裾のさばき方と巻き込み注意!動きやすく・写真映えする着物姿を叶える3つのコツ

「歩いていると裾が足に絡まって、転びそうになる…」

「階段や車に乗るとき、裾をうまくさばけずグシャッと折れてしまう…」

 「せっかく綺麗に着たのに、写真を見たら裾が変に巻き込まれて残念…」

こんなふうに、着物を着て「動く」場面で裾に悩んだ経験はありませんか?

着付けまではうまくできても、歩行・階段・トイレ・車の乗降など日常の動作で裾が乱れたり、足元にまとわりついたりするのは、誰しもが通る道です。

この記事では、以下のようなお悩みに答えていきます。

  • 裾のさばき方や巻き込みを防ぐ正しい所作を知りたい
  • 動きやすさと写真映えを両立させる着こなしを知りたい
  • 静電気や荷物の影響で裾が崩れるのを防ぎたい

着物での動作を快適に、美しく見せるためには、「裾の扱い方」にこそ工夫が必要です。

この記事を読めば、長時間の外出や子連れでの移動、階段の上り下りでも安心して過ごせる裾さばきが身につきます。

また、ポリエステル着物やリユース着物、季節による静電気・汗・防寒対策も踏まえて、実用的な解決策も紹介します。

知らずに巻き込んでしまう前に、今すぐチェックしてみてください。

着付け直後にまず整える “裾の準備”ポイント

着物を着終わって鏡の前で「よし、完成!」と思っても、そのまま外出してしまうのは少し早計です。

裾が足に絡んだり、移動中に巻き込まれたりするのは、実はこの「着付け直後」の整え方が原因になっていることが多いのです。

ここで一手間かけることで、出先での不快感や着崩れを大きく減らすことができます。

とくに長時間の外出やお子さんを連れての移動がある場合は、動きやすさと着姿の美しさの両立が重要になります。

着物を“ただ着る”だけでなく、“快適に動ける状態に仕上げる”ことを意識してみましょう。

では、外に出る前に押さえておきたい裾まわりの準備について、2つのポイントをご紹介します。

裾割り・股割りで足まわりを開いておく

加藤咲季さんの動画でもたびたび紹介されている基本所作、「裾割り」または「股割り」は、裾まわりのトラブルを防ぐ第一歩です。

着物の裾は前後で重なり合っていますが、そのままでは布が足元に密着し、歩きにくくなったり、静電気でまとわりついたりしやすくなります。

裾割りとは、着物を着終えたあと、両足を肩幅ほどに開き、軽く膝を曲げて体を沈める動作です。

このとき、足の動きに合わせて自然に裾が割れて広がることで、足まわりに適度なゆとりが生まれ、スムーズな歩行や動作が可能になります。

この動作は「自分の足の動きに合わせて布をなじませる」と捉えるとわかりやすいでしょう。正座や階段移動が多い予定の日は、少し深めに行うのがおすすめです。

なお、静電気が気になる季節は、裾割りの前にスプレーを軽く吹きかけておくと、より滑らかに布が広がります。

参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材

裾線を真っすぐに出して巻き込みを防ぐ

もうひとつ大切なのが、裾線の整え方です。

鏡で正面から見たときに裾が「ハの字」に開いていたり、後ろ裾が浮いていたりしませんか?

