裁縫道具で着物の裾上げを応急処置|裾が下がる・長襦袢が見えるときの直し方 

「外出中に着物の裾が下がり、踏みそうになってしまった」

「長襦袢が裾から見えているけれど、着物を脱がずに直せる?」

「安全ピンや針を使ったら、大切な生地を傷めてしまわない?」

食事会や観劇、街歩きなど、着物で出かけている最中に裾の乱れへ気づくと焦ってしまうものです。

近くに着付けができる人がいなければ、どこを引き上げ、何で固定すればよいのか判断しにくいこともあるはず。

裁縫に慣れていない方ほど、目立たない場所を急いで安全ピンで留めたくなりますが、裾が長くなった原因によって対処法は異なります。

この記事では、次の3点を解説します。

  • 着物の裾が下がったときの直し方
  • 長襦袢が見える場合の応急処置
  • 腰紐・クリップ・安全ピン・針と糸の使い分け

裾が長くなっても、すぐに縫う必要はありません。まずは着物と長襦袢のどちらが下がっているかを確認し、おはしょりや腰紐を調整します。

縫い目がほどけている場合のみ、裁縫道具で一時的に固定するのが基本です。

生地を傷めにくい順番と、外出先でも実践しやすい直し方を知っておけば、突然の裾トラブルにも落ち着いて対応できます。

まずは、裁縫道具を使う前に確認したいポイントから見ていきましょう。

Contents

着物の裾トラブルは、裁縫道具を出す前に状態を確認する

外出中に裾が乱れていることに気づいても、すぐに安全ピンや針を使う必要はありません。

着物の裾が下がっているように見えても、実際には長襦袢の丈が合っていない場合や、着付けが緩んで布が下へ落ちているケースがあります。

一方、裾の縫い糸が切れて布が垂れているなら、着付けを整えるだけでは直せません。

誤った場所を留めると裾丈が不自然になるだけでなく、生地へ余計な負担をかける原因にもなります。

まず確認したいのは、「着物と長襦袢のどちらが下がっているか」「着崩れと縫い目のほつれのどちらに当てはまるか」という2点です。

ここからは、裾トラブルの状態を見分ける方法を順番に解説します。

着物と長襦袢のどちらが下がっているか見分ける

最初に、鏡で着物の裾を前後から確認しましょう。

着物そのものが床へ近づき、歩くたびに踏みそうになる場合は、腰紐の緩みや、おはしょりの内側にある布が下へ落ちた可能性があります。

この状態なら、裾を縫い上げるのではなく、おはしょりと腰紐を整える方法が基本です。

着物の裾丈は変わっていないのに、その内側から長襦袢が見えている場合は、長襦袢側を調整します。

丈が全体的に長いケースと、後ろのかかと付近だけが下がっている状態では、直す位置が異なるためです。

長襦袢が見えているからといって、着物の裾まで一緒に引き上げると、着物だけが短くなり、かえってバランスを崩します。

確認するときは、正面だけで判断せず、左右と後ろ側も見てください。

前は整っていても、歩いた際の動きによって後ろだけが下がっていることがあります。

どの布が、どの部分から見えているのかを確かめてから、必要な箇所だけを直しましょう。

長襦袢の丈が全体的に長い場合と、かかと部分だけ長い場合の対処法は、動画でも詳しく解説しています(※)。

※参考動画:襦袢の丈が長い時の対処法

着崩れと縫い目のほつれを区別する

次に、裾が長くなった原因が着崩れなのか、縫い目のほつれなのかを確認します。

布に破れがなく、着物の裾全体が以前より低い位置へ移動している場合は、着付けの緩みが考えられます。

おはしょりの幅が広がっていないか、腰紐の位置が下がっていないかを見てください。

