「袷っていつまで着られるの?」
「5月や10月は袷か単衣か、どっちを選ぶべき?」
そんな疑問をお持ちではありませんか。
入学式や卒業式、七五三や親族の結婚式など、着物を着る場面は人生の節目と重なるものです。
その中でも袷の着用期間や季節感は、初心者から中級者の方にとって特に迷いやすいポイントです。
この記事では、次の3つを中心に分かりやすく解説します。
- 袷の基本的な着用期間と、暦に基づく衣替えルール
- 5月・10月など、境目の季節にどう判断すべきか
- 式典や気候に応じて、袷を無理なく着る工夫や例外対応
本記事では、袷着物の定義から、単衣や薄物との違い、暦と気温の両面を踏まえた判断基準まで詳しく解説します。
さらに、式典での選び方や、暑さを和らげる工夫についても触れ、迷いなく着物を選べるようにガイドします。
動画で解説している内容を交えながら進めますので、読み進めるうちに「自信を持って袷を選べる基準」が身につくはずです。
Contents
袷(あわせ)着物とは?その特性と基本着用期間

袷(あわせ)とは、裏地がついた着物のことを指します。
表地と裏地を縫い合わせることで適度な厚みが生まれ、見た目に重厚感と格調を備えるのが特徴です。
裏地があるため保温性があり、春と秋から冬にかけて広く用いられる仕立てになります。
日常のお出かけから入学式や結婚式といった改まった式典まで、幅広いシーンで活躍するのが袷の魅力です。
着用期間は、古くからの暦に基づけば 10月から翌年の5月まで。
6月と9月は単衣、7月と8月は薄物(絽や紗などの盛夏用)が中心とされてきました。
こうした暦の衣替えは、明治時代の和装の慣習を引き継いだものです。
現代では気候変動により気温差が大きく、必ずしもこの通りに従わなくても問題ありませんが、基本を理解することで「袷をいつ着るべきか」の軸を持てるようになります。
加藤咲季さんの動画でも裏地の有無や素材による特徴を詳しく紹介していますので、あわせて確認すると理解が深まります(※)。
※参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材
袷の構造と裏地の役割
袷の最大の特徴は「裏地があること」です。
表地と同じ幅の裏地を重ね縫いするため、生地に厚みが増し、単衣や薄物に比べてフォーマル度が高まります。
裏地は着物のシルエットを整え、裾や袖の落ち感を美しく保つ役割も果たします。
また、袷は季節感の演出にもつながります。
春秋には裏地の色や素材で柔らかさや軽さを添え、冬には温もりを加えることができます。
特に式典の場では、重厚感があり格を保つ袷がふさわしいとされます。
ただし、裏地があることで通気性は低くなり、気温が高い日に着ると体に熱がこもりやすくなります。
そのため、暦上は5月や10月でも、暑さを感じる日は工夫が必要です。
袷を選ぶときには、TPOと同時に体感温度を意識すると快適に過ごせます。
伝統的な袷の着用期間(暦に基づく)
袷は、暦に沿った衣替えの習慣により 10月から翌年の5月末 まで着るのが基本とされています。
具体的には以下のような区切りです。
- 10月1日〜5月末:袷
- 6月・9月:単衣
- 7月・8月:薄物(絽や紗など)
これは日本の四季に合わせて整理されたもので、明治時代以降に定着しました。
暦の上では一斉に衣替えを行うことで、街全体が季節感を共有していたのです。
しかし現代は冷暖房が普及し、また気温が大きく変動する年も多いため、「暦通りに必ず従わなければならない」というわけではありません。
むしろ暦を基準にしつつ、実際の気候や会場環境に応じて柔軟に対応する姿勢が求められます。
この点については、次の章で単衣や薄物との違い、気温を目安にした判断法を解説していきます。
単衣・薄物との違いと、気温を見ながらの判断基準