それは裾が正しい位置に収まっておらず、歩いたときに巻き込みや引っかかりが起きる原因になります。

裾のラインを整えるときは、まず上前の端を軽く持ち、足の内側に向かって布を押し込むようになじませます。

このとき、腰ひもより下の布がねじれないよう注意してください。

次に下前も同様に整え、左右の裾が床と平行なラインになるように全体を確認しましょう。

さらに、着付けが完了したあと、裾が少しでも「前下がり」になっていれば、歩いたときに足先に布が当たりにくくなります。

咲季さんの動画でも「真横よりも気持ち前下がりのほうが、足が出しやすくて歩きやすい」と解説されています。

この一手間で、移動中に裾が絡まったり、巻き込まれて持ち上がったりするのを防げるため、ぜひ毎回の着付け後に実践してください。

参考動画:正座の仕方

歩行・階段・車移動…「動きながら」の裾さばき術

着物姿で美しくいられるかどうかは、立ち振る舞いに大きく左右されます。

とくに歩行や階段の上り下り、車の乗り降りなど「動作」の中では、裾の扱いひとつで印象ががらりと変わります。

着付け直後に整えても、動くたびに裾が足にまとわりつく、めくれる、巻き込まれて引きつる…。

こうしたトラブルは、所作の工夫で未然に防げます。

ここでは、動作中の裾さばきを快適に、美しく保つためのテクニックを解説します。

歩くときの小股&右手での上前押さえのコツ

加藤咲季さんが動画の中で繰り返し伝えているのは「小股で歩くこと」。

洋服のように大股で歩こうとすると、着物の上前(うわまえ)が大きく動いてしまい、裾が広がったり持ち上がってしまう原因になります。

歩くときは、着物の前面が乱れないように、右手でそっと上前を押さえておくと安心です。

とくに風が強い日や階段の上り下りでは、この「右手で押さえる」所作がとても有効。

手の位置は膝より少し上を目安に、自然に添える程度で構いません。

また、咲季さんは「歩くときの重心移動は足裏全体を使い、すり足ぎみに移動すると音も静かで美しい」とも話しています。

着物姿特有の“すり足”は、足元の布との摩擦を抑え、静電気や裾のめくれ防止にもつながります。

参考動画:着物での綺麗じゃない立ち方

階段・車・トイレなどの動作別、裾を持ち上げ・押さえるポイント

階段を上るときは、両手がふさがっていると裾の扱いが難しくなります。

片手で手すりを持つ場合、空いたほうの手で上前の裾を軽く持ち上げるか、押さえるようにしましょう。

持ち上げすぎると足首が見えてしまうので、膝上程度を目安にします。

車に乗るときは、まず背面側の裾を軽く持ち上げてから座ると、シートで裾を巻き込んで汚すのを防げます。

車のシートは意外と摩擦が大きいため、動作前に「裾を持ち上げる→先にお尻→足を引き入れる」の順で動くのがコツです。

トイレの際は、裾をすべて持ち上げるのではなく、前と後ろの裾を別々に内側に折り込むようにします。

そうすることで、足元で布が重ならず、動きやすくなります。

なお、いずれの場面でも、裾の巻き込みや静電気が気になる場合は、ポリエステル素材の滑りやすさや静電気体質も考慮しましょう。

咲季さんは「冬場のポリエステル着物には静電気防止スプレーを必ず使う」とアドバイスしています。

参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材

素材・季節・荷物ありシーンでも “巻き込みさせない”工夫

裾のさばき方は、着物そのものだけでなく「素材」「季節」「生活スタイル」によっても大きく変わってきます。

特にポリエステル素材の着物やリユース着物は、手軽に着られる反面、静電気や摩擦で裾がまとわりつきやすくなることがあります。

また、小さなお子さんとの外出や長時間移動、車での移動など、動きが多く荷物も多い日には、布の動きが乱れやすく、知らず知らずのうちに裾を巻き込んでしまうケースも。

ここでは、素材・季節・生活シーンに合わせた裾の巻き込み防止策をご紹介します。

静電気・汗・防寒で裾がまとわりつくときの対策

ポリエステル着物は、家庭で洗える・しわになりにくいなど多くのメリットがありますが、冬場の大敵が「静電気」。

着物は巻きスカートのような構造になっているため、布同士がこすれて静電気が発生し、足にぴったり貼りついてしまうことがあります。

この状態で歩くと、足元が突っかかって非常に歩きづらくなるばかりか、裾を思わぬ方向に引っ張ってしまい、シワや着崩れの原因にもなります。

加藤咲季さんは動画内で、「ポリエステル着物を冬に着るときは、必ず静電気防止スプレーを使う」と明言しています。

外出前に裾まわりや足元の長襦袢にスプレーしておくだけで、布の滑りがよくなり、足さばきが格段にスムーズになります。

また、汗による布の張り付きも巻き込みの原因になります。

夏場や暖房の効いた室内では、エアリズムなど吸汗速乾素材の肌着を活用し、汗を布に移さない工夫をしましょう。

咲季さんも「夏はユニクロの半袖タイプの肌着を使っている」と紹介しています。

参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材
参考動画:肌着の種類

荷物・子ども・車移動など「動き多め」のシーンで裾を安定させる小物・着付けポイント

動きの多い日は、裾が不意にめくれたり、巻き込まれてしまうリスクが高くなります。

特に車への乗り降りや、子どもを抱き上げる・しゃがむといった動作では、着物の構造上、布が大きく動いてしまいます。

こうしたシーンでは、「裾を支える力」を補助する小物が活躍します。

おすすめはウエストベルトやコーリンベルト、また補正用のタオルを腰まわりに足す方法です。

腰ひもだけでは支えきれない裾の重みを、もう一段階で抑えることで、裾のずれや巻き込みを予防できます。

加藤さんも「補正や腰まわりの調整で着姿の安定感が変わる」と動画内で解説しており、帯下が落ちてくる・後ろ姿がくずれる原因も、くびれの有無や補正の仕方にあると語っています。

さらに、ポリエステル着物を選ぶ場合には「ややハリ感のある生地」を選ぶのもひとつの手です。

柔らかすぎる素材は体の動きに引っ張られやすく、裾が乱れやすくなる傾向があります。

参考動画:背中の紐が見えてしまうときの対処法

まとめ

着物を美しく、そして快適に着こなすためには、裾のさばき方と巻き込み防止の工夫が欠かせません。

特に歩行や階段の上り下り、車の乗り降りなど“動作をともなうシーン”では、裾が原因のストレスやトラブルが起きやすくなります。

この記事では、着付け直後の裾割りや裾線の整え方に始まり、動作中の右手の使い方、小股での歩き方といった所作の基本。

そして素材や季節、生活スタイルによる巻き込みリスクへの対処法まで、幅広く紹介してきました。

いずれの場面でも共通するのは、「事前の一手間」と「意識的な動き」が、美しい着姿と快適な行動を両立させるということです。

裾が足に絡むたびに立ち止まり、着崩れを直すことに追われてしまっては、せっかくの着物時間が台無しになってしまいます。

この記事で紹介したポイントを実践すれば、自信を持って、どんな動作もスムーズに行えるようになります。

裾の扱いに気を配ることは、着物との距離をぐっと縮める第一歩。

あなたの一日が、より楽しく心地よいものになることを願っています。

加藤咲季
監修:加藤咲季
着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。

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