着崩れであれば、内側の布を引き上げて腰紐へ挟み直すことで、裁縫道具を使わずに整えられます。

一方、裾の一部分だけがめくれている、折り返した布が垂れている、糸が長く出ているといった場合は、縫い目がほどけている状態です。

着物の丈そのものではなく、裾の折り返しを留めていた糸に問題があるため、おはしょりを引き上げても元には戻りません。

針と糸で大きく仮縫いするか、歩行に支障がある場合は内側の目立たない位置を一時的に固定します。

判断に迷ったときは、引っ張ったり強く締め直したりせず、まず裾の内側を確認してください。

着崩れなら着付けを直し、糸が切れている場合だけ裁縫道具を使うと、生地への負担を抑えながら対処できます。

長襦袢の丈が「全体的に長い場合」と「かかと部分だけ長い場合」を分け、それぞれ異なる方法で直すようにしましょう。 

着物の裾が下がったときは、おはしょりと腰紐を直す

歩いているうちに着物の裾が長くなった場合、裾を安全ピンで留めたり、その場で縫い上げたりする必要はありません。

まず、おはしょりの内側から下がった布を引き上げ、腰紐へ挟んで丈を戻します。

腰紐は着物の裾を支えているため、緩むと布が下へ落ちやすくなります。

一方、裾を短くしようとして腰紐の位置をウエストまで上げると、食事や呼吸が苦しくなりやすいため避けましょう。

直す手順は、下がった布を少しずつ引き上げ、腰紐の内側へ収め、最後に裾丈とおはしょりを整える流れです。

急に強く引くと衿元や帯周りまで動くため、一度に直そうとせず、鏡を見ながら進めましょう。

おはしょりの内側から下がった布を少しずつ引き上げる

まず、お手洗いや着替え室など、人目を避けて鏡を確認できる場所へ移動します。

正面から裾を見て、全体が下がっているのか、左右のどちらか一方だけが長くなっているのかを確かめましょう。

直すときは、おはしょりの表面をめくり、その内側へ指を入れます。

腰紐より下にある着物の布をつまみ、裾が下がっている部分だけを上へ引き上げてください。

裾を直接持って持ち上げると、外側に大きなシワが残りやすいため、おはしょりの内側から動かすのがポイントです。

外出中に裾が長くなった場合は、腰紐より上の布を内側から引くと応急処置になります。

一度に大きく引っ張らず、1~2cmずつ動かしながら裾丈を確認します。

正面だけを見て直すと、横や後ろが長いまま残ることもあるため、左右の脇、かかと付近まで鏡で確かめましょう。

片側だけ下がっている場合は、その部分だけを引き上げます。衿元や帯が動いたときは、それ以上強く引かず、いったん手を止めてください。

引き上げた布を腰紐の内側へ挟んで固定する

裾が適切な位置まで戻ったら、引き上げた布を腰紐の内側へ挟みます。

腰紐の結び目をほどくのではなく、おはしょりの下から手を入れ、余った布を少量ずつ押し込むように収めましょう。

腰紐と体の間へ布を入れることで、裁縫道具を使わなくても裾丈を一時的に保ちやすくなります。

布を一か所へまとめて詰め込むと、表側が盛り上がったり、おはしょりが斜めになったりします。

前だけが下がっていた場合は前側へ、後ろだけが長いときは背中側へ分けて入れ、指先で左右へ散らしてください。

帯の下に隠れる範囲で平らに収めると、外から見たときの厚みを抑えられます。

腰紐が明らかに緩んでいても、外出先で結び目を全面的にほどくと、裾全体がさらに落ちるおそれがあります。

まずは引き上げた布を既存の腰紐へ挟み、その状態で歩けるか確認しましょう。

腰紐は裾を支える役割があり、着付けの段階で緩いと、外出後に直すのが難しくなることを動画でも解説しています(※)。

※参考動画:長いおはしょりの間違った処理方法とは?

