きせのかけ方と縫い代の始末方法|何mm折る?倒す方向・くけ方を初心者向けに解説

「きせをかけて縫い代を始末すると言われたけれど、どこを何mm折って、どちらへ倒せばいいの?」

浴衣や単衣を縫っていると、「きせをかける」「縫い代を始末する」という言葉が出てきます。

縫い合わせるところまではできても、その後の処理で手が止まる方は少なくありません。

特に知りたいのは、次の3点です。

  • きせは縫い目から何mmの位置で折るのか
  • 縫い代はどちらへ倒すのか
  • きせをかけた後、どう折ってくけるのか

きせは、単に縫い代を折る作業ではありません。

縫い目をわずかに隠すように布を折り、その後で縫い代を倒して始末します。

ただし、きせの深さや倒す方向は、背縫い・脇縫い・袖まわりなど場所によって異なります。

数字だけを覚えるのではなく、処理する部分を確認しながら進めることが大切です。

この記事では、きせの基本から、折る位置、縫い代を倒す方向、端の始末、くけ方まで、和裁初心者にも分かるよう順番に解説します。

きせとは?縫い代を折るだけではない

和裁でいう「きせ」は、縫い合わせた布を単純に折ることではありません。

縫い目が表から直接見えないように、縫い線より少し外側で布を折り、片側の布をかぶせるように整える処理です。

初心者が混乱しやすいのは、「きせをかける」と「縫い代を倒す」「縫い代を始末する」という作業が続けて行われる点です。

それぞれの役割を分けて理解しておくと、その後の手順が分かりやすくなります。

きせは縫い目を少し隠すための折り

布を中表に合わせて縫ったあと、縫い目ぴったりの位置で折るのではなく、縫い線より少し外側に折り山を作るのが「きせをかける」という処理です。

折った布が縫い目にわずかにかぶさるため、表側から縫い線が見えにくくなります。

ここで覚えておきたいのは、「縫い目=折り山」ではないという点です。

縫った線の真上で折ると、布を開いたときに縫い目が表へ出やすくなります。

そこで、縫い線から少しずらして折ることで、きせが生まれます。

きれいに仕上げるには、縫い終わった布を強く引っ張らず、縫い目を整えてから折る位置を決めることが大切です。

ずらす幅は仕立てる場所によって異なるため、すべて同じ寸法で処理するわけではありません。

きせと縫い代始末は別の作業

「きせをかけて縫い代を始末する」と続けて説明されることが多いため、同じ作業のように感じやすいですが、実際には役割が異なります。

きせをかけるのは、縫い目のそばに折り山を作り、表側から縫い線を見えにくくする工程です。

一方、縫い代の始末は、そのあとに残った布端を整え、必要に応じて折ったり、くけたりして収める処理を指します。

基本の流れは、

  1. 縫い合わせる
  2. きせをかける
  3. 縫い代を倒す
  4. 布端を整えて始末する

という順番です。

この流れを意識すると、作業の途中で迷いにくくなります。

また、縫い代を倒したり端をくけたりするときは、せっかく作ったきせを開かせないことも重要です。

きせは何mmかける?基本の折り位置

きせをかけるときに迷いやすいのが、「縫い目から何mmずらして折ればよいのか」という点です。

和裁では、2mm前後をひとつの目安として扱うことがあります。

ただし、すべての場所を一律に2mmで処理するわけではありません。

仕立てる部分や生地によって適した深さが異なるため、基本の目安を押さえたうえで調整することが大切です。

縫い目から約2mmをひとつの目安にする

初心者が最初に覚えるなら、縫い目から約2mm入った位置に折り山を作ると考えると分かりやすいです。

背縫いや脇縫いなどでも、2mm程度のきせをかける仕立て方があります。

作業するときは、まず縫い線を確認し、そこから約2mm離れた位置を目安に折ります。

最初は定規で寸法を確認しながら、折り幅の感覚をつかんでいくと進めやすくなります。

ただし、「2mm」という数字だけを覚えるのは避けたいところです。

衿先や裾など、一般的な縫い合わせ部分より深めにきせを取る箇所もあります。

まずは約2mmを基本の目安にし、仕立てる箇所ごとに指定があれば、その寸法を優先すると覚えておきましょう。

きせが浅すぎる・深すぎるとどうなる?

