衣紋抜きの角度と背中心をきれいに整えるコツ|左右対称の後ろ姿に仕上げる着付け手順 

「衣紋を抜いても、左右の角度がそろわない」

「背中心を合わせたつもりなのに、後ろから見ると曲がっている」

「長襦袢ではきれいだったのに、着物を羽織ると衣紋が詰まってしまう」

長襦袢や着物を一通り着られるようになっても、鏡で確認しにくい衣紋と背中心は、仕上がりが安定しにくい部分です。

何度調整しても左右差が残り、後ろ姿に自信を持てない方も少なくありません。

衣紋を後ろへ大きく引くだけでは、左右対称の着姿には仕上がりません。

帯より上の背中心を体の中央へ合わせ、左右の衿を自然な流れに沿って動かすことが重要です。

この記事では、次の3点を詳しく解説します。

  • 衣紋を自然な角度に整える考え方
  • 背中心をまっすぐ通す長襦袢と着物の着付け手順
  • 衣紋の詰まりや背中心のずれを後から直す方法

衣紋の深さだけでなく、衿の角度、肩まわりの左右差、背中にできるたるみまで確認すると、首元から背中へ続く線がすっきり整います。

背中心を軸にして左右の衿を整える順番を身につけ、後ろから見てもバランスのよい着姿を目指しましょう。

衣紋抜きの角度と背中心を整える基本

衣紋をきれいに抜くには、首の後ろに空間を作るだけでなく、背中心と左右の衿を一緒に整える必要があります。

帯より上の背中心が体の中央から外れていると、片側の衿だけが大きく開き、後ろから見たときに衣紋の角度が傾いて見えます。

一方、背中心をまっすぐ合わせていても、前の衿を真上や真横へ動かすと、衿本来の流れが崩れてしまいます。

大切なのは、背中心を後ろ姿の軸として定め、左右の衿を自然な方向へ動かすことです。

最初に中央の位置を決めてから衣紋の形を整えると、首元から肩、背中へ続く線が左右対称に近づきます。

ここからは、まず帯より上の背中心を合わせる理由を確認し、次に衣紋の角度を決める衿の動かし方を解説します。

最後に、U字とV字で変わる後ろ姿の印象を整理するので、自分が目指す着姿に合った形を選んでいきましょう。

帯より上の背中心は体の真ん中に合わせる

背中心とは、長襦袢や着物の背中にある縫い目のことです。

後ろ姿を整える際は、すべての背中心が裾まで一直線になっているかではなく、まず帯より上の縫い目が体の中央にあるかを確認します。

上半身の背中心が左右へずれると、衣紋だけでなく、衿合わせや肩線にも影響が広がります。

片側の衿が首から離れ、反対側だけが詰まる状態も起こりやすくなるため、衣紋を引く前に位置を整えましょう。

長襦袢を羽織ったら、背中の縫い目が背骨の上を通るように合わせます。

前側では、左右の衿先の高さをそろえると、後ろの中心を確認しやすくなります。

なお、帯より下の背中心は、着物の身幅と体型が合わない場合にずれることがあります。

下半身まで無理に中央へ動かすと、上前の幅や裾合わせが崩れるため、上側と同じ基準で考える必要はありません。

後ろ姿の軸として優先するのは、首の下から帯の上まで続く部分です。

この考え方は、動画でも詳しく解説しています。

※参考動画:質問への回答*背中心ってずれてもいいの?【着付師 咲季】

衣紋の角度は左右の衿を動かす方向で決まる

衣紋を抜きたいとき、背中心を下へ強く引くだけでは、左右の角度がきれいにそろわない場合があります。

前にある長襦袢の衿を持ち、布の流れに沿って斜め方向へ動かすことがポイントです。

上前側と下前側では、衿が重なる向きが異なるため、それぞれが自然に続く方向へ引きます。

衿を真上へ持ち上げると首元が詰まりやすくなり、真横へ大きく開けば胸元が広がりすぎます。