裾丈を確認して、おはしょりの表面を整える

布を腰紐へ挟んだら、おはしょりを元の位置へ戻し、表面を両手で整えます。

まず脇から前へ向かって軽くなで、腰紐へ入れた布のふくらみや、縦に入った大きなシワを散らしましょう。

強く引っ張ると、せっかく調整した裾が再び動くため、手のひらで押さえる程度にとどめます。

次に、裾が床へ触れていないか、前後左右から確認してください。

前裾が短くなりすぎて足首が大きく見える場合は、腰紐へ挟んだ布を少しだけ戻します。

後ろ側は自分で見えにくいため、合わせ鏡を使うか、同行者へかかと付近を確認してもらうと確実です。

最後に数歩歩き、裾を踏まないこと、おはしょりから余分な布が出ていないことを確かめます。

座った後や階段を移動した後は、再び布が下がる場合があるため、目的地へ着いたタイミングでも鏡を見ておくと安心です。

応急処置で何度も裾が落ちるときは、無理に腰紐へ布を詰め込まず、着付けができる人や着物店へ相談しましょう。

長襦袢が裾から見えるときは、内側で丈を調整する

着物の裾丈が整っているのに、内側から長襦袢が見える場合は、着物ではなく長襦袢の長さを調整します。

丈が合わないまま歩くと、見た目が乱れるだけでなく、かかとで踏んで転倒する原因にもなります。

対処法を選ぶ際は、長襦袢全体が長いのか、後ろ側だけが下がっているのかを確認してください。

全体に余りがある場合はおはしょりを作り、かかと付近だけが長ければ背中側の布だけを引き上げます。

どちらの方法でも、紐を強く締めないことが大切です。

ここからは、長襦袢全体の丈を上げる方法、後ろ側だけを調整する手順、苦しくなりにくい紐の扱い方を順番に解説します。

長襦袢全体が長い場合は、おはしょりを作って丈を上げる

長襦袢が前後とも着物の裾から見える場合は、着物と同じようにおはしょりを作って丈を上げます。

最初に裾を持ち上げ、かかとの上あたりへ長さを合わせましょう。

長襦袢は着物の内側に隠れるため、裾合わせを細部まで美しく仕上げる必要はありません。

ただし、裾が広がると歩きにくくなるので、左右の布を体へ沿わせるように重ねます。

裾丈が決まったら、腰紐の中心を持ち、ウエスト付近へ巻きます。

このとき、余った布がお腹や背中の一か所へ集まらないよう、指先で平らに広げてください。

折り上げた部分には厚みが出やすいため、できるだけすっきり収めると、上から着物を重ねた際のふくらみを抑えられます。

腰紐を掛けた後は、身八つ口から手を入れて背中を整え、衣紋の抜け具合と前の衿合わせを確認します。

裾だけに意識を向けると、長襦袢の衿元が動くことがあるため、最後に上半身まで見直しましょう。

後ろ側だけ見える場合は、背中の布を引き上げる

衣紋を抜いて長襦袢を着ると、前側より後ろ側の裾が長くなることがあります。

かかと付近だけが床へ近づき、踏みそうになっているなら、全体を持ち上げる必要はありません。

背中側の余った布だけをつまみ、裾が床と平行になる位置まで引き上げます。

引き上げるときは、背中心付近の布を少量ずつ持ち上げてください。

左右どちらかへ偏ってつまむと、後ろ裾が斜めになります。

裾が床から離れたら、持ち上げた布を腰紐へ軽く挟みます。

背中側に小さく余りが出ますが、その上から伊達締めを重ねれば内側へ収まり、外からは見えません。

すでに着物まで着ている外出中は、長襦袢の腰紐へ手を入れる作業が難しくなります。

無理に帯の下へ手を差し込むと、衿元やおはしょりまで崩れるため、お手洗いや着替え室へ移動し、鏡を見ながら行いましょう。

自分で腰紐へ届かない場合は、安全ピンで着物ごと留めるのではなく、着付けに慣れた同行者や施設のスタッフへ相談するほうが生地への負担を抑えられます。

紐は締めすぎず、かかとの上を目安に裾丈を整える

長襦袢の裾丈は、かかとの上あたりを目安に設定します。

短く上げすぎると歩いたときに脚へまとわりつきやすく、反対に長さが残ると、着物の下から見えたり踏んだりする原因になります。

