「衿芯って、どっち向きに入れるの？」
「うまく入れたはずなのに、なんだか浮いてしまう…」
長襦袢の衿芯（えりしん）に関するこんな疑問や不安を感じていませんか？
着物を着るうえで欠かせない衿元の美しさは、この小さな「衿芯」の扱いひとつで大きく変わります。
けれど、はじめての方にとっては入れる方向や位置、素材の違いなど、わからないことも多いものです。
この記事では、以下のような内容を丁寧に解説していきます。
- 衿芯の正しい入れ方と向き（初心者でも簡単なコツつき）
- 素材や形の違いと選び方
- 表に響かせないためのトラブル対処法と保管の工夫
さらに、動画で実演されている方法も参考にしながら、視覚的に理解しやすく解説します。
これを読めば、長襦袢の衿芯にまつわる不安がなくなり、自宅でも自信をもって準備できるようになるでしょう。
衿芯って何？安心の基本から理解しよう
「衿芯（えりしん）」とは、長襦袢の衿に差し込むことで、衿元をピシッと美しく見せてくれる補助具のことです。
普段はあまり意識しない存在かもしれませんが、着物姿の第一印象を決める“衿の立ち上がり”や“曲線の美しさ”を支えているのは、この衿芯の働きです。
初心者の方にとっては「なくても着られるのでは？」と思われがちですが、衿芯を入れないと、着姿がくたっとした印象になりやすく、だらしなく見えてしまう原因にもなります。
一方で、衿芯を入れるだけで、ぐっと凛とした衿元が完成し、着物全体のバランスも整います。
ここではまず、衿芯が担う役割や、素材・形の種類について見ていきましょう。
衿芯の役割とは？美しい着姿をつくる秘密
衿芯の目的は、大きく3つあります。
- 衿の形をキープする
特に首元から胸元にかけてのラインがピシッと保たれ、だらっと崩れるのを防ぎます。 - 衿元の浮きを防ぐ
衿が肌から浮いてしまうと、そこから着崩れにつながることも。衿芯はしっかりとフィット感を保ちます。 - 着物の格を整える
衿元の印象は、着物全体の格にもつながります。たとえば、フォーマルな場では特に「凛とした衿」が求められます。
加藤咲季さんの動画でも、「衿芯を入れないと、衿のヨレやたわみが出やすくなる」と解説しており、特に襟合わせが緩むと着姿がだらしなく見えるとされています（※）。
※参考動画：テープで貼ってはいけない半衿３選
どんな素材・形がある？種類と選び方ガイド
衿芯には、主に以下のような種類があります。
素材別
- ポリエチレン製（プラスチックタイプ）
定番で扱いやすく、形がしっかり出るタイプ。適度な硬さとしなりがあり、初心者にも使いやすいです。 - メッシュタイプ（通気性重視）
夏場など、蒸れやすい季節におすすめ。柔らかめで自然な仕上がりに。 - 布製（塩瀬、綸子など）
柔らかい質感で、フォーマルな着物に使われることも。美しい曲線を出したい人に◎
形状別
- ストレート型（まっすぐ）：最もスタンダード。衿元をシャープに見せたいときに向いています。
- 湾曲型（カーブ）：衿のラインに沿ってフィットしやすく、優しい印象を与えます。
用途や季節、好みに応じて選ぶのがおすすめです。
なお、初心者さんは「ポリエチレン製のストレート型」から始めると扱いやすいでしょう。
実演でわかる！衿芯の入れ方と向きのポイント
衿芯を持ってはみたものの、「どっち向きに入れたらいいの？」「うまく入らない…」と悩んだことはありませんか？
正しい差し込み方や向きを知ることで、衿元の仕上がりがぐっと美しくなり、着崩れも防げます。
この章では、加藤咲季さんの実演動画をもとに、初心者でも安心して取り組める手順とコツをご紹介します。
一つひとつ丁寧に確認しながら、実際の動きをイメージしてみてください。
どこから差し込む？「内側から」が基本
衿芯は、長襦袢の「半衿（はんえり）」と「地衿」の間に差し込んで使用します。