きせは、浅すぎても深すぎても仕上がりに影響します。

折り位置が縫い線に近すぎると、布を表に返したときに縫い糸が見えやすくなります。

ぎりぎりの位置で折ると、着用したり布が動いたりした際に、縫い目が表へ出る原因になることも。

反対に深く取りすぎると、折った部分に余分なゆとりが生まれ、布が落ち着きにくくなります。

確認するときは数字だけを見るのではなく、表側から縫い目が見えていないか、折り線がすっきり収まっているかもチェックしましょう。

約2mmを出発点に、仕立てる場所や布の厚みに合わせて整えることが大切です。

部位によって寸法が変わる理由

きせの深さが場所によって異なるのは、着物のすべての縫い目が同じ条件ではないためです。

背縫いや脇縫いのような直線部分と、衿先や裾、袖口など布の重なり方が異なる箇所では、求められる収まり方も変わります。

そのため、場所によって1mm程度にしたり、2mm程度にしたり、さらに深めに取ったりと調整します。

つまり、「きせは必ず2mm」と固定して覚えないことが重要です。

2mm前後を基本にしながら、部位ごとの仕立て方を確認してください。

また、生地の厚さや張りによっても折り線の出方は変わります。

最初から強く折り込まず、表側の見え方を確認しながら整えると、きれいに仕上げやすくなります。

きせをかけて縫い代を始末する手順

きせの位置が分かったら、次は縫い合わせた布を実際に整えていきます。

作業は、縫い目を整える→きせをかける→縫い代を倒す→布端を始末するという順番で進めると分かりやすくなります。

初心者のうちは、一度に仕上げようとせず、一工程ずつ形を確認することが大切です。

きせを作ったあとに縫い代を動かすと折り線がずれやすいため、工程ごとに状態を見ながら進めましょう。

手順1|縫い目を整える

縫い終わったら、まず縫い線がまっすぐ通っているかを確認します。

布が引きつれていたり、周辺に細かなシワが寄っていたりすると、そのまま折ってもきれいに仕上がりません。

左右の布を強く引っ張らず、生地をやさしくならして平らに整えます。

その後、仕立てる箇所に合わせてきせの幅を確認してください。

基本の目安を使う場合は、縫い線から約2mmの位置を見ながら折る場所を決めます。

長い直線部分では、途中から幅が変わっていないかも見ておきましょう。

最初に位置を整えておけば、次の工程で折り山が曲がりにくくなります。

手順2|きせをかける

折る位置が決まったら、縫い線に沿って布を折ります。

一部分だけを強く押さえるのではなく、全体を見ながら折り山をそろえていくのがポイントです。

長い部分は、数か所を軽く押さえて位置を決めます。そのあと、間をつなぐように整えると均一に仕上げやすくなります。

折ったあとは、縫い糸が見えていないか、幅が途中で変わっていないかを確認しましょう。

必要に応じてアイロンやこてで折り目を落ち着かせます。

このときは、生地に合った温度で扱ってください。強く押しつぶすのではなく、折り線を整えるために使う意識が大切です。

手順3|縫い代を倒す

きせが整ったら、縫い代を指定された方向へ倒します。

このとき、折り山まで一緒に引っ張ると、きせが浅くなったり開いたりします。

片手で折り山の位置を押さえながら、もう片方の手で縫い代だけを倒すと形を保ちやすくなります。

倒す方向は、背縫い・脇縫い・袖など仕立てる場所によって異なります。

「いつも同じ方向」と覚えるのではなく、その箇所の仕立て方を確認してください。

最後に、縫い目が表へ出ていないか、折り線が浮いていないかを見ます。

ここで形を整えておくと、その後の始末がスムーズです。

手順4|布端を折ってくける

縫い代を倒したら、残った布端を仕立て方に合わせて整えます。

浴衣や単衣などでは、端を折り込み、表に針目が大きく出ないようにくけて始末する方法があります。

布端を扱うときは、きせの位置を保ったまま縫い代だけを動かします。

折り山まで一緒に動かさないことがポイントです。

くける際は、糸を強く引き締めすぎないようにしましょう。

締めすぎると縫い代が縮み、表側にひびいたり、生地が波打ったりする原因になります。

数針進んだら、表に針目が目立っていないか、引きつれがないかを確認してください。

きせを整える→縫い代を倒す→布端を始末するという順番を守ると、全体をきれいに仕上げやすくなります。

縫い代はどちらへ倒す?場所ごとの考え方

きせをかけたあと、迷いやすいのが縫い代を倒す方向です。

和裁では、すべての縫い代を同じ向きへ倒すわけではありません。背縫い・脇縫い・袖まわりなど、仕立てる場所によって方向が変わります。

そのため、「右へ倒す」「左へ倒す」と一つだけ覚えるより、今どの部分を縫っているのかを確認してから方向を決めることが大切です。

ここでは、初心者が特に迷いやすい3つの場所に分けて整理します。

背縫いで確認するポイント

背縫いは、左右の後ろ身頃をつなぐ中央の縫い目です。

着物を広げた状態では長い直線になるため、縫い代の方向を途中で変えず、仕立て方に沿って一定方向へそろえることが基本になります。

ここで注意したいのは、作業中に見えている「右・左」だけで判断しないことです。