力を加える方向が適切でも、一度に強く動かすと必要以上に衣紋が抜けるため、鏡を見ながら少しずつ調整しましょう。

左右を同じ距離だけ動かすことより、首から胸元へ続く線が対称になっているかを見る方が重要です。

また、前の衿だけを何度も触ると、先に合わせた背中心まで動きます。

片側を調整した後は、もう一方の衿、首の後ろの空間、帯より上の背中心を順番に確認すると、傾きを早い段階で修正できます。

衣紋の角度は後ろ側だけで作るのではなく、前後の布を連動させて整えるものです。

なお、衿を引く方向については、次の動画で実際の動きを確認できます。

※参考動画:衣紋を後から抜き直す方法【着付師 咲季】

U字とV字で変わる衣紋の印象

衣紋の形には、大きく分けて丸みのあるU字と、中央が深く見えるV字があります。

どちらが正解というわけではなく、着物の雰囲気や目指す後ろ姿に合わせて選びます。

U字に整えたい場合は、背中心の一点だけを下へ引かず、衿肩あき付近の左右を意識して広げます。

首の後ろを包むような丸みが生まれ、柔らかく穏やかな印象に仕上がるのが特徴です。

左右の肩に沿う線を均等にすると、片側だけが落ちる失敗も防ぎやすくなります。

一方、背中心を中心に引くと、中央へ向かって角度がつき、V字に近い形になります。

輪郭がはっきりするため、すっきりした粋な雰囲気を出したいときに適しています。

ただし、中央だけを強く引きすぎると、衿の左右が急角度になり、長襦袢の衿が首から浮く原因になります。

形を強調する場合も、肩まわりに不自然なしわが出ていないか確認しましょう。

衣紋の抜き加減には、年代や流派による考え方の違いがあり、体型や好みによって似合う形も変わります。

決められた寸法へ無理に合わせるのではなく、首の長さ、背中の丸み、顔まわりとのバランスを見て調整することが大切です。

衣紋の抜き加減に対する考え方は、こちらの動画でも解説しています。

※参考動画:衣紋の抜きを考える

衣紋と背中心を同時に整える着付け手順

左右対称の後ろ姿は、着物を羽織ってから作るのではなく、長襦袢の段階で土台を整えることが大切です。

最初に背中心を体の中央へ置き、衣紋を抜いてから左右の衿を合わせます。

その形を保ったまま着物を重ねれば、衿元の角度が変わりにくく、後ろ姿も安定します。

反対に、長襦袢の背中心がずれた状態で前側だけを整えると、片側の衿が首へ寄り、もう一方が大きく開きやすくなります。

着物を勢いよく羽織る動作も、せっかく作った衣紋を詰まらせる原因です。

ここからは、長襦袢の背中心を合わせる方法、左右の衿を動かして衣紋を作る手順、着物と長襦袢の中心を重ねるコツを順番に解説します。

最後に衿の高さと背中のしわを整え、固定するところまで確認しましょう。

長襦袢の背中心を背骨の位置へ合わせる

長襦袢を羽織ったら、前側にある左右の半衿の先を顔の中心で重ねます。

その状態を片手で保ち、空いている手を背中へ回して、背中心の上部を持ってください。

前と後ろを同時に押さえることで、長襦袢が左右へ動きにくくなり、背中の縫い目を体の中央へ置きやすくなります。

背中心を合わせるときは、首の後ろだけを見て判断しません。

縫い目が首の付け根から背骨に沿って下へ続いているかを確認します。

前の半衿が顔の中心から外れている場合は、背中側もずれている可能性があるため、先に左右の高さをそろえましょう。

中心を合わせたら、前の半衿を押さえたまま、背中心を下方向へ引きます。

この動きによって衣紋が抜けますが、ここでは深さを決め切る必要はありません。

最初にやや大きめに空間を作り、その後の衿合わせで適切な位置へ戻す方が調整しやすくなります。