挿入口は衿の内側の両端、つまり「首の後ろから左右に向かって差し込む構造」が基本です。
入れる順番としては、右側・左側の順はどちらでもかまいません。
ただし、左右バランスよく入れることが重要なので、「片方を差し込んだら、もう片方も同じ長さだけ入っているか」を鏡で確認しましょう。
また、加藤さんの実演でも「力を入れすぎず、衿芯が自然に中を滑るように入れるのがポイント」と解説されています（※）。
※参考動画：テープで貼ってはいけない半衿３選
とがった方を上に！向きの重要ポイント
衿芯には、よく見ると片方が丸く、もう片方が少しとがっている形状をしていることがあります。
正しい向きは「とがっている方を上（首側）、丸い方を下（胸側）」にして差し込むこと。
理由は、とがった側が首元のカーブにしっかりとフィットし、衿の立ち上がりがより自然で美しく見えるためです。
丸い方を上にしてしまうと、衿元に浮きやすさや“たわみ”が出る原因になります。
衿芯に向きがないタイプの場合でも、「先端を衿のカーブに沿わせる」意識で入れるのが理想です。
上手に入れるコツ：シュコシュコ＆背中心揃え
入れる際のコツは、衿芯を「シュコシュコ」と少しずつ前後に動かしながら、無理に押し込まずスライドさせること。
加藤さんの動画では、このような滑らかな動きが紹介されており、衿芯が途中で引っかからず、内側の布にダメージを与えにくいとされています。
また、左右の衿芯の長さが揃っていないと、衿元が片側だけ浮いたり、歪んだ印象になることがあります。
挿入後は、背中側の「背中心」で左右の出方をチェックし、必要に応じて微調整してください。
衿芯が正しく入るだけで、衿のラインがスッと通り、着姿全体の印象が引き締まります。
失敗しない！衿芯を入れるときのよくある悩み対策
「ちゃんと衿芯を入れたのに、なぜか浮いてしまう」
「シワがよって綺麗に見えない」
このようなトラブルは、実は多くの方が経験しています。
初心者にありがちな失敗は、衿芯の差し込み方だけでなく、素材の選び方や着用時の動作にも原因があることが多いです。
この章では、そんなよくある悩みとその解決策を具体的に解説していきます。
表に響く？衿芯が浮いたりしわが出たときの対処法
衿芯が浮いてしまったり、表面に波打つようなシワが出てしまう原因には、次のような要素があります。
➀衿芯が長すぎる／硬すぎる
必要以上に長かったり、硬さが強すぎる素材を選んでしまうと、衿のカーブに沿わず浮いてしまうことがあります。
→ 長さは「左右どちらも背中心から1cm程度手前」で止めるのが目安。硬さは“程よくしなる”ものを選びましょう。
➁差し込み時に生地が寄っている
衿芯を入れる際に布地が引きつれてしまうと、外からシワが見えてしまいます。
→ 入れる前に、半衿の内側を軽くなでて整えておくと滑りが良くなり、きれいに収まります。
③衿芯の向きが逆になっている
とがった方を下にしてしまうと、衿のカーブに合わず“ぽこっ”と浮いたような印象になります。
→ 正しい向きに差し込み直し、首のカーブとフィットさせましょう。
加藤咲季さんの解説では、「硬すぎる衿芯を無理に使うとシワが出る」との指摘もあります（※）。
無理なく収まる柔軟な素材選びが大切です。
※参考動画：テープで貼ってはいけない半衿３選
素材別の注意点：厚さ・硬さのせいで失敗しないために
衿芯の素材選びは、仕上がりの印象やトラブルの有無に大きく関わります。
以下、素材ごとの注意点をまとめました。
- プラスチック製（ポリエチレン）
初心者に扱いやすい定番素材。ただし、真夏は通気性が悪く蒸れやすいため注意が必要。 - 布製（塩瀬・綸子など）
柔らかく曲線が作りやすい一方で、形が崩れやすく、差し込みが難しい場合も。滑りにくくなるため、シュコシュコ動かしながら入れる工夫が必要です。 - メッシュ素材
