帯締め アクセント シーン別 着物の基礎知識 TPOに応じた着物の選び方
「七五三や入卒の付き添い、着物は用意したけれど…帯締めってどう選べばいいの?」
「派手すぎず、でも写真に残っても浮かない“ちょうどいい”アクセントがほしい」
「お茶席や観劇では“控えめな華やかさ”がマナーって聞いたけれど…どうすれば?」
こんな悩みをお持ちではありませんか?
特別な日の装いにおいて、帯締めは思いのほか重要な役割を担います。
帯や着物と違い、色で“抜け感”や“締まり”を作れる唯一の小物。
それだけに、ちょっとした選び方の違いが印象に大きく影響します。
この記事では、以下の3点についてわかりやすく解説します。
- シーン別にふさわしい帯締めの「格」と選び方
- 同系・反対色の配色バランスで“こなれ感”を出す方法
- 房の向きや素材のマナーで安心感をもたせるポイント
さらに、季節感や立場による選び分けも含めて、初めての着物でも「帯締めでちゃんとして見える」選び方・活かし方を紹介します。
写真に残る場面でも自信をもてる装いに仕上げたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
帯締めをアクセントに活かすための「基本と格」の理解

帯締めは、着物姿を美しく整えるための実用的な小物であると同時に、全体の印象を左右する重要なアクセントです。
帯の中心に一本通る細長い紐のように見えるこのパーツは、ただの飾りではありません。
帯の結び目をしっかりと固定する役目を果たしながら、色や素材、結び方次第で華やかさや品格を演出できます。
特にフォーマルな場では、着物の格や場の雰囲気にふさわしい帯締めを選ぶことで、着姿全体に統一感と信頼感を与えます。
一方で、カジュアルな場面では、遊び心のある色柄や素材の帯締めを取り入れることで、個性や季節感をさりげなくアピールすることもできます。
着物初心者の方にとっては「何を基準に選べばいいの?」と感じやすい帯締めですが、まずはその役割と種類、そして“格”の感覚を知ることから始めると、自信をもって選べるようになります。
それでは次に、帯締めの基本的な種類と、それぞれの“格”の違いについて見ていきましょう。
帯締めが担う役割と選ぶ際の視点
帯締めの主な役割は、帯を固定し、着姿を安定させることにあります。
特にフォーマルな場面では、帯揚げとセットで着姿の完成度を高める重要な要素となります。
しかし機能面だけでなく、コーディネート全体の「締め」としての視覚的効果も大きいのが帯締めの魅力です。
選ぶ際に意識したいのは、着物と帯との調和です。
帯締めは面積としては小さいですが、色や質感、結び方の印象で視線を集めやすく、コーディネート全体の印象を左右します。
たとえば、淡い色味で統一された装いに深みのある色の帯締めを合わせれば、装いが引き締まり、洗練された印象に。
また逆に、明るい色の帯締めをアクセントとして取り入れることで、全体が軽やかに見えます。
加藤咲季さんの動画でも、帯締めは「引き算と足し算」のバランスで選ぶと良いと紹介しています(※)。
帯や着物の色が控えめなら、少し強めの色でアクセントを加える。
逆に柄が多い場合は、あえて帯締めを馴染ませて「引く」ことで全体のまとまりが生まれます。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
帯締めの種類(組紐・丸ぐけ・三分紐など)と格の目安
帯締めにはさまざまな種類があり、素材や組み方、幅によって「格(きちんと度)」が異なります。
代表的な帯締めの種類と、それぞれの使用シーンは以下の通りです。
まず最も一般的なのが「組紐」と呼ばれるタイプ。中でも高麗組(こうらいぐみ)や唐組(からぐみ)は格式が高く、留袖・訪問着・色無地といった礼装に適しています。
糸が細かく密に組まれており、見た目にも重厚感があるため、改まった場にふさわしいとされます。
一方「丸ぐけ」は、丸みのある柔らかい印象の帯締めで、ふっくらとした形状が特徴。
布をくるんで芯を入れて仕立てられており、古典的で優雅な雰囲気が出せます。
