「長時間の着物って、やっぱり崩れるし疲れるのでは?」
「移動や座ったり立ったりが多い日、どうしたら崩れずにいられるの?」
「帯が苦しい、裾がずれる、写真で見ると後ろ姿が悲惨…なんとかならない?」
そんなふうに感じていませんか?
着物を着る日は、七五三や入卒、結婚式、観劇、会食など、長時間にわたって動き・座る機会が多くなりがちです。
しかも写真に残ることも多く、「崩れない・苦しくない・疲れない」の三拍子が揃った着姿をキープしたいと願う方は少なくありません。
この記事では、以下の3点に注目して、当日を通して快適に美しく着物を着るためのポイントを解説します。
- 着崩れしないための補正・下着・小物の選び方
- 座る・歩く・移動するときの具体的な所作と注意点
- 崩れたときの応急処置と長時間でも疲れにくい工夫
さらに、「目立たないのに効く道具の使い方」や「所作のちょっとした違いが崩れを防ぐ理由」など、初心者にもわかりやすくご紹介していきます。
安心して一日を過ごせる着姿づくりを、今ここから始めてみませんか?
着物を一日中キレイに保つための“土台作り”

長時間着物を着る日の着崩れや疲れの原因は、多くの場合「着付けの土台作り」に潜んでいます。
どれだけ帯や襟を丁寧に整えても、補正や下着の選び方が不適切であれば、時間の経過とともに崩れは必ず現れます。
特に座ったり動いたりする時間が多い場面では、腰紐のズレや帯の緩み、裾の広がりなどが生じやすくなります。
ここでは、長時間でも快適で美しい着姿を保つための「着付けの土台づくり」に焦点を当てて、具体的なポイントを見ていきましょう。
補正と下着の選び方:体型・長時間対策まで
着崩れの大きな原因の一つが、体型に合わない補正です。
特にくびれが強い体型の場合、補正を入れずに着付けると帯が後ろに下がり、前にズレてしまうため、おはしょりや帯の位置が崩れやすくなります。
加藤咲季さんの動画でも紹介しているように、タオルや手拭いを背中のくぼみに差し込むだけで、帯のズレを防げる「簡易補正」になります(※1)。
また、肌着や下着の素材選びも長時間快適に過ごす鍵です。例えば、夏場であればユニクロのエアリズムのような通気性・吸汗性に優れた素材を使うのが効果的。
ただし、キャミソール型は脇が開きすぎるため、袖付きのインナーを選びましょう(※2)。
初心者には、上下セパレート型の肌着と裾よけの組み合わせがおすすめです。
ワンピース型に比べて動きやすく、補正のバランスも取りやすくなります。肌着選びを見直すだけで、崩れにくさも快適さも大きく変わります。
※1参考動画:背中の紐が見えてしまうときの対処法
※2参考動画:肌着の種類
腰紐・伊達締め・帯板の正しい位置と締め方
補正が整っても、腰紐や伊達締めの位置と締め加減が不適切だと、動作のたびに着崩れが起きます。
咲季さんの動画では、腰紐は「やや下目に・しっかりと締める」ことが大切だと説明しています。
特に胸下の紐が緩いと、帯枕が沈み、帯の上線が下がってきてしまいます。
伊達締めは、襦袢の上から確実に安定させるように巻くこと。
帯板は帯の中にしっかり収め、中央を基準に左右に広げることで、前幅が崩れにくくなります。
長時間着用時には、帯板に加えて「お太鼓の中に手拭いを仕込む」など、咲季さん自身も実践している小技も有効です(※)。
これらの位置や締め方の丁寧さが、崩れにくく疲れにくい着姿を生み出します。
※参考動画:着物でのお出かけに必要なものとは?