通気性に優れ、暑い季節に最適。ただし、柔らかいため支える力は弱めです。しっかりした衿を求める場には不向きかもしれません。
衿芯は「使う場面」によって選び分けるのが理想です。たとえばフォーマルな席では“しっかり立つ素材”、カジュアルな日常着では“柔らかく自然な素材”といったように。
また、加藤咲季さんは「最初は“洗える襦袢に洗える半衿を縫い付けた状態”にしておくと、毎回外さなくて済んで楽」とも語っています。
衿芯の扱いもこの工夫でぐっと快適になります。
※参考動画：テープで貼ってはいけない半衿３選
知っておきたい！衿芯の保管と代用品活用法
衿芯は小さなアイテムですが、扱い方次第で長持ちしやすくなります。
また、「あっ、忘れた！」というときに役立つ身近な代用品も存在します。
この章では、衿芯の正しい保管方法と、いざというときの応急テクニックを解説していきます。
正しい保管方法：クリップ・ケースでの収納
衿芯を使った後、そのまま長襦袢に差しっぱなしにしていませんか？
実はこれ、衿芯や襦袢の両方を痛める原因になります。
取り外して、次のような方法で保管するのが理想です。
- クリップで止めて“丸めて収納”
湾曲がついている衿芯は、自然なカーブを保ったまま丸め、やわらかいクリップで止めて収納するのがおすすめです。
※硬い輪ゴムなどで締めるとクセがつきすぎてしまうためNG。 - 書類ケースや下敷きケースに収納
まっすぐな衿芯は、薄手のクリアファイルや文具店で売っているプラスチック製の書類ケースに収めると、折れやクセを防げます。
加藤咲季さんも動画内で「一度クセがつくと、次に使うときに浮きやヨレが出やすくなる」と話しており、収納時の“型崩れ防止”は非常に重要です（※）。
※参考動画：テープで貼ってはいけない半衿３選
代用品の応急テク：クリアファイル＆厚紙の使い方
「衿芯を忘れてしまった！」「旅行先で必要になった！」
そんなときに役立つのが、身近にある文具や生活用品を使った応急処置です。
- クリアファイル（硬めのもの）
必要なサイズにカットし、軽くしならせるだけで即席衿芯に。プラスチック素材なので湿気にも強く、旅行時にもおすすめ。 - 厚紙（台紙やDM封筒の中紙など）
こちらも幅2.5cm程度にカットして使えますが、水分には弱いため、一時的な使用にとどめましょう。 - アイロンプリント紙の台紙（やや硬め）
適度な柔軟性とカーブがあり、応急処置としては使いやすいとの声も。
ただし、代用品はあくまで“その場しのぎ”としての使用にとどめ、肌へのあたりや衿の浮きを十分に確認してください。
まとめ
衿芯は、着物姿を美しく整えるための大切な脇役です。
見えない部分ながら、その入れ方ひとつで衿元の印象や着崩れ防止に大きな影響を与えます。
今回ご紹介したポイントを振り返ると、
- 正しい入れ方：衿の内側から差し込み、とがった方を首元に向けて入れる
- 選び方のコツ：用途に応じて素材や形を選び、季節やシーンに合わせて使い分ける
- トラブル対策：浮きやしわの原因を見極め、やさしくフィットさせるように調整する
- 保管と代用：型崩れしないよう収納し、万一のときには身近なもので代用可能
とくに初心者の方にとっては、「シュコシュコ動かす」などの感覚的なコツが役立ちます。
加藤咲季さんの実演動画も、視覚的に非常にわかりやすいため、ぜひ参考にしてください（※）。
衿元がピシッと決まると、自然と背筋も伸びて、気持ちまで整うものです。
小さな一手間が、着物時間をもっと心地よいものに変えてくれますように。
※参考動画： テープで貼ってはいけない半衿３選
着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