帯より上の背中心は、衿や衣紋の左右差に直結する重要な部分です。

必ず体の真ん中へ置きましょう。

一方、帯から下は、着物の身幅と体型によって縫い目が左右へずれる場合があります。

上半身の中心が合っていれば、下側まで無理に一直線へ動かす必要はありません。

長襦袢の衣紋を抜く基本手順は、動画でも詳しく解説しています(※1)。

帯より上と下で背中心の考え方が異なる理由は、次の動画で確認できます(※2)。

※参考動画
・1:初心者さんのためのシンプル着付け①〜襦袢編〜【着付師 咲季】
・2:質問への回答*背中心ってずれてもいいの?【着付師 咲季】

左右の衿を斜め方向へ動かして衣紋を作る

背中心を体の中央へ合わせたら、左右の衿を分けて持ち、右、左の順番で衿合わせを進めます。

このとき、衿を真上へ持ち上げたり、真横へ大きく開いたりしないことが重要です。

半衿が首から胸元へ向かって流れる方向に沿い、それぞれを斜めに動かしてください。

前の衿を体の中心へ寄せるほど、首の後ろに作った空間は少しずつ戻ります。

そのため、最初の段階では衣紋を完成形よりやや深めに抜き、左右の衿を合わせながら適切な深さへ調整します。

前側だけに集中せず、首の後ろと胸元を交互に確認すると、詰めすぎを防げます。

左右を同じ距離だけ引くことより、半衿の見え方と角度をそろえることが大切です。

肩や胸の形には個人差があるため、同じ幅を動かしても左右対称になるとは限りません。

顔をまっすぐ正面へ向け、片方だけが高くなっていないか、衿の交点が体の中央にあるかを見ながら微調整しましょう。

衣紋の形を寝かせたい場合は、背中心を後ろへ引く際に、前側を持つ手にも下方向の力をかけます。

単に後ろだけを引くより、衿が肩に沿いやすくなり、首元から胸へ続く線をなだらかに整えられます。

衣紋の角度を作る細かな手順は、次の動画で確認できます(※1)。

衿を斜めへ動かす方向については、こちらの動画でも解説しています(※2)。

※参考動画
・1:【超解説】襦袢の衣紋の抜き方
・2:衣紋を後から抜き直す方法【着付師 咲季】

着物と長襦袢の背中心を重ねて羽織る

長襦袢の衿元を整えたら、その形を崩さないように着物を羽織ります。

袖へ腕を通すときは、自分の手を袖口へ迎えに行くように動かし、肩を大きく上げないことがポイントです。

腕を勢いよく振り上げると、長襦袢が前へ引かれ、衣紋が詰まりやすくなります。

両袖へ腕を通した後は、着物の衿を長襦袢へ強くぶつけないようにしましょう。

着物を前から大きくかぶせると、衿同士が押し合い、抜いた衣紋が首側へ戻ってしまいます。

背中側へそっと布を落とし、長襦袢と着物の背中心を重ねます。

中心が重なったら、その位置を片手で押さえたまま、左右の着物の衿を長襦袢に沿わせましょう。

片側を整える際も中央の手を離さず、衿を半分に折りながら、後ろから前へなぞるように重ねます。

中央を固定しておけば、一方の衿を動かしたときに背中心まで引っ張られるのを防げます。

着物を羽織った直後には、必ず背中心を再確認してください。

重ねる前は合っていても、袖へ腕を通す動作や衿を折る作業によって、わずかに曲がることがあります。

帯を締めてからでは直しにくいため、この段階で体の中央へ戻します。

着物を羽織るときの背中心の合わせ方は、動画でも詳しく紹介しています。

※参考動画:初めての他装着付け<着物すそ編> 

衿の高さと背中のしわを整えて固定する

着物と長襦袢の背中心を重ねたら、後ろ中央の衿の高さを確認します。

着物の衿は、長襦袢より約5ミリ上に重ね、後ろから見たときに襦袢の衿がのぞかない状態へ整えます。