襟元・おはしょりを整えるためのチェックポイント
襟元が詰まっていたり、おはしょりがガタついていると、着姿全体が緩んで見えます。
長時間でも整った襟元を保つには、「襦袢の襟と着物の襟の高さをあえてずらす」などの工夫がポイントです。
このずらしが、着物の裄(ゆき)を長く見せる効果もあり、全体のバランスが整って見えます(※)。
おはしょりは、脇の処理をしっかり整えることが重要です。脇に余分な布が出ていると、座ったときや動いたときに崩れの原因になります。
動画でも「ピンポイントで脇を内側に処理する」方法が紹介されており、着姿の安定性に大きく貢献します。
※参考動画:着方だけで裄を長くする方法
移動・座席・立ち姿…“所作&動作”で着崩れを防ぐ

いくら丁寧に着付けても、移動・座る・立つといった日常動作の中で着崩れは起きてしまいます。
特に式典や観劇、会食などでは椅子の使用頻度が高く、階段や乗り物での移動も避けられません。
こうした「よくある動作」に対して、着物に適した所作を身につけることで、着姿をキープしながら一日を過ごすことが可能になります。
着付けの完成度だけでなく、「動き方の質」こそが着崩れ防止のカギを握っているのです。
歩き方・階段・車の乗り降りで気をつける動作
着物姿での歩行では、歩幅をやや狭く保ち、すり足気味で歩くことが基本です。
大きく足を出してしまうと裾が広がり、裾よけが見えてしまったり、おはしょりが動いてズレる原因になります。
階段では、裾を軽くつまみ、やや斜めに足を置くように意識すると上品な印象が保てます。
また、車の乗り降りでは、「お尻から座る」のではなく「斜めに腰掛ける」ことで帯を潰さず、襟元も乱れにくくなります。
特に帯結びが背中にある女性は、深く座りすぎると帯枕が潰れて崩れる原因になります。
加藤咲季さんの動画でも紹介されているように、帯が背もたれに直接当たらないように「浅く腰をかける」意識が重要です(※)。
静電気対策も歩行時には重要です。
特にポリエステル素材の着物では摩擦が起きやすく、裾が足にまとわりついて歩きづらくなることがあります。
こうしたときは、外出前に静電気防止スプレーを軽くひと吹きしておくと快適に動けます.
※参考動画:着物でのお出かけに必要なものとは?
椅子・集会・会食時の座り方・立ち上がり方
着物姿で座る際に最も崩れやすいのが「帯の沈み」と「裾の開き」です。
咲季さんの動画では、座る前に「上前を軽く押さえる」「脇の布を膝の下に滑り込ませる」といった動作を加えることで、崩れを防ぎ、正座でも美しいシルエットが保てると解説しています(※)。
特に長時間座る会場では、上半身の姿勢が大切です。背もたれにはもたれかからず、肩甲骨を軽く引くことで背筋が自然に伸び、襟元も安定します。
肩を内側にすぼめると猫背になり、襟が浮きやすくなるため、座ったときも「肩を落とし、胸を開く」意識を忘れずに。
立ち上がる際も、裾を押さえてから前傾にならずに起き上がることで、裾の乱れや帯のズレを防げます。
※参考動画:正座の仕方
移動中のバッグ・肩掛け・荷物の持ち方で帯・裾を守る
肩掛けバッグは帯に大きな負荷をかけ、襟元やおはしょりを引っ張る原因になります。
咲季さん自身も、パソコンなど重い荷物を持つときは「トートバッグを振袖の中に通して目立たなく持つ」工夫をしていると語っています。
ただし、この方法は着崩れのリスクが高いため、初心者にはあまり推奨されません。
理想は、手持ちまたは肘掛けスタイルのハンドバッグです。両手がふさがらないよう、最小限の荷物にまとめておくのが着物での外出の鉄則。
バッグを選ぶときは、「帯に当たらない高さ」「肩からずり落ちない持ち方」が可能なものを意識すると、帯崩れのリスクを大きく減らせます。
長時間安心の“道具・応急処置”活用術

どれだけ丁寧に準備しても、着物を着たまま長時間を過ごすと、少しずつズレや緩みが生じてきます。