前後左右を確認し、床へ触れない範囲で自然に下がる長さへ整えてください。

丈を固定する腰紐は、体へ沿っている程度の緩さで十分です。

下半身に掛ける紐は苦しくなりやすいため、強く締めず「くっついているだけ」の状態で結びます。

結び目を大きなちょうちょ結びにすると、布の下でごろつき、体へ食い込みやすくなります。

紐を交差させて体へ沿わせ、端を挟み込む形で留めましょう。

ウエストのくびれ付近に折り上げた布を収めると、厚みが補正の役割を果たします。

ただし、その位置で苦しさを感じる場合は、腰紐を少し下へ移してください。

応急処置では裾を上げることだけを優先せず、食事や移動を無理なく続けられる締め具合に整えることが重要です。

この内容は動画でも解説しています(※)。

※参考動画:襦袢の丈が長い時の対処法

縫い目がほどけたときの裁縫道具と注意点

着物の裾丈を整えても布の折り返しが垂れ下がる場合は、着崩れではなく縫い目がほどけています。

腰紐やおはしょりを調整しても元には戻らないため、裁縫道具を使った仮留めが必要です。

ただし、外出先で行うのは正式なお直しではありません。

歩行の妨げになる布を帰宅まで固定し、それ以上ほつれを広げないことを優先します。

使用する道具は、針と糸、安全ピン、着付けクリップの順に検討しましょう。

接着テープは手軽ですが、剥がす際に表面を傷めたり、糊が残ったりするため、着物へ直接貼る方法には向きません。

ここからは、それぞれの使い方と避けたい処置を解説します。

針と糸で内側から仮縫いする

針と糸を持っている場合は、ほどけた裾を元の折り目へ戻し、内側から仮縫いします。

最初に、垂れている布が縫い糸のほつれによるものか、生地そのものの破れなのかを確認してください。

縫い目だけが外れているなら一時的に留められますが、布が裂けている場合は、針を通すことで傷を広げるおそれがあります。

出ている糸を強く引くと、残っている縫い目まで連続してほどけます。

そのまま触れず、元の折り目に沿って布を重ねましょう。

糸は着物の色に近いものを選び、玉結びが外側へ出ないよう裏側から針を入れます。

表地を大きくすくうのではなく、内側の縫い代や裏地を少量ずつ拾うと、表面へ縫い目が響きにくくなります。

外出先では、細かく美しく仕上げる必要はありません。ほどけた範囲を数か所留め、布が垂れない状態を作れば十分です。

糸を強く引き締めると裾がつれたり、表面にシワが出たりするため、布を押さえられる程度の力にとどめてください。

帰宅後は仮縫いを外し、和裁に詳しい人や悉皆店、着物店へ正式なお直しを相談しましょう。

安全ピンは見えない縫い代へ使う

針仕事が難しい場合、安全ピンは短時間で布を固定できる道具です。

ただし、針を刺す以上、生地に穴が開く可能性があります。

何度も留め直すと同じ場所へ負担が集中するため、安全ピンは歩けないほど裾が垂れたときの最終手段として扱ってください。

使用する際は、着物を裏側から確認し、表地を避けて縫い代や裏地の余裕がある部分を留めます。

安全ピンを外側から大きく通すと金具が見えるだけでなく、表面に引きつれが生じます。

布を厚く取りすぎず、ほどけた折り返しを元の位置へ戻したうえで、内側の目立たない場所を固定しましょう。

刺繍、金彩、箔、絞り、薄物など、装飾や凹凸がある部分には使用しません。

アンティーク着物や弱った生地も、針を通した箇所から裂ける危険があります。

安全ピンを閉じた後は、先端が確実に金具へ収まっているか、肌や長襦袢へ触れないかを確認してください。

留めた場所に不安があるときは無理に歩かず、着付けに慣れた人へ助けを求めるほうが安全です。

動画では、両面テープが向かない繊細な半衿に対して、安全ピンや針と糸を選ぶ考え方を解説しています(※)。

着物の裾へ使う場合も、素材と生地の状態を確認してから判断しましょう。

※参考動画:テープで貼ってはいけない半衿3選