こちらも礼装に使われますが、色柄次第ではカジュアルな着物にも合わせやすく、用途が広い帯締めです。
また「三分紐」は帯留めを通す細い帯締めで、基本的にはカジュアル向け。
小紋や紬など、普段着の着物に合わせて季節感のある帯留めと組み合わせるとおしゃれの幅が広がります。
格の目安としては、「太くてしっかり組まれているものほど格が高い」「細くて華奢なものはカジュアル向け」と覚えておくと便利です。
加藤咲季さんも、フォーマルな着物には“重厚感のある組紐や丸ぐけ”を、観劇や街着などには“少し遊びのある細めの帯締め”を取り入れることで、無理なくTPOに合った着こなしができると述べています。
シーン別に選ぶ帯締めの「格・色・配色」ポイント

七五三や入卒式、結婚式など、着物を着る機会にはそれぞれ異なるTPOが存在します。
どのシーンにも共通して求められるのは「場にふさわしい」品格と雰囲気。
帯締めはその空気感を演出する重要なアイテムであり、選び方ひとつで装い全体の印象が大きく変わります。
特に写真に残るようなフォーマルシーンでは、自己流のコーディネートが“浮く”原因になることもあります。
格や素材、配色のバランスを丁寧に考えることで、「着物をよく知っている人」という印象を自然に醸し出すことができます。
ここでは、よくあるシーンを3つに分けて、帯締めの格・色・配色選びのコツをご紹介します。
フォーマル(結婚式・入卒・格式ある行事)にふさわしい帯締め選び
正式な場に着ていく訪問着や色無地には、それにふさわしい格の帯締めが必要です。
主に高麗組や唐組といったしっかりとした組みの帯締め、または丸ぐけのようにふっくらとした厚みのある帯締めが適しています。
これらは「正装感」をしっかりと演出してくれます。
色味については、白・金・銀・パステルなど上品で柔らかなものが基本。
特に慶事(お祝いの場)では、金糸や銀糸が織り込まれた帯締めを使うことで、華やかさと格を両立させることができます。
ただし、金銀が強すぎると悪目立ちしてしまうため、淡い色をベースにしたものを選ぶとバランスが取れます。
結婚式のように格式の高い場では、房(ふさ)の向きにも注意が必要です。
一般的には左右対称に整え、房先を少し外向きにすると見栄えがよく、整った印象になります。
房が乱れていたり、バランスが崩れていると“慣れていない印象”を与えてしまうこともあるため、しっかり整えてから出かけましょう。
準礼~観劇・お茶席など「程よく格を示す」帯締め配色のこつ
観劇やお茶席、ちょっとしたパーティーなど「準フォーマル」にあたる場では、格を出しすぎず、かといってカジュアルすぎない帯締め選びが重要です。
帯と着物の色の調和を保ちつつ、アクセントになる色を取り入れるのがポイントです。
たとえば、淡いグレーやラベンダー、くすみカラーの帯締めは、落ち着いた上品さを保ちつつも、色のセンスをさりげなく見せてくれます。
加藤咲季さんも動画の中で、グレーの帯締めは「フォーマルにも使える万能カラー」として紹介しており、一つ持っておくと着回し力が高いと話しています(※)。
このようなシーンでは「引きすぎず、出すぎず」のバランスが求められるため、帯締めで“色のアクセント”をつける場合は、帯揚げや半襟など他の小物とのバランスを考慮して調整すると良いでしょう。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
母世代・子ども同行など“年齢・立場”から見た帯締めの使い分け
子どもの行事に同行する際や、母親としての立場で着物を着る場合は、自分自身が主役ではないため、控えめな色味と格調ある帯締めを選ぶのが基本です。
あくまでも「付き添い役」としての節度を大切にしながら、落ち着いた中にも品を感じさせる工夫が求められます。
たとえば、入学式や七五三の付き添いには、くすみ系のピンクや薄いベージュなど、柔らかく優しい印象の帯締めが好まれます。
加藤咲季さんの動画でも、ピンクでも“ショッキングピンク”のような強い色は避け、淡い色を選ぶことで年齢や立場に合った装いができるとアドバイスしています(※)。