長襦袢を完全に隠そうとして着物を深くかぶせると、衣紋が詰まるため、中央を押さえながら少しずつ調整してください。

後ろ中央が決まったら、その位置を保ったまま左右の衿を沿わせます。

着物と長襦袢の衿を指でなぞり、途中に浮きやねじれがないかを確認しましょう。

耳の下付近では両方の衿の高さを合わせ、そこから前へ向かって半衿の出方を調整します。

正面に立ち、顔を傾けずに見ると左右差を判断しやすくなります。

衿元を固定した後は、背中のしわを取ります。

最初に背中心の布を下へ引き、その両脇、さらに外側という順番で余分な布を下方向へ整えてください。

縦じわは中央から脇へ逃がし、脇の下で小さなタックにすると、背中を平らに保ちやすくなります。

布を強く引きすぎると、長襦袢と着物の衿が離れ、先にそろえた角度が変わります。

背中が平らになった時点で手を止め、衣紋、背中心、左右の半衿をもう一度確認してから紐や伊達締めで固定しましょう。

締める途中も肩を上げず、顔を下へ向けすぎないことが、完成した形を守るコツです。

着物の種類と体型に合う衣紋の抜き加減

衣紋の抜き加減に、すべての人へ共通する一つの正解はありません。

同じ深さに整えても、身長や体格、首の見え方によって後ろ姿の印象は変わります。

着物を着る場面や目指す雰囲気も考慮する必要があるため、「こぶし一つ分」といった目安だけで決めるのは避けましょう。

基本となるのは、着物の格に合わせながら、自分の体とのバランスを見ることです。

小紋や紬などの普段着では自然になじむ形を意識し、訪問着では左右の整った上品な衿元を目指します。

ただし、着物の種類だけを理由に、衣紋の深さを固定する必要はありません。

身長や体格、首筋の見え方まで確認して調整してください。

ここからは、小紋・紬・色無地で意識したい抜き加減、訪問着を品よく仕上げるポイントを順番に解説します。

最後に、身長や体型に合わせて衣紋の角度を決める方法を確認し、自分に合う基準を見つけていきましょう。

小紋・紬・色無地は自然で控えめに整える

小紋や紬を普段のお出かけで着る場合は、衣紋だけが強く目立たない、自然な抜き加減を基準にします。

首の後ろへ十分な空間を作りながらも、背中心が深く落ちすぎない位置に整えると、気負いのない着姿に仕上がります。

衿の左右が肩に沿ってなだらかに流れているかを確認し、後ろ姿全体との調和を見ましょう。

控えめに整えることは、衣紋をほとんど抜かないという意味ではありません。

詰まりすぎると首が短く見えやすくなり、前側の衿も縦に立ちます。

後ろの空間だけを狭くするのではなく、耳の下から首筋が適度に見えるように左右の衿を開くことが重要です。

正面から見たときに半衿のV字が細く閉じている場合は、衣紋が十分に抜けていない可能性があります。

色無地は、合わせる帯や着用する場面によって印象が変わる着物です。

普段のお出かけでは小紋に近い自然な形へ整え、改まった席では左右差のない落ち着いた衿元を意識してください。

着物の名称だけで抜き加減を決めるのではなく、帯や髪型を含めた装い全体の雰囲気に合わせると、後ろ姿だけが浮きません。

最初から一度で正解を出そうとせず、控えめ、標準、やや深めの3段階で着比べ、写真に残す方法が有効です。

自分では深く抜いたつもりでも、後ろから見ると詰まっている場合があります。

反対に、手の感覚ではわずかな違いでも、写真では首筋の見え方が大きく変わります。

衣紋の抜き加減を一つの決まりにせず、好みや全体のバランスで選ぶ考え方は、次の動画で詳しく解説しています。

※参考動画:衣紋の抜きを考える

訪問着は左右対称と上品な曲線を意識する

訪問着を着る際は、衣紋を深く抜くことよりも、左右の角度がそろった上品な衿元を優先します。

