和装で美しく見られる立ち方・所作の練習方法 ― 自宅でできるコツと実践ステップ

「着物を着ると、立っているだけなのになんだか疲れる」「写真を見たら、思っていたより姿勢が悪くてがっかり」――そんなふうに感じたことはありませんか?

お子さんの行事や記念撮影、特別なお出かけで着物を着る機会が増えてきた中、「着姿そのものは整ってきたのに、所作や立ち方に自信が持てない」と感じている方は少なくありません。

とくに写真に写る姿勢や手の位置は、自分では気づきにくいポイントです。

この記事では、次のような疑問や悩みにお応えします。

  • 着物姿にふさわしい立ち方や手の位置って、どこを意識すればいい?
  • どうして立っているだけで腰や肩が疲れるの?
  • 所作を練習するには、どんな方法が効果的?

答えは、自宅でもできるちょっとした姿勢の練習や、所作のポイントを押さえることにあります。

「写真に写る自分がもっと好きになる」ような立ち方や動き方、自宅練習方法を段階的に丁寧に解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

Contents

なぜ「立ち方・所作」が着物姿で重要なのか

着物を着ると「それだけで華やかになる」と思われがちですが、実際は立ち方や動き方ひとつで印象が大きく変わります。

どれほど高価で美しい着物を着ていても、姿勢が崩れていたり、所作が雑であったりすると、全体の印象が台無しになってしまいます。

着物は「布をまとう」衣服であるため、洋服と異なり、体のラインを補整しながら整える前提で成り立っています。

そのため、立ち姿のバランスや体の動かし方が、よりダイレクトに見た目に反映されます。

着付けが上達してくると、次に気になるのが「姿勢の悪さ」や「写真写り」ではないでしょうか。

また、動きや姿勢に違和感があると、肩や腰に負担がかかり、結果として疲労感にもつながります。

美しく立ち、無理のない所作を身につけることは、見た目だけでなく、身体的な負担軽減にも直結するのです。

和装は“平面的”だからこそ姿勢と所作が映える

洋服は立体的な裁断で体にフィットする作りですが、着物は直線的な反物を畳んで着る、いわば「平面の衣服」です。

だからこそ、着る人の姿勢や立ち居振る舞いが、着姿全体の印象を左右します。

たとえば、背筋が丸まっていると、帯が下がって見えたり、襟元が崩れて見えたりします。

加えて、足を大きく開いて立ったり、片足に体重をかけたりすると、着物の裾が偏ってしまい、全体のバランスが崩れます。

加藤咲季さんの動画【着物での綺麗じゃない立ち方】でも解説sれいるように、ガニ股や片足重心は見た目に不安定さを与え、印象がぐっと野暮ったくなる要因になります。

ほんの少しの意識で、着物姿は大きく洗練されるのです 。

写真映えや疲れにくさにもつながる立ち居振る舞いのメリット

七五三や入学式、卒業式など、着物を着る機会の多くは、記念写真を残す場面でもあります。

自分では気づきにくい「手の位置」「足の角度」「顔の向き」などが、写真を見返したときに「なんだか不格好…」と感じる原因になってしまいます。

また、所作が整っていないと、無駄に力が入り、肩こりや腰痛の原因になることも。

逆に、正しい姿勢で立つことを覚えると、着物を着ていても疲れにくくなり、お出かけや撮影がもっと楽しくなります。

姿勢と所作を意識することは、ただのマナーや美しさのためではなく、「自分自身が着物を心から楽しむ」ための第一歩でもあるのです。

基本の立ち方・立ち姿 — 自宅でまず習得すべきポイント

着物姿の印象を大きく左右するのが、立っているときの姿勢です。

着物を着ると身動きが制限されがちで、ついバランスを崩したり、無意識のうちに力みがちになります。

しかし、立ち方を見直すだけで、全体の着姿が一気に整い、写真映えも格段にアップします。

立ち方の基本は、体の軸をまっすぐにし、重心を均等に保つこと。ここでは、体の上から順に、意識するべきポイントを整理していきます。