また、帯締めの素材も、房が控えめで艶が少ないものを選ぶと落ち着いた印象になります。子どもが主役の場では「装いが目立ちすぎないこと」が配慮の一つです。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
配色で差をつける帯締めアクセント術

帯締めは装い全体の“仕上げ”となるパーツでありながら、最も自由に遊べる部分でもあります。
着物や帯と比べて取り替えやすく、色味で個性を出すことができるため、選び方一つで印象をガラリと変えることができます。
一方で、選び方を間違えると「浮いてしまう」「全体がまとまらない」「なんだかダサい」といった印象にもなりやすいため、配色バランスの知識は欠かせません。
ここでは、同系色・反対色(補色)・季節感という3つの視点から、帯締めで“こなれ感”を演出する方法を紹介します。
同系色でまとめるシックな仕上がりのコツ
同系色とは、着物や帯と色の系統を揃えた配色のこと。
たとえば、ピンクの着物にワインレッドの帯締め、ベージュ系の装いにブラウンの帯締めを合わせるといった具合です。
この配色は全体に統一感が生まれ、落ち着いた印象に仕上がるため、フォーマルな場や年齢を重ねた方にも安心して取り入れられます。
加藤咲季さんも、淡いピンクやグレーなどの帯締めを使った「控えめで上品な同系色コーディネート」が紹介しています(※)。
着物・帯・帯締めすべてをベージュ~ピンク系でまとめることで、優しく穏やかな印象を作ることができます。
同系色でまとめる際のポイントは、微妙にトーンをずらすこと。
全く同じ色で揃えると単調になってしまうため、帯締めだけを少し濃く、または少し明るくすることで、引き締め効果とアクセントの両立が可能になります。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
反対色(補色・コントラスト)で印象的に見せる技術
あえて着物や帯と“正反対の色”を帯締めに取り入れることで、ぐっと視線を引き寄せるアクセント効果が生まれます。
これを「補色使い」とも呼び、上級者らしい華やかさやセンスを演出するテクニックとして知られています。
たとえば、淡い水色の着物にワインレッドの帯締め、深い緑の帯にラベンダーや山吹色の帯締めなど、互いを引き立て合う組み合わせが挙げられます。
加藤咲季さんも動画の中で「ビビッドなブルーの帯締めは、年齢を問わずアクセントとして活躍する」と話しており、反対色を取り入れる勇気が装いに立体感をもたらすと語っています(※)。
ただし、反対色を使うときは面積バランスに注意が必要です。
帯締めは細いパーツであるため、あくまで“差し色”として控えめに使い、その他の小物で補色のリピートをしないことが、上品に仕上げるコツです。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
季節感(春夏/秋冬)・素材で帯締めを季節に即して選ぶ
帯締めの選び方には、色だけでなく“季節にふさわしい素材や雰囲気”を意識することも大切です。
特に春夏と秋冬では、色の印象だけでなく素材感によっても季節感が伝わります。
春は桜や菜の花を思わせる淡いピンクや山吹色、ラベンダーなどの優しい色合いが活躍します。
夏は白や水色、薄緑などの清涼感ある色に加え、絽や麻など透け感のある素材の帯締めを取り入れると、見た目にも涼やかさを演出できます。
一方、秋はくすみ系の赤やオリーブ、マスタードなど落ち着いた色味が映え、冬は濃いめの紺・深緑・エンジといった重厚感のある色が季節感を高めてくれます。
素材もやや厚手で艶のあるものにすることで、寒い季節らしい“重ね”の印象を作ることができます。
帯締めは「季節を映す小さなキャンバス」とも言える存在。
加藤咲季さんも、春にはラベンダー、夏には生成りの白など、季節に応じて自然に溶け込む色を使うことで、“わかっている人”らしい着こなしになると解説しています。
帯締めの“見えないマナー”チェックポイント

帯締めは色や素材で印象を作るだけでなく、正しく扱うことで「きちんとした人」という信頼感を醸し出す役割も果たします。