結婚式や式典などでは後ろ姿を見られる時間が長く、写真にも残りやすいため、背中心の傾きや片側だけ開いた衿が目立ちます。

首の後ろに適度な空間を作りつつ、中心から左右へ同じような曲線が続いているかを確認しましょう。

衣紋を大きく抜けば華やかになるとは限りません。

深すぎると首と長襦袢の間に広い隙間ができ、衿が背中から浮いて見えます。

反対に詰めすぎれば、前側の衿が縦に立ち、訪問着の落ち着いた雰囲気を損ないます。

背中心を体の中央へ置いたうえで、首筋がすっきり見える位置まで左右の衿を斜めに動かしてください。

髪型とのバランスも重要です。襟足を出したアップスタイルでは、衣紋の形がはっきり見えるため、中央の角度だけでなく、衿肩あき付近の丸みまで整えます。

髪を低い位置でまとめる場合は、衣紋との間隔が狭く見えやすいので、後頭部から衿へ続く空間も鏡で確認しましょう。

着付けが完成したら、正面だけで判断せず、後ろから写真を撮ります。

背中心が首の中央へ続いているか、衿の左右が同じ高さから下がっているか、肩に斜めじわが出ていないかを確認します。

訪問着では、抜いた量そのものよりも、中心を軸に整った形が品のよい後ろ姿につながります。

なお、訪問着だから必ず深く、小紋だから必ず浅くするという固定的な決まりはありません。

着用する場や体型に合わせて整えることを優先しましょう。

衣紋の深さを年代や場面だけで決めず、好みや着姿のバランスから考える方法は、こちらの動画で紹介しています。

※参考動画:衣紋の抜きを考える

首の長さや肩の形に合わせて角度を調整する

衣紋の抜き加減を決めるうえで、特に確認したいのが身長と体格です。

身長が高い人は衣紋を控えすぎると背中の幅が強調され、体が大きく見えやすいため、やや多めに抜くと良いです。

反対に小柄な人が大きく抜くと、衣紋だけが目立ちやすくなるので、全身とのバランスを見ながら控えめに整えます。

体格についても同じ考え方が使えます。大柄な人やふくよかな人は、首の後ろに適度な空間を作ると、背中から首元へ抜けが生まれます。

細身の人は深くしすぎると、首と衿の隙間が必要以上に広く見えるため、衿が体から離れない位置へ戻すようにしましょう。

どちらの場合も、背中心だけを下へ引くのではなく、左右の首筋が均等に見えるように整えることが重要です。

首を長くすっきり見せたい場合は、後ろの深さだけでなく、横から見える首筋にも注目します。

耳の下まで衿が詰まっていると、衣紋を抜いていても首が短く見えます。

左右の衿を斜め方向へ少し開き、細い部分を見せると、上半身が軽やかに仕上がります。

肩の形によって衿が動きやすい場合は、最初から深さを決め切らず、固定後の変化まで確認しましょう。

なで肩では衿が外側へ落ち、いかり肩では首元へ戻りやすい傾向があります。

着付け直後だけでなく、腕を軽く動かした後にも衣紋と背中心を見直すと、外出中の詰まりを防ぎやすくなります。

自分に似合う位置は、一度の着付けだけでは判断できません。

衣紋を控えめ、標準、深めに変えて着用し、正面・横・後ろから撮影してみてください。

明らかに抜きすぎた状態も一度試すと、自分に合う範囲が見つけやすくなります。

衣紋の角度と背中心が整わない原因と直し方

衣紋が詰まる、左右の衿の角度がそろわない、背中心が曲がるといった崩れは、完成した部分だけを触っても安定しません。

原因は、長襦袢を着た直後の位置合わせ、衿を動かした方向、着物を羽織る動作、紐を締める前のしわ取りなど、前の工程にあります。

まずは、衣紋が首側へ戻る原因を確認し、背中心がずれる動作を切り分けることが大切です。

