「着物を着てみたら、袖口から長襦袢が出てしまった」
「振りから白い袖が見えるけれど、どこを直せばよいのか分からない」
このような状態に気づくと、そのまま外出してよいのか不安になりますよね。
入学式や卒業式、結婚式、お茶会などを控えているなら、着姿に影響しないよう早めに整えておきたいところです。
長襦袢が見える原因は、すべて同じではありません。袖口から出る場合は裄・肩幅・袖幅、振りから見える場合は袖丈の差が関係します。
見えている場所を確認せずに留めると、袖の形が崩れたり、別の部分から飛び出したりするため注意が必要です。
この記事では、次の3点を分かりやすく解説します。
- 袖口と振りでは、確認する寸法がどう違うのか
- 安全ピンや簡単な縫い方で、どのように長さを調整するのか
- 応急処置で済む場合と、仕立て直しが必要な場合の見分け方
まずは着物と長襦袢を平らに重ね、背中心から肩まで、肩から袖口まで、袖山から袖下までを順番に確認しましょう。
どこに寸法差があるか分かれば、タックや仮縫いで整えられるのか、専門店へ相談すべきなのかを判断できます。
大切なのは、長襦袢全体を無理に短くするのではなく、原因に合った部分だけを調整することです。
袖口と振りの違いから、正しい対処法を見ていきましょう。
Contents
長襦袢が袖口や振りから出る原因を見分けよう

長襦袢が着物の袖から見えているときは、すぐに安全ピンで留めたり、袖全体を折り込んだりするのではなく、まず「どこから出ているか」を確認します。
袖口から見える場合と、振りから飛び出す場合では、原因となる寸法が異なるためです。
袖口から長襦袢が出るときは、裄の長さだけでなく、背中心から肩までの肩幅と、肩から袖口までの袖幅を分けて確認します。
一方、振りから見えている場合は、着物と長襦袢の袖丈が合っていないケースが中心です。
また、左右どちらか片方だけが出る場合や、着付けた直後は問題がなかったのに動くうちに見えてきた場合は、寸法ではなく着付け方が影響していることもあります。
ここからは、袖口から見える場合、振りから出る場合、着付け方に原因がある場合の3つに分けて、確認するポイントを解説します。
袖口から見えるときは裄・肩幅・袖幅を確認する
手を下ろしたとき、着物の袖口から長襦袢が見えている場合は、長襦袢の裄が着物より長い状態が考えられます。
ただし、裄だけを測って「長い」と判断すると、どこを調整すればよいのか分かりません。
裄は、背中心から肩山までの肩幅と、肩山から袖口までの袖幅を合わせた長さです。
そのため、長襦袢の裄が余っていても、肩幅が長い場合と袖幅が長い場合では、つまむ位置を変える必要があります。
確認するときは、着物と長襦袢を平らな場所に広げ、背中心をそろえて重ねます。
最初に背中心から肩の縫い目までを比べ、次に肩の縫い目から袖口までを確認しましょう。
長襦袢の肩幅が余っているなら肩山付近、袖幅が長いなら袖側を調整します。
また、着物の袖口から長襦袢が左右均等に出ている場合は、寸法差が原因である可能性が高くなります。
反対に、片側だけが見えているなら、衿合わせや背縫いの位置も確認してください。
肩幅と袖幅を分けて確認する方法は、次の動画でも詳しく解説しています。
※参考動画:襦袢の袖が着物から飛び出す時の対処法【着付師 咲季】
振りから出るときは袖丈を確認する
着物の振りから長襦袢の袖が下へ飛び出している場合は、長襦袢の袖丈が着物より長い状態を確認します。
振りとは、袖付けより下にある、縫い合わされていない部分です。
腕を下ろしたときや歩いたときに、この部分から長襦袢がのぞく場合は、裄ではなく縦方向の寸法差を疑いましょう。
袖丈は、袖山から袖下までの長さを指します。
着物と長襦袢の袖丈が同じでは、内側の襦袢が収まりにくくなるため、一般的には長襦袢のほうをわずかに短く仕立てます。
ただし、リサイクル着物やお下がり、既製品の長襦袢を組み合わせると、この差が大きすぎたり、反対に襦袢のほうが長かったりすることがあります。
確認するときは、着物と長襦袢の袖山をそろえ、袖下の位置を比べてください。