着物を裏返したり、向きを変えたりすると、自分から見た方向と着物本来の左右が分からなくなりやすくなります。

迷ったときは、まず衿側と裾側を確認し、さらに上前・下前の位置関係を見直します。

そのうえで、使っている和裁本や型紙、先生から指定された方向に合わせましょう。

背縫いは距離が長いぶん、途中で縫い代がねじれると仕上がりにも影響します。

最初に倒す向きを決めたら、裾まで同じ状態が続いているかを確認しながら整えると安心です。

脇縫いで確認するポイント

脇縫いでは、前身頃と後ろ身頃をつないだあとの縫い代を処理します。

背縫いと同じ感覚で方向を決めてしまうと、仕立て方によっては逆になることがあるため注意が必要です。

まず、どちらが前身頃で、どちらが後ろ身頃なのかを確認します。

さらに右脇なのか左脇なのかも見ておきましょう。着物を机の上で回しながら作業していると、左右を取り違えやすいためです。

脇縫いは身頃の形に関わる部分なので、縫い代がねじれたり、途中で反対側へ返ったりしないように整えます。

裾から上まで軽く手でならし、同じ方向へ収まっているかを確認してください。

「前から見て右」といった覚え方ではなく、前身頃・後ろ身頃・右脇・左脇のどこを扱っているかを先に確認することが、間違いを防ぐ近道です。

袖まわりで確認するポイント

袖まわりは、背縫いや脇縫いより処理する場所が多く、初心者が混乱しやすい部分です。

袖下、袖付け、人形などでは、それぞれ布の重なり方や仕立て方が異なります。

そのため、「袖の縫い代は全部こちらへ倒す」と一括して覚えないようにします。

まず、いま処理しているのが袖下なのか、身頃と袖をつなぐ袖付けなのかを確認しましょう。

また、袖は表へ返したときの形も重要です。

縫い代を整えたあと、袖の表側に余計なふくらみが出ていないか、縫い線付近が引きつれていないかも見ておきます。

袖まわりで迷った場合は、推測で倒す方向を決めず、仕立て図の指示を確認するのが確実です。

部位を特定してから方向を決めるという考え方を身につけると、背縫いや脇縫いでも応用しやすくなります。

きせと縫い代始末で失敗しやすい例

手順どおりに進めても、「縫い目が見える」「布が浮く」「表側が波打つ」といった仕上がりになることがあります。

こうした失敗は、きせの幅や縫い代の扱い方を見直すことで改善できます。

最後まで仕上げてから気づくより、途中で状態を確認するほうが直しやすくなります。

ここでは、初心者がつまずきやすい3つの例を整理します。

縫い目ぴったりで折ってしまう

よくあるのが、縫った線そのものを折り山にしてしまうケースです。

表へ返したときに縫い糸が見えたり、布が動くと縫い目がのぞいたりします。

原因は、折る位置が縫い線に近すぎることです。仕立てる場所に合った幅を取り、縫い目を覆う位置で折ります。

直すときは、一度折り線をゆるめて位置を取り直します。

そのうえで、表側から縫い糸が見えていないかを確認しましょう。

長い直線部分では、途中から幅が狭くなることもあります。

端だけでなく、全体を通して同じ幅になっているかを見ることが大切です。

きせを深く取りすぎる

縫い目をしっかり隠そうとして、必要以上に深く折るのも失敗のひとつです。

きせが深すぎると布が余り、折り山が浮いたり、ふくらんで見えたりします。

特に薄手の浴衣地や単衣では、わずかな差でも表側に出やすくなります。

修正するときは、折り線を戻して適切な位置へ整え直します。

数字だけでなく、布を自然に置いたときに無理なく収まっているかも確認しましょう。

縫い目が隠れ、布が余らない深さに整えることがポイントです。

くける途中できせを開かせてしまう

きせが整っていても、布端を始末する途中で折り山が動くことがあります。

特に、縫い代を強く引いたり、くけ糸を締めすぎたりすると形が崩れやすくなります。

糸を強く引くと縫い代が縮み、表側に引きつれや波打ちが出る原因になります。

作業するときは、縫い代だけを動かし、きせの位置を保ちます。

数針進んだら表側を確認し、崩れ始めていたら早めに整えてください。

少し進む→表側を見る→必要なら直すという流れで進めると、完成後の修正を減らせます。

まとめ

きせと縫い代の始末では、折る位置・倒す方向・作業の順番を分けて考えることが大切です。

基本は、縫い目から少しずらしてきせを取り、縫い代を指定された方向へ倒し、布端をくけるなどして整えます。

きせは約2mmをひとつの目安にできますが、背縫い・脇縫い・袖まわりなど、仕立てる場所によって寸法は異なります。

作業の流れは、

  1. 縫い目を整える
  2. きせをかける
  3. 縫い代を倒す
  4. 布端を始末する

という順番です。

約2mmという数字だけで判断せず、仕立てる部位ごとの指定を確認しながら進めることが、きれいに仕上げるポイントです。

加藤咲季
監修:加藤咲季
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。

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