背筋・頭の位置・顔の向き — 「糸で吊られているような」姿勢

まずは上半身の意識から始めましょう。頭のてっぺんから糸で吊られているようなイメージで、首をすっと伸ばします。

これにより背筋が自然と伸び、猫背を防ぐことができます。

肩の力は抜きつつも、内巻きに入らないよう注意が必要です。

肩が前に出ると襟元が浮いてしまい、着物のラインが崩れてしまいます。

咲季さんの動画【着物での綺麗じゃない立ち方】では、「肩甲骨を寄せて後ろに落とす」「胸を襟にピタッとつける」感覚が、首を長く見せ、着姿をすっきり見せるポイントとして紹介されています 。

顔は真正面を向くよりも、やや顎を引き、視線は目の高さでまっすぐ前を見つめるようにすると、自然な表情と姿勢が保てます。

足の位置・重心・つま先の向き — 内股気味+つま先ハの字で安定感

足元の立ち方にも工夫が必要です。

着物では一般的に「やや内股」で立つと美しく見えます。

咲季さんは、「かかとにこぶし一個分の間隔を空けて、つま先はややハの字」が理想的と語っています。

この足の形にすることで、着物の裾が整いやすく、歩いたときにも裾が開きにくくなります。

また、両足に均等に重心をかけることで、片足重心になって腰や背中に負担がかかるのを防げます。

片足重心やガニ股になると、横から見たときに足が見えすぎたり、お腹が出て見えたりと、全体のバランスが崩れてしまうことにもつながります。

日頃から鏡の前で足元の形をチェックする習慣をつけると良いでしょう。

手の置き方と腕の自然な位置 — 写真写りを意識した前で重ねる手の位置

立っているとき、意外と気になるのが手の置き方です。

手がぶらぶらしていたり、左右の高さが違っていたりすると、落ち着きのない印象を与えてしまいます。

基本は、両手の指先を自然に揃え、おへその下あたりで軽く重ねる形が美しいとされています。

バッグを持っていないときは、右手の上に左手を添えるようにすると、写真に写ったときにも品よく見えます。

バッグなどの小物を持っている場合は、片方の手で持ち、もう片方は自然に体の横に下ろすだけで問題ありません。

いずれの場合も、肘が外に張りすぎないように気をつけると、よりコンパクトで上品なシルエットになります。

動き方(歩く/立ち直る/座るなど)を美しくするコツ

着物を着たときの所作は、静止しているときだけでなく、動いている瞬間にも美しさが求められます。

歩く、立ち上がる、座る、階段を上がる、車に乗る――日常的な動作のひとつひとつが、着物にとっては崩れやすい場面でもあるのです。

洋服と違って、着物は「引きずらない」「崩さない」ことが重要なため、丁寧で落ち着いた動きが求められます。

ここでは、シーン別に動作のコツを解説していきます。

歩き方 — 小股・内股・裾を乱さない歩幅と足運び

着物を着て歩くときは、歩幅が大きすぎると裾が広がって乱れてしまいます。

目安としては、足幅はこぶし1個分ほどに保ち、やや内股で歩くと安定します。

歩幅は自然と狭くなりますが、それを補うために背筋を伸ばし、すっと前に進むような意識を持つと、エレガントな印象になります。

上半身を揺らさず、足元だけを滑らかに動かすような感覚で歩きましょう。

また、足を引きずったり、草履の音をパタパタ立てないことも大切です。

草履の裏を床にすべらせるようにして、静かに一歩ずつ歩くと、足音も軽やかで美しくなります。

座り方・立ち上がり — 椅子・畳、それぞれの所作

着物で椅子に座るときは、まず裾が広がらないように注意が必要です。

腰を下ろす前に、両手で軽く着物の裾(上前)を押さえておくことで、はだけを防げます。

座った後は背筋を伸ばし、両膝を閉じて、足は斜めに揃えておくと、女性らしい所作になります。

立ち上がるときも同様に、裾が崩れないように片手で押さえながら、もう一方の手を椅子に添えてゆっくりと動きます。

畳や床での正座では、咲季さんの動画【正座の仕方】の中で紹介されているように、「上前をしっかり押さえてから座る」「右手で膝の下に生地を入れ込む」といった工夫が有効です。