長襦袢の袖下が着物より下に出ているなら、余っている分を折り上げる調整が必要です。
数センチ程度の差であれば、脇の下付近を内側へ折り、表側と外側を軽く縫う方法で対応できます。
振りから出る長襦袢の調整方法は、次の動画で解説しています。
※参考動画:襦袢の振りが着物よりも長い時の対処法【着付師 咲季】
片側だけ出るときは着付け方も見直す
着物と長襦袢を重ねたときには大きな寸法差がないのに、着付けると片方の袖だけが出る場合は、着付け方を見直します。
寸法が原因であれば、左右の袖口や振りに同じようなずれが出やすいためです。
最初に確認したいのは、長襦袢の背縫いが背中の中心に合っているかどうかです。
背縫いが左右へずれていると、一方の袖が長くなり、反対側が短く見えます。
長襦袢を着た段階で左右の袖口を確認し、どちらかだけ手の甲にかかっていないか見てください。
次に、着物の背縫いと長襦袢の背縫いが重なっているかを確かめます。
着物を羽織ったときに背中心がずれると、長襦袢の袖が片側へ引かれ、袖口や振りから見えやすくなります。
胸紐や伊達締めを締める際に、脇の布を前へ引きすぎることにも注意が必要です。
袖付け周辺の生地まで引っ張ると、長襦袢の袖が内側へ収まらず、振りから飛び出す原因になります。
紐を締める前に、左右の袖を軽く引いて位置を整え、脇の布が自然に下がっている状態を確認しましょう。
寸法に問題がなければ、すぐに縫い直す必要はありません。
背中心、袖の左右差、脇の布の引き具合を順番に直すことで、長襦袢がきれいに収まる場合があります。
着物と長襦袢を重ねて長さを確認する方法

袖口や振りから長襦袢が見える原因を正しく判断するには、着た状態だけでなく、着物と長襦袢を平らに重ねて寸法差を確認することが大切です。
着用中は、衿合わせや紐の締め方、背中心のずれによって袖の位置が変わるため、実際の長さが合っているか判断しにくくなります。
確認するときは、着物と長襦袢を同じ向きに広げ、背中心や肩山などの基準となる位置をそろえます。
そのうえで、背中心から肩まで、肩から袖口まで、袖山から袖下までを順番に比べましょう。
裄を一つの長さとして見るのではなく、肩幅と袖幅に分けて確認すると、調整すべき場所が明確になります。
ここからは、肩幅・袖幅・袖丈の順に、重ね方と確認するポイントを解説します。
背中心から肩までを合わせて肩幅を比べる
最初に確認するのは、背中心から肩の縫い目までの長さです。
この部分が長襦袢のほうだけ長いと、肩周りの布が余り、その分だけ袖全体が外側へ押し出されます。
結果として、着物の袖口から長襦袢が見えやすくなります。
着物を平らに広げたら、その上に長襦袢を重ね、背縫い同士をぴったり合わせてください。
裾まで重ねる必要はなく、背中から袖周りを確認できれば十分です。
次に、衿の付け根から背縫いがずれていないかを確かめ、左右の肩山が自然に重なるよう整えます。
背中心は合っているのに、長襦袢の肩の縫い目が着物より外側に出ている場合は、長襦袢の肩幅が長い状態です。
このとき、袖口だけを内側へ折っても、肩周りに残った余りは解消されません。
調整するなら、肩山付近で余分な布をつまみ、タックを取る方法が適しています。
反対に、長襦袢の肩の縫い目が着物より内側に入っている場合は、肩幅が短い状態です。
無理に外側へ引っ張ると、背中心がずれたり、衿元が崩れたりするため注意しましょう。
左右も同じように確認します。
片側だけ肩の縫い目がずれているなら、寸法差ではなく、重ね方や縫製のゆがみも考えられます。
背中心を合わせ直してから、もう一度比較してください。
肩幅を確認する手順は、次の動画でも詳しく解説しています。
※参考動画:襦袢の袖が着物から飛び出す時の対処法【着付師 咲季】
肩から袖口までを合わせて袖幅を比べる
肩幅を確認したら、次は肩の縫い目から袖口までの長さを比べます。
この部分が袖幅です。
背中心から肩までが合っていても、長襦袢の袖幅だけが長ければ、袖口から内側の布が飛び出します。