特にフォーマルな場や年長者が集まる場では、細かな部分に配慮があるかどうかが全体の印象に大きく影響します。
見た目は美しくとも、結び方が緩かったり、房が乱れていたりすると「慣れていない印象」や「だらしなさ」を与えてしまいかねません。
ここでは、帯締めを扱ううえで最低限押さえておきたいマナーを、3つの視点から解説します。
房・ふさの向き・結び方で差が出る場面別ルール
帯締めの「房(ふさ)」は、意外と見られている部分です。
左右の長さが揃っていなかったり、向きが乱れていたりするだけで、着姿全体が雑に見えてしまいます。
結び終えたあとは、両方の房の向きを外側へ自然に流すように整えましょう。
房先が帯に絡んだり、中に入ってしまっていたりするのも避けたいポイントです。
加藤咲季さんも、「整えること自体がマナー」と述べており、最後に房を軽く手で撫でて形を整える習慣をすすめています。
また、結び方の形にも場面ごとの適正があります。
フォーマルな場では、真っ直ぐ・しっかりと結ばれた状態が基本です。
ゆるく傾いていると、たとえ格の高い帯締めを使っていても“だらしない印象”になるため注意しましょう。
帯締めの素材・幅・金銀使いが示す格差(礼装 vs 普段)
帯締めには「格」があります。幅が広く、組みが密な帯締めほど格が高く、フォーマル向けとされます。
一方、細く軽い素材や帯留めを通す三分紐などは、カジュアルな装いに適しています。
特に注意したいのが「金銀の入った帯締め」です。
これらは基本的に慶事向けであり、弔事や控えめが求められる場には不向きです。
加藤咲季さんも、金糸入りの帯締めは「使う場を選ぶ」と強調しており、入卒式や祝いの席には華やかに映えるが、お茶席や弔事では避けた方が良いとされています。
また、素材の選び方も印象に影響します。
光沢の強い化繊素材やビーズ装飾のある帯締めは、カジュアルなパーティーや現代的な装いに向いていますが、伝統的な場や格式のある行事では控えるのが無難です。
初めての着物でも安心「帯締め失敗しない選び方・締め方」
着物初心者の方にとっては、「帯締めをどう選び、どう締めるのか」が最初のハードルかもしれません。
基本を押さえることで、失敗なく着姿を整えることができます。
まず選び方としては、着物と帯の格に合わせることが第一です。
訪問着や色無地には組紐や丸ぐけなどのしっかりしたものを、小紋や紬には三分紐や軽やかな素材を。
迷ったときは「中間格」のシンプルな組紐を選ぶと幅広く使えます。
締め方のポイントは、中心をしっかり決めて、帯の中央でまっすぐに結ぶこと。
左右の房を揃えたうえで、軽く手で撫でて形を整えるだけでも、見た目の印象が大きく変わります。
加藤咲季さんも動画内で、初心者の方はまずは「淡い色の帯締め」を数本持つと安心だと述べています(※)。
落ち着いたピンクやグレー、生成りはどんな着物にも合わせやすく、幅広いシーンで失敗がありません。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
まとめ
帯締めは、着物コーディネートの中で最も面積が小さいながら、装い全体の印象を左右する大切なパーツです。
シーンにふさわしい「格」を押さえ、帯や着物との調和を考えた「色」や「配色」を意識することで、たとえ初心者でも“わかっている感”を演出することができます。
フォーマルな場では、金銀や高麗組のような格の高い帯締めで品格を演出し、観劇やお茶席では控えめな華やかさを意識した配色が好印象につながります。
さらに、房の向きや結び方、素材感といった“見えないマナー”も大切な要素。こうした細部にこそ、着物を美しく着こなすための気配りが表れます。
季節や立場、目的に応じた帯締めを選ぶことで、写真に残る大切な日も、安心して自信をもって過ごせる装いが整います。
ぜひ本記事を参考に、ご自身にとって“品よく華やかに映える一本”を見つけてください。
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
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