こうすることで着崩れを防ぎ、膝のラインがきれいに整います 。

階段・段差・車の乗り降り — 安全さと所作の両立

階段を上がるときは、裾を踏まないように注意が必要です。

片手で上前の裾を軽く持ち上げ、もう片手は手すりを持つと、安定感が増し安全に動けます。

下りるときも同様に、裾が足に引っかからないよう、少し持ち上げながら一歩ずつゆっくり進みましょう。

急いで動くと、足元が乱れるだけでなく転倒の危険もあるため、常に「ゆっくり・丁寧に」を心がけてください。

車に乗るときは、先にお尻からシートに座り、そのあとで足を揃えて入れるようにすると、裾の乱れを最小限に抑えられます。

このときも、手で軽く上前を押さえる習慣をつけると安心です。

自宅でできる「所作トレーニング方法」

着物姿の立ち居振る舞いを美しく保つには、日常の中での練習が欠かせません。

とはいえ、着付け教室に通ったり、誰かに見てもらいながら所作を直す機会は限られているもの。

そこで役立つのが、自宅でひとりでも取り組める所作トレーニングです。

大がかりな道具は不要。鏡やスマホなど、身近なものを活用して少しずつ改善していくことができます。

ここでは、忙しい中でも取り入れやすい練習方法を紹介します。

鏡を使った立ち姿チェックと“糸吊り”練習

まずは全身鏡の前に立ち、自分の姿勢を客観的に観察することから始めましょう。

足の開き方、重心の位置、手の位置、肩の角度など、一つひとつ確認していくと、写真で気になったポイントが明確になります。

立ち方の基本は「頭のてっぺんから糸で吊られているイメージ」。

この状態を鏡の前で意識して作ることで、首がすっと伸び、肩が下がり、背筋が整います。

咲季さんの動画【着物での綺麗じゃない立ち方】では、肩を一度後ろに回してストンと落とす動きを紹介していますが、これも鏡の前で数回行うことで、自然な姿勢が身につきやすくなります 。