比較するときは、着物と長襦袢の肩の縫い目を同じ位置に合わせてください。
肩山だけをそろえるのではなく、袖の上側がねじれていないか、袖口まで自然に伸びているかも確認します。
長襦袢の袖口が着物より外側へ出ていれば、その差が余っている長さです。
たとえば、長襦袢の袖口が着物より1cm外側へ出ているなら、袖幅に約1cmの差があります。
この場合は、肩ではなく袖側をつまんで長さを調整します。
肩山付近で詰めると、肩幅まで短くなり、衿や身頃の位置に影響するため、原因に合った場所を選ぶことが重要です。
長さを測るときは、柔らかいメジャーを使うと確認しやすくなります。
ただし、数字だけで判断せず、実際に重ねたときの収まりも見てください。
着物と長襦袢では生地の厚みや柔らかさが異なるため、わずかな差なら着付けで収まる場合もあります。
左右の袖幅も比べておきましょう。両側が同じだけ長ければ寸法差と判断できます。
片側だけ差があるときは、背中心や肩の縫い目を合わせ直してから再確認します。
袖山と袖下を合わせて袖丈を比べる
振りから長襦袢が出る場合は、袖山から袖下までの縦の長さを確認します。
袖山とは、袖の上端にある折り目の部分です。
ここを基準にしないまま袖下だけをそろえると、正しい寸法差を判断できません。
着物と長襦袢の袖を重ね、まず袖山をぴったり合わせます。
その状態で、袖下の位置を比べてください。
長襦袢の袖下が着物より下へ出ていれば、襦袢の袖丈が長い状態です。
反対に、長襦袢の袖下が上にある場合は、袖丈が短いと判断できます。
長襦袢は、着物の内側に収まるよう、着物より少し短く仕立てられていることが一般的です。
ただし、お下がりやリサイクル着物、既製品の襦袢を組み合わせると、袖丈の差が合わないケースがあります。
同じ「一尺三寸袖」と表示されていても、仕立てや縮みによって実寸が異なるため、必ず現物を重ねて確認しましょう。
長襦袢の袖丈がわずかに長い場合は、脇の下付近を内側へ折り上げて調整できます。
差が大きいと、折った部分に厚みが出たり、袖の動きが不自然になったりするため、専門店への相談が必要です。
また、左右の袖丈が同じかどうかも確認してください。
片方だけ振りから出る場合は、袖丈の違いではなく、着付け時の背中心や脇の布の引き方が影響している可能性があります。
袖丈を短く調整する方法は、次の動画で解説しています。
※参考動画:襦袢の振りが着物よりも長い時の対処法【着付師 咲季】
長襦袢が出るときの簡単な調整方法

着物と長襦袢を重ねて寸法差を確認できたら、原因となっている部分だけを短く整えます。
袖口から見える場合でも、背中心から肩までが長いのか、肩から袖口までが余っているのかによって、タックを取る位置は同じではありません。
また、振りから出る場合は、横方向の裄ではなく、縦方向の袖丈を調整する必要があります。
調整前には、着物と長襦袢をもう一度重ね、どの程度つまめば収まるかを確かめてください。
最初から大きく折るのではなく、少量ずつ仮留めして着用し、左右の袖口や振りを確認すると失敗を防げます。
ここからは、肩幅が長い場合、袖幅が余る場合、袖丈が長い場合に分けて、簡単な整え方を解説します。
肩幅が長いときは肩山付近にタックを取る
長襦袢の背中心から肩までが着物より長い場合は、肩山付近の布を折り込んで肩幅を短くします。
袖口から襦袢が出ているからといって袖先をつまむと、肩周りの余りが残り、根本的な寸法差は解消されません。
まず背中心を合わせ、長襦袢の肩の縫い目が着物より外側へ出ていることを確認しましょう。
調整するときは、長襦袢の肩山付近で余分な布を内側へ折り、タックを取ります。
外から見えない部分なので、細かく縫い込む必要はありません。
ただし、安全ピンだけで留めると肩の表面が膨らみやすいため、肩幅を詰める場合は糸で固定したほうが自然に収まります。
縫う前には、しつけ糸などで仮留めし、長襦袢を着て左右の袖口を確認してください。
折り込みすぎると裄が短くなり、袖口が手首より内側へ入りすぎます。
片側だけを見て決めず、両方の袖が同じ位置へ来ているか確かめることが大切です。