着付けクリップで一時固定する

生地へ針を刺したくない場合は、着付けクリップで垂れた布を一時的に挟みます。

クリップは、仮縫いを始める前に折り返しを押さえたり、安全ピンを使う場所を確認したりするときに便利です。

針穴が残らないため、正絹や大切な着物へすぐ安全ピンを使いたくない場面でも役立ちます。

まず、ほどけた布を元の折り目へ戻し、着物の内側からクリップで挟んでください。

外側に金具が見えない場所を選び、裾の形が不自然に持ち上がっていないか確認します。

挟む部分へハンカチや薄い布を重ねると、クリップの跡や局所的な圧力を抑えやすくなります。

ただし、着付けクリップは裁縫による固定の代わりではありません。

裾付近へ付けたまま長時間歩くと、金具が外から見えたり、歩行中に落ちたりする可能性があります。

仮縫いするまで布を押さえる、車やタクシーへ移動するまでの短時間だけ使うなど、用途を限定しましょう。

動画で紹介しているように、外出時に着崩れが心配な場合は、腰紐とクリップを1本ずつ携帯するのもおすすめです(※)。

※参考動画:着物でのお出かけに必要なものとは?

裾上げテープや両面テープを着物へ直接貼らない

アイロン接着の裾上げテープや一般的な両面テープは、着物の表地へ直接貼らないようにしましょう。

接着剤が繊維の間へ入り込むと、剥がした後も糊が残ることがあります。

外出先では素材に適した温度でアイロンを当てることも難しく、応急処置として使うには負担が大きい方法です。

半衿用の両面テープは、針仕事が苦手な人でも短時間で取り付けられる便利な道具です。

一方、レース、刺繍、高価な半衿では、剥がす際に毛羽立ちや傷みが起こりやすいため、使用は避けましょう(※)。

この注意点を踏まえると、正絹や加工のある着物の裾へ接着用品を直接使う方法も適しません。

テープを使える素材であっても、長期間貼り続けるのは避けます。

半衿用テープについても、使用した日のうちに剥がし、付けたままにしない方法を案内しています。

 裾の応急処置では、接着するよりも、内側から仮縫いするか、短時間クリップで押さえる方法を優先しましょう。

※参考動画:両面テープで半衿を付ける方法教えます

外出用の応急処置セットに入れたいもの

着物で外出するときは、大きな裁縫箱を持ち歩く必要はありません。

裾の着崩れを直す腰紐、布を一時的に押さえる着付けクリップ、縫い目のほつれに対応する小さなソーイングセットがあれば、主なトラブルへ対応できます。

さらに、手ぬぐいや薄手のハンカチを加えておくと、食事中の汚れ防止や汗拭きにも活用できるでしょう。

道具を増やしすぎるとバッグが重くなり、必要なものをすぐ取り出せません。

着物や長襦袢の裾が下がったときは、まず腰紐とクリップを使い、縫い目がほどけた場合に限って針や安全ピンを選びます。

ここからは、外出用ポーチへ入れておきたい道具を、用途別に紹介します。

腰紐1本と着付けクリップ1個を基本にする

着崩れへの備えとして最初に用意したいのが、予備の腰紐1本と着付けクリップ1個です。

動画でも、外出時に着崩れが心配な場合は、この2点を持っておくとよいと解説しています(※)。

腰紐は、下がった裾を引き上げて固定するときや、緩んだ着付けを支える際に使えます。

着物専用のものが扱いやすいものの、幅が細すぎず、体へ食い込みにくい紐であれば応急処置に活用できます。

着付けクリップは、裾の折り返しが垂れたときに一時的に押さえるほか、仮縫いをする前の位置決めにも便利です。

針を刺さずに布を挟めるため、安全ピンを使う前の選択肢になります。

ただし、裾付近へ付けたまま長時間歩く用途には向きません。

金具が外から見えたり、動いた拍子に外れたりするため、短時間の仮留めとして使いましょう。

腰紐は小さく畳み、クリップと一緒にポーチへ収めてください。紐が絡まった状態で入っていると、緊急時にすぐ使えません。

※参考動画:着物でのお出かけに必要なものとは?