そのうえで、左右の衿を正しい方向へ動かし、長襦袢と着物の背中を順番に整えます。

すべて着終えた後でも直せる方法があるため、慌てて最初から着直す必要はありません。

ここからは、衣紋が詰まったときの抜き直し方、背中心がずれる原因と修正方法、左右の衿に角度差が出た場合の整え方を解説します。

最後に、修正によって生じた背中のたるみを取り、衿元を安定させる手順まで確認しましょう。

衣紋が詰まる原因と後から抜き直す方法

衣紋が詰まる主な原因は、長襦袢や着物が前へ引かれていることです。

着物を羽織るときに腕を大きく動かしたり、前の衿を強く引いたりすると、背中側に作った空間が首元へ戻ります。

紐を締める前に衣紋を確認せず、前側だけを整えた場合も、完成後に詰まりやすくなります。

すべて着終えた後に気づいた場合は、まず左右の衿を流れに沿って斜め方向へ動かしてください。

上前と下前では布が続く向きが異なるため、それぞれの衿を真上へ持ち上げたり、真横へ広げたりしないことが重要です。

一度に大きく開くと胸元が緩むので、鏡を見ながら少しずつ調整します。

前側を整えたら、裾をめくり、長襦袢の背中心を両手で持ちます。

つかむ位置は、お尻の上付近のできるだけ高い場所です。

そのまま下方向へ引くと、長襦袢が後ろへ戻り、首元に詰まった衣紋をもう一度抜けます。

前の半衿が胸に沿う感覚も同時に確認しましょう。

強く引けばよいわけではありません。長襦袢を下げすぎると、衣紋が必要以上に深くなり、前の衿合わせも広がります。

途中で手を止め、首の後ろの空間と左右の半衿を見ながら位置を決めると良いです。

背中心が左右へずれる原因と修正方法

帯より上の背中心がずれる原因の一つは、長襦袢を羽織った直後に中心を合わせていないことです。

前の半衿だけを見て着付けを進めると、背中の縫い目が片側へ寄っていても気づけません。

その状態で衣紋を抜くと、中央ではなく斜め下へ引くことになり、左右の衿にも差が生まれます。

衣紋を抜く際に、体の正面から外れた位置に立つことも傾きにつながります。

自分で着るときは、片側の手だけで背中心を引かず、鏡に対してまっすぐ立ちましょう。

両手を同じ高さに置き、背中心を真下へ動かすと、左右へ流れにくくなります。

紐を締める動作にも注意が必要です。

片側だけを強く引いたり、紐を体の中心で大きく交差させたりすると、長襦袢の布が引っ張られます。

中心を合わせた後は、背中側の縫い目を押さえ、左右へ均等な力がかかるように締めてください。

固定後にもう一度背中心を確認すると、途中のずれを早く見つけられます。

ずれを見つけた場合は、衿元だけを左右へ動かしません。

まず紐より上の布に余裕があるかを確認し、背中心を体の中央へ戻します。

その後、左右の衿の高さと半衿の出方を整えましょう。

背中心を直す前に前側だけを触ると、いったんそろえても再び傾きます。

なお、帯より下の背中心は、着物の身幅や体型によって中央から外れる場合があります。

裾まで一直線にするために上前を動かすと、衿元や裾合わせが崩れます。

後ろ姿を整える際は、首の下から帯の上までの中心を優先してください。

左右の衿の角度が違うときの整え方

左右の衿に角度差が出たときは、どちらか一方だけを完成形へ合わせようとせず、背中心から確認します。

中央がずれた状態では、衿を同じ高さにしても後ろの角度はそろいません。

帯より上の背中心が体の真ん中にあることを確かめてから、開きすぎた側と詰まった側を分けて調整してください。

片側だけが首へ寄っている場合は、その衿を布の流れに沿って斜め下へ動かします。

横方向へ引くと胸元が開き、真上へ持ち上げると衣紋が詰まるため、衿が首から胸へ続く向きに合わせることが重要です。