この調整方法は、次の動画でも詳しく解説しています。
※参考動画:襦袢の袖が着物から飛び出す時の対処法【着付師 咲季】
袖幅が長いときは袖側をつまんで留める
背中心から肩までの長さは合っているものの、肩の縫い目から長襦袢の袖口までが着物より長い場合は、袖側の余分な布をつまんで調整します。
この状態では肩幅に問題がないため、肩山を詰めると身頃まで内側へ引かれ、衿や背中心がずれやすくなります。
着物と長襦袢の肩の縫い目を合わせたら、袖口から出ている分を確認してください。
たとえば、長襦袢が約1cm長いなら、袖側で同程度のタックを取ります。
折る場所は、着物を重ねたときに表から目立たず、袖の動きを妨げない位置を選びましょう。
袖側の調整は、軽く縫っても、小さな安全ピンで留めても対応できます。
参考動画では、肩幅を詰める部分とは異なり、袖側は安全ピンを使っても外側の形に影響しにくいことを解説しています(※)。
ただし、金具が袖の外へ出たり、腕に当たったりしないよう、必ず長襦袢の内側から留めてください。
仮留め後は長襦袢と着物を実際に着用し、手を下ろした状態だけでなく、腕を前後に動かして袖口を確認します。
動いたときに布が引きつれるなら、留める位置が袖口に近すぎるか、つまむ量が多すぎます。一度外して調整し、自然に袖が重なる位置を探しましょう。
※参考動画:襦袢の袖が着物から飛び出す時の対処法【着付師 咲季】
袖丈が長いときは脇の下を折り上げて縫う
着物の振りから長襦袢が下へ出る場合は、長襦袢の袖丈を短くします。
袖下の先端をそのまま折ると、底の部分に厚みがたまり、袖の形が不自然になりやすいため、脇の下に近い位置で折り上げるのがポイントです。
着物と長襦袢の袖山を合わせ、襦袢のほうがどれだけ長いか確認したら、脇の下付近を内側へつまみます。
参考動画では、この部分を約1cm折り上げ、表側と外側の両方を同じ高さになるよう軽く縫う方法を解説しています。
長襦袢の袖丈が長い場合は、ここを少しつまむだけで縦方向の長さを調整できます。
左右の袖で同じ量を折り、縫う前に振りの位置を見比べてください。
片側だけ多くつまむと、袖下の高さがそろわず、着たときに左右差が目立ちます。
また、寸法差が数センチ以上ある場合は、折り上げた部分が厚くなり、袖の落ち方に影響します。
そのようなときは無理に重ねて縫わず、袖丈直しを専門店へ相談する方法が適切です。
長襦袢の袖丈が着物より短い場合は、この折り上げでは解決できません。
短い布を簡単な処置で長くすることはできないため、次章で紹介する応急処置や、替え袖・仕立て直しを検討しましょう。
※参考動画:襦袢の振りが着物よりも長い時の対処法【着付師 咲季】
急いでいるときの応急処置と注意点

入学式や結婚式などが迫っており、長襦袢を仕立て直す時間がない場合は、安全ピンや仮縫いで一時的に整えられます。
ただし、応急処置は寸法そのものを直す方法ではありません。
留める位置やつまむ量が合っていないと、袖口が膨らんだり、腕を動かしたときに振りから再び出たりします。
また、正絹や薄い生地へ針を通すと穴が残ることがあり、粘着テープは剥がす際に表面を傷めるおそれがあります。
急いでいるときほど、着物ではなく長襦袢側で調整し、最小限の処置にとどめることが大切です。
ここからは、安全ピンを使う方法、テープを避けたい生地、長襦袢の袖丈が短い場合の注意点に分けて解説します。
小さな安全ピンで内側から仮留めする
長襦袢の袖幅が着物よりわずかに長く、袖口から見えている場合は、小さな安全ピンで余分な部分をつまむ方法があります。
着物を傷めないよう、ピンを通すのは長襦袢だけにしてください。
最初に着物と長襦袢を重ね、袖口から余っている長さを確認します。
長襦袢の袖側を内側へ折り、小さな安全ピンで固定しましょう。
金具が表へ響かない位置を選び、先端が腕側へ向かないように留めます。
大きなピンを使うと重みで布が下がり、袖の形も膨らみやすくなるため、できるだけ軽く小さいものが適しています。
一方、肩山付近はピンで留めると表面が盛り上がるため、糸で縫う方法が向いています。