糸を通した針と安全ピンを小さくまとめる

裾の縫い目がほどけた場合に備え、針と糸、安全ピンを小さなケースへまとめておきます。

外出先で針へ糸を通す作業は手間がかかるため、着物に近い色の糸をあらかじめ通しておくと、すぐ仮縫いを始められます。

糸は長すぎると絡みやすいため、裾の数か所を留められる分量に抑えましょう。

携帯用ソーイングセットには、針、糸、安全ピン、糸切りばさみなどを組み合わせたものがあります。

針はむき出しで入れず、針ケースや厚手の布へ収納しましょう。

糸切りばさみも、小型で刃先にカバーが付いたものを選ぶと、バッグの中でほかの持ち物を傷つけにくくなります。

縫う作業に不慣れな方は、糸通しも加えておくと準備が簡単です。

安全ピンは大小を1本ずつ用意すれば、裾の仮留めや小さなほつれに対応できます。

ただし、正絹、刺繍、金彩、薄物などへ安易に刺してはいけません。

安全ピンは生地へ穴を開けるため、腰紐やクリップで直せない場合の最終手段です。

使用するときは表地を避け、内側の縫い代や裏地を留めましょう。

着物での外出に小さな安全ピンや予備の腰紐を携帯すると、着崩れの応急処置に役立ちます。

手ぬぐいや薄手のハンカチも一緒に入れておく

手ぬぐいは、裾の仮留めに直接使う裁縫道具ではありませんが、着物での外出時に幅広く活用できます。

食事中に膝へ広げれば、食べこぼしから着物を守るカバーになります。

汗や水分を拭き取るほか、バッグの中身を覆う用途にも使えるため、1枚入れておくと安心です。

着崩れの応急処置では、クリップを使う部分へ手ぬぐいを挟み、金具が生地へ直接当たるのを避ける使い方もできます。

また、帯の下へ小さく畳んで入れ、緩んだ部分を一時的に支える場面にも活用可能です。

ただし、大きく詰め込むと帯の形が変わるため、必要な厚さだけを使ってください。

バッグが小さい場合は、厚手のタオルハンカチより、薄く畳める手ぬぐいが適しています。

食事用と応急処置用を分けたいときは、手ぬぐい1枚と薄手のハンカチ1枚を用意しましょう。

腰紐、クリップ、ソーイングセットと一緒に一つのポーチへまとめておけば、突然の裾トラブルでも必要な道具をすぐ取り出せます。

帰宅後に仮留めを外し、着付けや寸法を見直す

外出先で施した安全ピンや仮縫いは、裾を一時的に支えるための応急処置です。

問題なく帰宅できても、そのまま着物を畳んで収納してはいけません。

留めた部分へ力がかかり続けると、針穴が広がったり、周辺の布が引きつれたりする原因になります。

着物を脱いだら仮留めを外し、裾の縫い目と表地の状態を明るい場所で確認しましょう。

あわせて、着物と長襦袢をハンガーへ掛け、着用中に含んだ湿気を飛ばします。

裾が何度も下がる場合は、応急処置を繰り返すのではなく、腰紐の締め方、裾丈、長襦袢の寸法を見直すことが必要です。

ここからは、仮留めの外し方、生地と汚れの確認、再発を防ぐためのチェックポイントを順番に解説します。

安全ピンや仮縫いの糸は、その日のうちに外す

着物を脱いだら、最初に安全ピンや着付けクリップを外します。

金具を勢いよく引き抜くと、針先が表地へ引っかかるため、留めた部分を片手で押さえながらゆっくり開いてください。

針を通した方向へ戻すように抜くと、生地へ余計な力がかかりません。

仮縫いの糸も、着物を畳む前に取り除きます。

糸端を強く引っ張るのではなく、数針ごとに糸切りばさみで切り、短く分けながら抜きましょう。

表地を一緒に切らないよう、刃先を布から離して作業します。

元の縫い糸と応急処置に使った糸を見分けられない場合は、無理にほどかず、着物店や和裁士へ相談してください。

テープを使った場合も、貼った状態で保管してはいけません。

ただし、接着剤が強く付着しているときに勢いよく剥がすと、毛羽立ちや変色につながります。

特に正絹、刺繍、金彩のある着物は自分で処理せず、専門店へ持ち込みましょう。