反対側が開きすぎている場合は、衿先だけを引かず、紐で固定されている位置より上の布を少しずつ中央へ戻します。

見た目を確認するときは、衿の先端だけではなく、耳の下から胸元へ続く線を比較しましょう。

左右の半衿が同じ幅で見えていても、片側だけ角度が立っていることがあります。

顔を正面へ向け、あごを上げたり傾けたりせずに鏡を見ると、差を判断しやすくなります。

後ろ側では、首の中央から左右の衿へ続く形を確認してください。

片方の肩だけに斜めじわが出ている場合は、衿だけでなく、肩まわりの布が引っ張られています。

袖や身八つ口付近の布を軽く動かし、肩にかかる力を逃がしてから衿元を整え直しましょう。

一度に大きく動かすと、反対側まで崩れます。片側を少し直したら、背中心、首の後ろ、前の交点という順番で確認してください。

小さな調整を交互に重ねる方が、左右対称の形へ近づきます。

衿の流れに逆らわず、斜め方向へ動かす方法は、こちらの動画で詳しく紹介しています。

※参考動画:衣紋を後から抜き直す方法【着付師 咲季】

修正後に背中のたるみを取る方法

長襦袢の背中心を下へ引いて衣紋を抜き直すと、着物の背中には余った布がたまります。

このたるみを残したままにすると、帯の上に横じわができ、時間がたつにつれて衿元も再び動きます。

衣紋が整った時点で終わらせず、背中の布まで続けて処理しましょう。

まず、お太鼓の下へ手をそっと入れ、後ろのおはしょりの外側の布を持ちます。

内側の長襦袢や下前まで一緒につかむと、裾や衿が崩れるため、着物の表側一枚だけを確認してください。

そのまま下方向へ軽く引くと、背中に集まった余分な布をおはしょりへ移せます。

中央だけを強く引かず、背中心、その両脇、さらに外側という順番で少しずつ下げます。

縦に入ったしわは、中心から脇へ向かってなで、脇の下へ逃がしてください。

背中全体を一度に引っ張るより、数か所に分けた方が衿の角度を保てます。

引きすぎると、着物の衿と長襦袢の半衿が後ろで離れます。鏡を見ながら、背中のたるみがなくなった時点で手を止めましょう。

仕上げに、衣紋の深さ、帯より上の背中心、左右の半衿、肩のしわを順番に確認します。

必要な部分だけを小さく直せば、修正した形を崩さずに仕上げられます。

背中のたるみを後ろのおはしょりから取る方法は、次の動画で詳しく解説しています。

※参考動画:衿の着崩れを一瞬で直す方法【着付師 咲季】

まとめ

衣紋をきれいな角度に整えるには、後ろへ引く量だけでなく、帯より上の背中心を体の真ん中へ合わせることが大切です。

長襦袢の段階で中心を決め、左右の衿を布の流れに沿って斜めに動かすと、首元から背中へ続く線が自然に整います。

着物を羽織るときは、長襦袢と着物の背中心を重ね、作った衣紋をつぶさないように扱いましょう。

固定する前に、左右の衿の高さ、肩まわりのしわ、後ろ中央の位置を確認すると、仕上がりが安定します。

衣紋が詰まったり、背中心がずれたりしても、すぐに着直す必要はありません。

左右の衿を斜め方向へ動かし、長襦袢の背中心を下へ引いた後、背中のたるみをおはしょりから整えることで修正できます。

毎回「背中心を合わせる」「衿を斜めに動かす」「着物を重ねた後に再確認する」という順番で整えれば、左右差の少ない、すっきりとした後ろ姿に近づきます。

加藤咲季
監修:加藤咲季
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。

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