
「高温多湿の季節に麻着物を着ても大丈夫?」
そんなふうに思っていませんか?
汗ばむ日本の夏や湿気の多い海外の環境では、着物の着用に悩みがつきもの。
とくに「麻」と聞くと、
「シワが気になる」
「カビたりしない?」
「お手入れが難しそう…」
といった不安を感じてしまう方も多いかもしれません。
でも実は、麻着物は高温多湿の気候にこそぴったりの素材。
正しく選び、きちんとケアすれば、夏の着物時間がぐんと快適になります。
本記事では以下の3つのポイントを中心にご紹介します。
- 麻が高温多湿でも涼しく快適に過ごせる理由
- 自宅でできる、洗濯や日々のお手入れ方法
- カビ・虫害を防ぐ収納と保管のコツ
さらに、初心者でもすぐ取り入れられる「アイロン不要のしわ対策」や「着回ししやすい麻の選び方」など、見落としがちなポイントにも触れていきます。
「暑いから無理」と思い込まず、涼やかな麻の着物を上手に活かして、夏の装いをもっと自由に楽しんでみませんか?
麻素材の着物が夏の高温多湿に強い理由
高温多湿の日本では、夏場の着物選びが悩みの種になりがちです。
汗によるベタつき、熱のこもり、蒸れによる着崩れなど、暑さが引き起こす問題は多岐にわたります。
そんな環境において、麻素材は非常に頼もしい味方となってくれます。
麻着物がなぜ夏向きなのか、その特徴を詳しく見ていきましょう。
麻の通気性と熱伝導率の高さ
麻は天然繊維の中でもとくに「通気性」と「熱伝導性」に優れています。
繊維自体に微細な隙間が多く、風をよく通すため、汗をかいてもすぐに乾き、肌に貼りつくことがありません。
さらに、熱伝導率が高いため、体温が布を通じて素早く外へ逃げやすく、ひんやりとした肌触りが続きます。
加藤咲季さんの動画でも「麻は湿気を吸って、すぐ外に逃がしてくれるから、すごく快適」と紹介しています(※)。
着用時の蒸れやべたつきが軽減され、汗ばむ季節でも着物をさらっと楽しむことができます。
※参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材
代表的な産地と麻の種類の違い(小千谷・近江・宮古など)
麻の着物といっても、実は種類がさまざま。
たとえば「小千谷縮(おぢやちぢみ)」は苧麻(ラミー)という麻素材を使った夏の高級素材で、シャリ感のある肌触りと美しいシボが特徴です。
近江上布(おうみじょうふ)は滋賀県産で、柔らかな風合いと落ち着いた色合いが魅力。
宮古上布や八重山上布など沖縄の麻織物は、通気性と軽やかさで古くから暑さ対策に用いられてきました。
また、「苧麻(ラミー)」と「亜麻(リネン)」では繊維の太さやコシが異なり、風合いに違いが出ます。
ラミーはシャリっとした張り感があり、リネンはやや柔らかく優しい印象です。着心地や用途に合わせて選ぶのがポイントです。
着付け初心者や中堅の方にとっては、こうした素材の違いを知ることが快適な夏の装いにつながります。
どの種類も「蒸れにくさ」や「汗の乾きやすさ」で共通しており、暑い気候でこそ真価を発揮します。
初心者でも安心!麻着物の洗濯・ケア方法
麻の着物は「自宅で洗っていいの?」「シワになりやすそう」といった疑問を抱かれることが多いですが、正しい方法を知っておけば、日常的なケアも難しくありません。
ここでは、洗濯から干し方まで、初心者でも実践しやすい手入れの基本をご紹介します。
自宅洗いの手順(地詰め・ネット・脱水・整形)
加藤咲季さんも動画で「麻着物は自宅で洗うことができます」と紹介しているように、麻素材は扱いに慣れれば洗濯も可能です(※)。
基本の手順は以下の通りです。
- 洗う前に確認:色落ちしやすい麻もあるので、目立たない箇所に水をつけて色落ちテストを。
- ネットに入れる:着物専用ネット、または畳んで大きめの洗濯ネットに入れ、型崩れを防ぎます。
- 洗濯機は「手洗いコース」+中性洗剤:脱水は短時間(30秒〜1分)にとどめ、シワを抑えます。
- 干す前の「地詰め」:洗い上がりは形が崩れやすいので、縦横の寸法を意識して手で整える「地詰め」が重要です。
麻は吸水性が高いため、乾くのが速い反面、放置するとそのまま固まったようなシワになってしまいます。
脱水後すぐに干し、形を整えることで、見栄えのよい仕上がりになります。
※参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材
アイロン不要!しわを防ぐ干し方・整えるコツ
アイロンがけはできれば避けたい…という方でも、干し方にひと工夫を加えるだけで、シワを最小限に抑えることができます。
ポイントは以下の3つです。
- 風通しのよい場所に陰干し:直射日光は退色の原因になるため、室内の窓際や日陰で風が通る場所が理想的です。
- 裾を引っ張って重力を活用:自然な重みで縦のシワが伸びやすくなります。
- ハンガーは幅広タイプを使用:肩や衿のシワを防ぎ、型崩れも防止できます。