応急処置は早めに外し、ほつれが残っている場合は正式なお直しへ出すことが大切です。

針穴・引きつれ・裾汚れがないか確認する

仮留めを外した後は、着物をハンガーへ掛け、裾全体を明るい場所で確認します。

最初に見るのは、安全ピンを刺した部分です。

小さな穴だけでなく、周囲の糸が引っ張られて筋状になっていないか、布が波打っていないかを確かめてください。

針穴を消そうとして指で強くこすったり、生地を左右へ引っ張ったりすると、傷を広げる原因になります。

次に、ほどけた縫い目の範囲を確認しましょう。

応急処置をした箇所だけでなく、その左右にも糸切れが続いていないかを見ます。

表地の破れ、裏地の裂け、裾の擦り切れがある場合は、家庭で縫い直さず専門店へ相談してください。

着物のほつれや寸法直しは、和裁士が対応するお直しの範囲です。

裾は床や履物に近く、砂ぼこりや泥はねが付きやすい場所でもあります。

襟元や袖口とあわせて汚れを確認し、着物用ハンガーで一晩陰干しして湿気を飛ばしましょう。

動画でも、脱いだ後は着物、帯、長襦袢を掛け、特に襟元・袖口・裾を毎回確認するよう解説しています(※)。

汚れを見つけても、濡れた布で強くこすったり、家庭用洗剤を直接付けたりしないでください。

摩擦で生地を傷め、シミを広げるおそれがあります。

汚れの種類と付着した場所を控え、着物の扱いに慣れたクリーニング店や購入店へ相談すると安心です。

※参考動画:脱いだ後の着物の手入れ

繰り返し裾が下がる場合は、着付けや寸法を見直す

同じ着物を着るたびに裾が下がる場合は、応急処置の方法ではなく、トラブルの原因を見直します。

まず確認したいのが腰紐です。

裾を決めた後の腰紐が緩いと、歩いた際に布が下へ動き、裾丈を保てません。

腰紐の緩みは外出後の裾崩れにつながり、途中で直すのが難しくなるため、着付けの段階でしっかり締めるようにしましょう。

ただし、単純に強く締めればよいわけではありません。

腰紐は骨盤のすぐ上へ掛け、体に沿わせて固定します。

高すぎる位置で締めると苦しくなり、低すぎれば裾を支えにくくなるため、自分の体型に合う位置を確認しましょう。

お尻から腰にかけてのくびれや段差が大きい場合は、布が下へ動きやすくなります。

補正で段差をなだらかに整えることも、着崩れを防ぐ方法の一つです。

長襦袢だけが毎回見えるなら、着物ではなく長襦袢の丈を確認します。

全体が長い場合はおはしょりを作って調整できますが、応急処置を毎回行う状態なら、身丈が体に合っていません。

裾を踏むほど長い長襦袢は、かかとの上を目安に丈を整え、必要に応じて専門店で寸法直しを相談してください。

裾が下がった日時、着物と長襦袢の組み合わせ、歩いた距離などを簡単に記録しておくと、原因を特定しやすくなります。

腰紐を締め直せば解決するのか、補正が必要なのか、寸法そのものが合わないのかを切り分け、次の外出前に整えておきましょう。

まとめ

外出中に裾が下がったときは、まず着物と長襦袢のどちらに問題があるかを確認しましょう。

着崩れが原因なら、おはしょりの内側から布を引き上げ、腰紐へ挟むことで整えられます。

長襦袢が見える場合は、全体または下がった部分の丈を内側で調整してください。

裁縫道具が必要なのは、裾の縫い目がほどけている場合です。

針と糸で仮縫いし、難しければ着付けクリップを使います。

安全ピンは針穴が残るため最終手段とし、テープを繊細な生地へ直接貼るのは避けましょう。

裾トラブルでは、すぐに縫うのではなく、原因に合った方法を選ぶことが大切です。

外出用の道具を準備し、帰宅後に仮留めと生地の状態を確認すれば、大切な着物への負担を抑えられます。

加藤咲季
監修:加藤咲季
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。

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