つまり、安全ピンはどこにでも使えるわけではなく、袖側の一時的な調整に限って活用するのがポイントです。
留めた後は、長襦袢と着物を着て、腕を下ろした状態と前へ伸ばした状態の両方を確認してください。
引きつれや違和感があれば、つまむ量を減らすか、ピンの位置を袖口から少し離します。
外出後はそのまま保管せず、帰宅したら早めに外しましょう。
正絹や薄い生地にはテープを直接貼らない
両面テープは針を使わずに留められるため便利に見えますが、長襦袢の袖を調整する目的では慎重に扱う必要があります。
特に、正絹、薄物、刺繍や地紋のある生地、高価な長襦袢には直接貼らないほうが安全です。
参考動画では、レースや刺繍など凹凸のある生地は、テープを剥がすときに毛羽立ったり、表面が傷んだりするため不向きと説明しています(※)。
お気に入りの半衿や高価な品についても、針と糸で付ける方法がおすすめです。
長襦袢の袖でも、粘着面を剥がす際の負担は同様に考えなければなりません。
どうしてもテープを使う場合は、洗える化繊の長襦袢など、比較的丈夫な生地に限定します。
目立たない場所で粘着剤が残らないか確認し、着用後は早めに剥がしましょう。
半衿用テープも長期間付けたままにせず、使用した日のうちに外すほうが安心です。
ただし、袖は歩行や腕の動きで負荷がかかる部分です。
テープだけでは途中で外れる可能性があるため、式典など長時間の着用では仮縫いのほうが安定します。
レンタル品や家族から借りた長襦袢には自己判断で貼らず、持ち主や店舗へ確認しましょう。
※参考動画:テープで貼ってはいけない半衿3選【着付師 咲季】
長襦袢が短い場合は着物側を安易に折らない
長襦袢の袖丈が着物より長い場合は、脇の下を折り上げることで短くできます。
しかし、襦袢のほうが短く、着物の振りから内側の袖が引き上がって見える場合は、同じ方法では解決できません。
布を折る処置は長さを短くするだけであり、足りない袖丈を伸ばすことはできないためです。
着物の振りを軽く仮留めして内側が見えにくいよう整える方法もありますが、着物側へ針を通すため、生地を傷める危険があります。
特に訪問着や色無地などのフォーマル着物、正絹の薄い生地、借り物には安易に行わないほうが良いです。
着物の振りを強く閉じると、腕を動かした際に袖が引っ張られ、着姿が不自然になります。
仮留めする場合でも、一か所を軽く留める程度にし、腕を前後へ動かして支障がないか確認しましょう。
外側から糸が見えたり、袖の丸みが崩れたりする場合は、その方法を中止します。
長襦袢の袖丈が不足している組み合わせを繰り返し着るなら、応急処置を続けるより、替え袖や袖丈直しを検討したほうが安心です。
一度だけの着用であっても、大切な着物へ針を入れることに不安がある場合は、着付け師や専門店へ相談してください。
応急処置で済む場合とお直しが必要な場合

長襦袢が袖口や振りから見えても、すべて仕立て直しが必要になるわけではありません。
着物を着る頻度、寸法差の大きさ、着用する場面によって、仮留めで十分なケースと専門店へ相談したほうがよいケースに分かれます。
一度だけ着る着物で、見える部分がわずかであれば、タックや仮縫いで対応できます。
一方、同じ組み合わせで毎回飛び出す場合や、袖を大きく折らなければ収まらない状態では、応急処置を続けるほど袖の形が崩れやすくなります。
訪問着や色無地を式典で着るときは、当日に慌てないよう早めに試着しておくことも重要です。
ここからは、仮留めで対応できる場合、本格的なお直しを検討する目安、複数の着物へ長襦袢を合わせる方法に分けて解説します。
小さな寸法差や一度だけの着用なら仮留めで対応する
着物と長襦袢の差がわずかで、袖口や振りから少し見える程度なら、タックや仮縫いによる一時的な調整が向いています。
お下がりの着物を一度着る場合や、購入したリサイクル着物を試してみたいときに、すぐ仕立て直す必要はありません。
袖口から長襦袢が出る場合は、肩幅と袖幅のどちらが長いかを確認します。