また、着物用の「物干しハンガー」や「ピンチハンガー」を使えば、型をキープしやすく、整えながら干すことができます。
加藤咲季さんの動画でも「麻はしっかり整えて干せば、アイロンいらずで大丈夫な素材」と説明されています。
しわを恐れず、まずは丁寧に整えて干すことが何よりのケアになります。
高温多湿を乗り切る!保管と日々のお手入れ術
麻着物は涼やかで実用的な反面、保管方法を間違えるとカビやシミ、虫害などのトラブルを招くこともあります。
特に湿気の多い季節や海外在住者にとって、日頃のお手入れと正しい収納は欠かせないポイントです。
ここでは、高温多湿に強く、長く美しく着物を保つための具体的なケア方法をご紹介します。
汗・湿気を防ぐ陰干し&クリーニング頻度
着物の大敵は「見えない汗と湿気」です。
加藤咲季さんも動画内で「着物は毎回洗わず、ワンシーズンに1回の洗いで十分」と語っています(※)。
その代わりに欠かせないのが「着た後すぐの陰干し」です。
陰干しのポイント
- 着用後はすぐに着物ハンガーにかける
湿気を飛ばし、折りジワを防ぎます。 - 風通しの良い部屋で半日から一日干す
直射日光はNG。カビや黄ばみを防ぎます。 - 汗が気になる箇所(衿・袖口)は拭き取りを
乾いたタオルやベンジンで優しく拭くのも有効です。
フォーマル着物であっても「次の出番が1年先なら、すぐに悉皆屋(しっかいや)へ出すのがベスト」とも解説されています。
普段着なら、汗抜きや丸洗いはシーズン終わりに1回を目安にしましょう。
※参考動画:着物を洗う頻度はどれくらい?
防虫・カビ対策と収納の工夫(たとう紙・キーパー活用)
麻は湿気に強い素材とはいえ、完全に無敵ではありません。
特に保管中の湿気や虫には注意が必要です。
以下のような対策を講じておくと、安心して長期保存が可能になります。
- たとう紙を活用する
吸湿性があり、着物の通気を確保してくれます。1年に1度は交換を。 - 防虫剤は「無臭タイプ+直接触れない配置」
ニオイ移りや変色を防ぎつつ、虫害を抑えます。 - 収納場所は湿気が少ない引き出しや桐たんすが理想
プラスチック製ケースは湿気がこもりやすいため、乾燥剤を併用しましょう。 - こまめな換気と衣替え時の点検も忘れずに
加藤さんも「湿気がたまらないように、定期的に風を通すのがおすすめ」とアドバイスしています。
長梅雨や海外の多湿地域では、除湿剤や除湿器の併用も効果的です。
麻着物の実例レビュー&使い方のコツ
麻の着物は「夏の定番」と言われる一方で、「どんな風に使いこなせばいいの?」「実際に着てみてどうだった?」といった実用面が気になる方も多いはずです。
ここでは加藤咲季さん自身の経験や、ユーザーの体験から見えてくる「麻着物の活用術」と「注意点」を紹介します。
加藤咲季さんが実践する麻着物の使い方と快適ポイント
加藤咲季さんは動画内で「私は麻の着物を、雨の日や頻繁に脱ぎ着する日にも着ます」と述べています。
実用性を重視する日常では、絹ではなく化繊や麻を選ぶことが多いそうです。特に麻は、
- 軽くて風通しがよいため、着ていても疲れにくい
- 汗をかいてもベタつかないので、肌が快適
- ラフに扱えて神経質にならなくて済む
といった利点があります。
一方で、「ポリエステルなどと違って熱がこもりやすくない代わりに、シワが残りやすい」「着る前にしっかり整えるのが肝心」といった注意点も。
加藤咲季さんは「麻は形を整えて干すだけで、アイロン不要で十分きれいに保てます」とアドバイスしています。
上布・綿麻との使い分け術
麻の中でも、用途や着心地に応じて使い分けるのが賢い方法です。
たとえば、
- 小千谷縮や近江上布:本麻100%で高級感があり、盛夏の街着やちょっとした外出にぴったり
- 綿麻の着物:麻の涼しさ+綿の柔らかさで、初夏や残暑の時期におすすめ
- 化繊混の麻風素材:アイロン不要で、シワや汚れに強く旅行やイベント時に便利
加藤さんも動画内で「脱ぎ着の多い日、暑い日などは麻や化繊をうまく使い分けています」と語っています。
見た目だけでなく、実際の過ごしやすさやお手入れのしやすさを重視して選ぶことが、快適な着物ライフへの第一歩になります。
まとめ
高温多湿な気候でも快適に着物を楽しみたい方にとって、麻素材は非常に頼れる選択肢です。
通気性と熱放出性に優れ、汗をかいてもベタつかず、夏の装いに涼感と軽やかさを与えてくれます。
正しい洗濯方法や干し方、収納時の湿気・カビ対策を知っておけば、初心者でも麻着物を長く美しく保つことができます。
また、綿麻や化繊混などのバリエーションを活用すれば、用途や季節に応じた柔軟な着回しも可能です。
「夏は着物がつらい」と感じていた方も、麻という素材の力を味方につければ、その印象が変わるはず。
暑い季節こそ、心地よい装いで日常を彩る──そんな新しい着物の楽しみ方を、ぜひ始めてみてください。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。