業が複雑になるため、自分で直すより専門店に任せた方が適切な場合があります。
大切なのは、費用だけで判断せず、着物の状態と自分の技術に合った方法を選ぶことです。
ここでは、必要な道具と技術、自分で直すかどうかの判断基準、専門店に依頼する場合の流れと費用・納期を紹介します。
自分で袖丈直しをするために必要な道具と技術
袖丈直しを自分で行うには、基本的な裁縫道具と和裁の知識が必要です。
主な道具は、縫い針、生地に合った糸、糸切りばさみ、リッパー、ものさし、印付け用のへらなどです。
さらに、袖の丸みを整えるための丸み型や、仕上げに使うコテが必要になる場合もあります。
ただし、道具をそろえるだけで、きれいに袖丈を直せるわけではありません。
袖底の縫い方、縫い代の収め方、丸みの作り方など、着物特有の仕立てを理解する必要があります。
特に難しいのは、左右の袖を同じ寸法と形に整えることです。
縫い目が引きつれたり、丸みの形が違ったりすると、着用時の見た目に影響します。
和裁の経験が少ない場合は、いきなり大切な着物を解かず、練習用の布などで縫い方を確認しましょう。
作業前に袖の構造を理解できない場合は、無理に進めないことも大切な判断です。
自分で直せるケースと専門店に任せたいケース
自分で袖丈直しをするかどうかは、着物の種類と作業の難しさで判断します。
単衣の着物で、袖底の構造を理解しており、和裁の経験がある場合は、自分で直す選択肢があります。
特に、柄の位置を大きく変更する必要がなく、縫い直す範囲が限られている場合は、作業内容を把握しやすいでしょう。
一方、袷の着物、振袖、柄合わせが必要な着物は、専門店への依頼が適しています。
表地と裏地のつり合いや、柄を生かした仕立て直しには、専門的な技術が必要だからです。
また、正絹の高価な着物や、家族から受け継いだ着物も慎重に扱いたいものです。
一度生地を傷めたり、必要な縫い込みを切ってしまったりすると、元の状態に戻せません。
判断に迷ったときは、希望する袖丈と着物の状態を専門店に伝え、必要な作業を確認しましょう。
費用だけでなく、仕上がりの美しさと、今後も長く着られることを基準に選ぶのがおすすめです。
専門店に依頼する場合の流れと費用・納期の確認事項
専門店に袖丈直しを依頼する場合は、まず着物の種類と希望する仕上がり寸法を伝えます。
一般的な流れは、問い合わせ→着物の状態確認→見積もり→お直し→仕上がり確認です。
長襦袢との寸法合わせが必要な場合は、長襦袢も一緒に相談すると希望を伝えやすくなります。
費用は、着物の種類や作業内容によって異なります。
納期も店舗や混雑状況によって変わるため、着用予定が決まっている場合は早めに確認しましょう。
見積もりでは、基本料金のほかに、次の費用が含まれているかも確認しておくと良いです。
- 縫い目を解く作業や仕上げの費用
- 折り跡を目立ちにくくする筋消しなどの加工費
- 柄の位置を調整する場合の追加料金
- 配送を利用する場合の送料
袖丈を長くする場合は、希望する寸法まで出せるか、折り跡や色の違いが残るかについても説明を受けましょう。
料金・納期・仕上がりの条件を確認してから依頼することが、納得できるお直しにつながります。
まとめ
着物の袖丈直しは、寸法の確認・縫い目を解く・長さの調整・縫い直し・仕上げ確認という流れで進めます。
袖丈を短くする場合は、新しい袖底の位置を決め、丸みまできれいに整えることが大切です。
一方、長くする場合は、使える縫い込みの量によって調整できる寸法が決まります。
また、長襦袢とのバランスや着物の仕立て方、柄の位置も確認しておきたいポイントです。
和裁の経験があれば自分で対応できるケースもありますが、袷や大切な着物は専門店への依頼を検討しましょう。
袖丈直しで重要なのは、希望する長さに合わせるだけでなく、着物本来の美しさを保つことです。
工程と注意点を理解し、自分の着物に合った方法を選んで、これからも気持ちよく着続けましょう。
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
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