袷の着用を考える際には、単衣や薄物との違いを理解しておくことが欠かせません。
裏地がある袷と異なり、単衣や薄物は軽やかで通気性に優れ、暑さが増す季節にふさわしい仕立てです。
暦上の衣替えルールでは明確に区切られていますが、現代の気候では気温の目安を取り入れて選ぶことが現実的です。
暦と気温の両面から整理することで、快適さと季節感を両立できます。
単衣・薄物の特徴と季節別使い分け
単衣は裏地をつけず、表地のみで仕立てられた着物です。
軽く通気性があるため、6月と9月 を中心に着用されます。
見た目は袷と似ていますが、裏地がない分だけ涼しさがあり、体に熱がこもりにくいのが特徴です。
一方、薄物(盛夏物)は絽・紗・麻といった透け感のある素材で作られ、7月と8月 に着るのが一般的です。
夏の強い日差しに映える素材で、視覚的にも涼しさを演出します。
こうした区分は、単に暑さ寒さへの対応というだけでなく、見た目に四季を感じさせる効果があります。
たとえば、9月の残暑に薄物を着続けるのは軽やかでよいものの、式典では単衣に切り替えるほうが格式を保てます。
このように、季節の節目ではTPOと素材感の両立を意識することが大切です。
加藤咲季さんの動画でも素材による違いを詳しく解説していますので、参考にしてみてください(※)。
※参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材
気温・肌感覚から判断する切り替え基準
暦を基本にしつつも、実際にはその日の気温や湿度を考慮することが重要です。
多くの着物愛好者が目安としているのが 22℃前後。
- 22℃を超える日は単衣や薄物が快適
- 20℃を下回る日は袷でも過ごしやすい
この基準を持っておくと、暦と現実の気候のギャップを調整しやすくなります。
また、会場環境も判断材料になります。
たとえば10月初旬でも冷房の効いた式場であれば袷が適しており、逆に5月下旬の蒸し暑い日には単衣にするほうが無理がありません。
さらに、帯や長襦袢を絽や麻素材に変えるなど、小物の工夫で暑さ対策をすることも可能です。
つまり、「暦」「気温」「会場環境」の三点を軸に考えることで、季節感を保ちながら快適に過ごせるのです。
5月/10月は袷 or 単衣?判断に迷う時期の実践ポイント

多くの方が最も悩むのが、衣替え直前直後にあたる 5月と10月 の装いです。
暦の上では5月は袷、10月も袷が基本ですが、実際には真夏のような暑さや初冬のような冷え込みになることも珍しくありません。
この時期は暦に従うだけでは不十分で、気候とTPOを組み合わせて判断する必要があります。
特に式典やフォーマルな場では袷が好まれる一方、体感温度や会場環境を軽視すると快適に過ごせなくなります。
そこで、暦ルールと現代的な対応策をバランスよく押さえることが大切です。
暦ルールとしての衣替え日(6月1日・10月1日等)
日本の伝統的な衣替えは、6月1日に単衣へ、10月1日に袷へと切り替える習慣が基本です。
これは江戸時代から続く慣習で、街全体が一斉に季節を切り替えることで統一感と季節感を演出してきました。
したがって、フォーマルな式典や公的な場では、この暦ルールを優先するのが無難です。
特に入学式・卒業式・結婚式などの写真に残る行事では、伝統的な衣替えを意識した装いのほうが安心感があります。
ただし、暦通りに従った結果、暑さや寒さで体調を崩しては本末転倒です。
暦を基準としながらも、現実の気候に応じて柔軟に調整する姿勢が現代では求められています。
その年の気候傾向と会場環境を読むコツ
5月と10月は、年によって気候が大きく異なります。
たとえば5月上旬に真夏日が訪れることもあれば、10月半ばに冷え込みが厳しくなることもあります。
このようなときは、気温の目安をもとに単衣や袷を選ぶと快適です。
- 25℃以上:単衣または薄物に切り替え
- 20℃前後:袷と単衣どちらでも可(帯・長襦袢の素材で調整)
- 15℃以下:袷が安心
さらに、会場環境も見極めのポイントです。
冷暖房の効いたホテルや式場では暦に従い袷を着ても快適ですが、屋外行事や神社での七五三などでは気温に合わせて単衣にする柔軟さが必要です。
袷を選んでも、長襦袢や帯揚げを絽や麻にして涼感を演出すれば、暑さを和らげつつ格式を守れます。
このように「暦」「気候」「会場環境」の三要素を見極めることで、迷いやすい時期でも自信を持って選べるようになります。
式典・お祝い事で袷を選ぶ理由と例外対応