ゆっくり歩く・歩幅を変える・裾を押さえる練習

動作の練習は「ゆっくり丁寧に」を合言葉に。

部屋の中を数歩ずつ歩くだけでも、歩幅、足の運び、体の揺れなどを見直すきっかけになります。

特に意識したいのは、足幅をこぶし1個分に保ち、やや内股で歩くこと。

足を前に出すというより、すべらせるように運ぶと、草履での歩き方に近づきます。

手で軽く裾を押さえる動作も加えると、実践的な練習になります。

鏡がない場合は、窓やガラスに映る姿でも十分です。慣れてきたら、動きながら手の位置を保つ練習にも挑戦してみましょう。

椅子や階段の昇降を使った動きの反復練習

座り方・立ち上がり方の練習は、日常的に使っている椅子で手軽に行えます。

座る前に上前を軽く押さえる動作から始め、背筋を伸ばしたまま静かに腰を下ろすようにします。

立ち上がるときも、前かがみにならず、ゆっくりと真上に立ち上がるように意識すると、自然な流れになります。

これを繰り返すことで、着崩れを防ぐ体の動きが身につきます。

もし階段があれば、裾を軽く持ち上げて一段ずつ昇降する練習も効果的です。

手すりがあれば活用し、安全性にも配慮しながら行いましょう。

スマホやカメラで「写真映えチェック」 — 手の位置・角度を確認

最後におすすめしたいのが、スマホを使ったセルフチェックです。

動画撮影や写真撮影を通じて、自分の立ち姿や所作を客観的に見直すことができます。

特に写真では、正面・斜め・横などさまざまな角度から撮ってみると、手の位置や姿勢のズレが見えてきます。

どの角度で写っても自然に見える立ち方や、姿勢の癖を知ることで、改善点が明確になります。

手の重ね方や顔の向きも、写真ならではの発見があります。

少しでも「いつもよりきれいに見える」と感じられたら、それが正解のポジションといえるでしょう。

よくある悩みとその対策

着物を着て立っているだけなのに疲れる、写真に写る自分がなんだか冴えない――そんな悩みを抱える人は少なくありません。

姿勢や所作は、自分では見えない部分だからこそ、不安や違和感が大きくなりやすいのです。

ここでは、読者の皆さんから特によく聞かれる3つの悩みに対して、具体的な改善ポイントと対処法を紹介します。

腰や肩が疲れやすい/痛くなる — 姿勢の崩れと改善法

着物姿で立っているときに感じる「疲れやすさ」や「痛み」は、姿勢の歪みや重心の偏りが原因になっていることが多くあります。

たとえば、無意識に片足重心になっていたり、猫背で肩が前に巻き込まれていると、筋肉に余計な負荷がかかってしまいます。

動画【着物での綺麗じゃない立ち方】では、重心を両足に均等に乗せること、肩甲骨を寄せて肩をストンと落とすことの重要性が語られています。

背筋を伸ばし、自然に胸を開くことで、身体への負担を減らしつつ、着物のラインも美しく整えられます 。

長時間の立ち姿を維持するには、こまめに体をゆるめる工夫も必要です。

家でできる肩回しやストレッチを取り入れながら、姿勢を保つ筋肉を無理なく使えるようにしておきましょう。

「なんとなく野暮ったく写る」 — 手の位置・足の角度・重心のズレを見直す

写真を見返したとき、「なんとなく冴えない」「もっさりして見える」と感じることはありませんか?

この原因の多くは、手の位置や足の角度、重心のズレにあります。

たとえば、足が大きく開いていたり、片方の手が腰に乗っていたりすると、アンバランスな印象になりやすくなります。

手はおへその下で揃える、足は内股気味でつま先をハの字に開く、そして重心は両足に均等に。

これだけで、着物の直線的なシルエットが美しく保たれ、写真映えも格段に良くなります。

スマホで自撮りして確認したり、鏡の前でシミュレーションしたりして、自分にとってしっくりくるポーズを見つけておくと、いざというときの安心感にもつながります。

着崩れ・裾の乱れが気になる — 所作中の裾さばきのポイント

動くたびに裾が乱れたり、帯の位置がずれてきたりする場合、所作の一つひとつに少し気を配るだけで解消できることがあります。

たとえば、座るときには上前を手で軽く押さえる、歩くときは裾が広がらないように歩幅を小さめにする、階段を昇降する際は裾を少し持ち上げる――

こうした基本的な動作を丁寧に行うことが、着崩れ防止につながります。

また、肩を回すなどの大きな動きは、着物がずれやすくなる原因になるため注意が必要です。

着物を着る前に肩回しのストレッチを済ませておくことで、着用中に無理な動きをしなくても済むようになります。

所作の中で「どのタイミングで裾を押さえるか」「どの動作が着崩れにつながりやすいか」を意識しながら過ごすことで、着物姿の安定感は格段に高まります。

まとめ

着物を着るだけでなく、立ち方や所作まで美しく整っている姿には、誰もが目を引かれるものです。

それは特別な技術や厳しい訓練が必要なわけではなく、日々のちょっとした意識と自宅での繰り返しによって、誰でも身につけられる美しさです。

この記事では、着物姿での基本の立ち方や歩き方、椅子や階段での所作、自宅でできる簡単なトレーニング方法までを紹介してきました。

中でも、鏡を使った姿勢のチェックや、スマホでのセルフ撮影は、忙しい毎日の中でも続けやすく、効果が実感しやすい方法です。

そしてなにより、自分自身が「着物を着ていて心地よい」「写真に写る自分を好きになれた」と思えるようになることこそが、所作を磨く最大のモチベーションになります。

今日から始められる練習を少しずつ積み重ねて、「きもの美人の立ち姿」をぜひ手に入れてみましょう。

あなたの着物姿は、所作ひとつでさらに魅力的になりますよ。

加藤咲季
監修:加藤咲季
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。

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