肩幅に差があれば肩山付近を軽く縫い、袖幅が余るなら袖側を小さな安全ピンで留める方法があります。
振りから見えるときは、長襦袢の袖丈が長ければ脇の下付近を折り上げて整えましょう。
仮留めした後は、鏡の前で静止した状態だけを見て終わらせないことが大切です。
腕を上げる、前へ伸ばす、バッグを持つなど、外出中に近い動きをして確認してください。
動いたときに布が引きつれる場合は、つまむ量が多すぎます。振りから再び出るなら、留める位置が原因に合っていません。
また、仮留めは着用のたびに状態を確認します。安全ピンを付けたまま長期間保管すると、金具の跡やさびが生地に付くおそれがあります。
着用後は外し、長襦袢を広げて傷みがないか確かめましょう。
毎回出る場合は裄直しや袖丈直しを検討する
同じ着物と長襦袢を組み合わせるたびに袖口や振りから出るなら、寸法そのものが合っていない状態です。
毎回タックを取り直すより、裄直しや袖丈直しを行ったほうが着姿は安定します。
袖口から見える場合は、最初に肩幅と袖幅のどちらに差があるかを確認します。
裄全体が長いからといって、肩と袖を同じ量だけ短くすればよいとは限りません。
肩幅だけが余っている状態で袖幅まで詰めると、手首の位置が内側へ入り、袖が短く見えます。
専門店へ相談するときも、「裄が合わない」だけでなく、「肩の縫い目が外側へ出る」「袖口側だけ長い」と具体的に伝えると調整箇所が明確になります。
長襦袢の袖丈が着物より大幅に長い場合も、折り上げだけでは厚みが出ます。
袖の途中が膨らんだり、振りの落ち方が不自然になったりするなら、袖丈直しを検討しましょう。
反対に、長襦袢が短い場合は、単純な仮縫いで長さを足せません。
袖を作り直す、別の襦袢を用意する、替え袖を使うといった方法が必要です。
特に、訪問着や色無地などを入学式、卒業式、結婚式で着る場合は、着用日の直前ではなく余裕を持って相談しましょう。
大切な場面では、袖口や振りを何度も気にするより、寸法を整えておくほうが落ち着いて過ごせます。
複数の着物に合わせるなら替え袖も選択肢にする
袖丈や裄が異なる着物を複数持っている場合、一枚の長襦袢をすべてに完全に合わせるのは困難です。
ある着物にはきれいに収まっても、別の一枚では袖口から出たり、振りの位置が合わなかったりします。
そのたびに縫い直すと手間がかかり、生地への負担も増えてしまいます。
まず、手持ちの着物を袖丈が近いもの同士で分けてください。
寸法が近い着物なら、同じ長襦袢を共用しやすくなります。
訪問着や色無地などのフォーマル用、小紋や紬などの普段着用に分けておく方法も管理しやすいです。
袖丈の異なる着物が多い場合は、取り外しできる替え袖を付けた、うそつき襦袢も選択肢になります。
着物ごとに合う袖へ交換できるため、長襦袢を何枚も仕立てる必要がありません。
ただし、替え袖でも袖丈だけでなく、袖幅や取り付け位置が合っているかを確認してください。
今後、長襦袢を新しく購入または仕立てる際は、着物の裄丈と袖丈だけを見るのではなく、肩幅と袖幅も控えておきましょう。
背中心から肩、肩から袖口、袖山から袖下をそれぞれ比べれば、どの着物と共用できるか判断しやすくなります。
まとめ
長襦袢が見えたときは、どこから出ているのかを最初に確認しましょう。
袖口なら裄、振りなら袖丈を比べることで、調整する場所が分かります。
わずかな差であれば、タックや仮縫いで整えられます。
毎回同じ部分から出る場合や、折り込みが大きくなるときは、お直しを検討したほうが安心です。
急いでいるときに安全ピンを使う場合も、着物ではなく長襦袢側を留め、着用後は早めに外してください。
大切なのは、袖全体を無理に短くするのではなく、原因に合った部分だけを調整することです。
着物と長襦袢を着る前に一度重ねておけば、外出当日に慌てず、すっきりとした袖姿に仕上げられます。
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
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