そんなとき、最初から用意しておくと安心な「応急処置の道具」や、着崩れを未然に防ぐ「小物の工夫」が大きな支えになります。
長時間でも美しい着姿をキープするためには、「道具を使いこなす力」と「ちょっとした直し方の知識」の両方が必要です。
着崩れ防止に役立つ小物一覧:コーリンベルト・帯止め・クリップなど
長時間の着用において、着崩れを最小限に抑えるための必須アイテムがいくつかあります。
特にコーリンベルトは、襦袢や着物の襟元を安定させるために非常に効果的です。
胸元の左右の襟を内側から軽く引っ張って固定することで、襟が開いてくるのを防ぎます。
帯板は前帯を滑らかに保ち、帯のゆるみを抑える役割を果たします。
加えて、帯枕が沈んでしまうのを防ぐには、タオルや手拭いを帯の中に仕込むのもひとつの工夫です。
咲季さんも、外出時は「帯の中に手拭いを入れておき、トイレなどで手早く使えるようにしている」と紹介しています(※)。
また、補助クリップはおはしょりや上前を一時的に固定したいときに便利です。
見えない場所に忍ばせておくだけで、座る・立つといった場面でも着姿の安定感が増します。
※参考動画:着物でのお出かけに必要なものとは?
外出先でできる応急処置:襟ゆるみ・帯下がり・裾の乱れ
急に襟元が緩んだり、帯が下がってきたりしたとき、慌てず対応できるような応急処置の知識があれば安心です。
たとえば、襟元が開いてしまった場合は、バッグに忍ばせておいたクリップで内側から一時的に留め、化粧室などで軽く締め直すのが有効です。
帯が下がって背中の紐が見えてしまうときは、「帯の下にハンドタオルを差し込んで土台をつくる」ことで応急的に持ち上げることができます。
この方法は咲季さんの動画でも紹介されており、特にくびれのある体型では有効な対処法です(※)。
裾の乱れには、座る前や立ち上がる際に「上前を押さえる」「裾を手のひらでなぞる」など、基本所作の見直しが効果を発揮します。
事前に少しでも予防を意識して動けば、崩れた際の対処も最小限で済みます。
※参考動画:背中の紐が見えてしまうときの対処法
着物の素材・帯結び・補正の組み合わせで疲れない着姿をつくる
長時間でも疲れにくい着姿のコツは、「素材」と「着方」の相性を意識することです。
たとえば、ポリエステル素材の着物は軽量でシワになりにくく、動きの多い日におすすめです。
ただし、冬場は静電気が起きやすいため、スプレーによる対策が欠かせません。
また、帯結びも「軽めの変わり結び」や「お太鼓系のアレンジ」など、背中に負荷がかかりにくい形にすることで、肩こりや腰の疲労を軽減できます。
補正においても、長時間の使用を想定した柔らかい素材を選び、体への圧迫感を分散させることで、疲れにくさがぐっと変わります。
素材・結び・補正。
これらを自分の動きや体調に合わせて調整することが、快適な一日を過ごす最大の鍵になるのです。
まとめ
着物を長時間着用する日は、ただ「崩れないように着付ける」だけでは不十分です。
補正・道具・素材選びから、動作・所作の工夫まで、すべてが連動してこそ、着姿の美しさと快適さが保たれます。
特に動きやすく、座っても崩れにくい着方を実現するには、まずは補正や肌着を見直し、体型に合った安定した土台をつくること。
そして、腰紐・伊達締めの位置と締め方、所作の質を意識して動くことが重要です。
さらに、万一に備えて簡単な直し方や道具を用意しておくと、一日を通して安心して過ごすことができます。
着物での外出は、特別な日であることが多いからこそ、崩れの不安や苦しさに悩まず、その日その瞬間を楽しめるように整えておきたいもの。
着姿は、心の余裕にもつながります。今回紹介したポイントを参考に、安心と自信をまとった一日をお過ごしください。
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
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