袷は、改まった場にふさわしい仕立てとして位置づけられています。
入学式・卒業式・七五三・結婚式など、人生の節目となる行事では写真に残ることも多いため、格式を保てる袷を選ぶのが安心です。
暦上の衣替えと多少ずれていても、式典では「格を優先する」ことが一般的な考え方です。
ただし、真夏日や冷え込みが厳しい日などは無理に暦通りにせず、工夫次第で快適さと礼儀を両立させることが可能です。
式典では袷を優先すべき理由
袷は裏地がついているため、見た目に重厚感と落ち着きがあり、フォーマルな場にふさわしいとされています。
特に親族や主役に近い立場での参加時には、袷を着ることで「礼を尽くした装い」と受け止められやすくなります。
また、袷は式典写真にも映える特徴があります。
単衣や薄物は軽やかで涼しげですが、裏地のある袷はきちんと感を強調し、華やかさや厳粛さを演出できます。
そのため、5月や10月に暑さ・寒さがあっても、まずは袷を基本に考えるのが適切です。
もし暑さが気になる場合は、長襦袢を絽にする、帯まわりに麻素材を取り入れるなど、小物の調整で快適さを確保できます。
フォーマル度を下げずに体感温度を調整できるのが、現代的な着こなしの工夫です。
季節外れ・高温期に無理なく袷を使う工夫案
実際には5月下旬や10月上旬に真夏日になることもあります。
そんなときに袷を選ぶと暑さが心配ですが、以下の工夫で快適に過ごせます。
- 長襦袢を夏用(絽・麻素材)にする
- 帯揚げや帯締めを涼感のある色合いに変える
- 下着や補整を吸汗性の高い素材にする
- 会場までの移動時は羽織やショールで体温調整する
逆に、10月下旬や春先に寒さを感じる場合は、ウールの羽織やショールを重ねて調整すると安心です。
袷は式典での第一選択肢ですが、体調を崩さないために「見えない部分で温度調整する工夫」を取り入れることが大切です。
加藤咲季さんの動画でも、素材や小物の違いで着心地や見た目の印象が変わることを詳しく紹介しています(※)。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
袷の見分け方・裏地チェックと持っている着物の扱い方

手持ちの着物が袷なのか単衣なのか、見分け方に迷う方は少なくありません。
特にリサイクルやレンタルを利用する際には、裏地の有無や厚みを確認することが大切です。
袷を正しく見分けられると、季節感を外さずに着物を選べるようになります。
また、気温が高くて袷を着にくい時期には、工夫次第で快適に着られる方法があります。
ここでは見分けのポイントと扱い方を整理しておきましょう。
裏地の有無・厚み・透け感での判断法
袷と単衣の最も大きな違いは「裏地の有無」です。
袷には胴裏や八掛と呼ばれる裏地がついており、袖口や裾をめくると白や色付きの布地が見えます。
反対に単衣は裏地を持たず、表地のみで仕立てられているため、軽く薄手に感じられるのが特徴です。
また、透け感も判断基準になります。
袷はしっかりと厚みがあり、光に透かしても裏側が見えにくいのに対し、単衣や薄物は光を通しやすく、特に薄物は明らかに涼しげな透け感があります。
もし見分けが難しい場合は、着物の裾や袖をめくって裏地を確認するのが確実です。
裏地の有無さえわかれば、袷か単衣かを迷う必要はありません。
袷を着られない暑さの時期のケア・対処法
暦の上では5月や10月も袷の時期に含まれますが、気温が高い日には暑さで着づらいことがあります。
そんなときに快適に過ごすためには、以下の工夫が役立ちます。
- 夏用の長襦袢を合わせる:絽や麻素材の長襦袢に替えることで、風通しを確保できる
- 汗取り用のインナーや麻の補整具を使う:体に熱をため込まない工夫が効果的
- 帯や小物で涼感を演出する:帯揚げや帯締めに淡い色や透け感のある素材を取り入れる
- 移動時は着脱しやすい羽織やショールを活用する
一方、季節外れの寒さにはウールやカシミヤの羽織を重ねれば安心です。
袷は裏地がある分だけ基本的に暖かく、調整の幅も広い仕立てですので、気候に応じて小物を工夫すれば長く快適に活用できます。
加藤咲季さんの動画でも、素材の違いや小物の工夫で快適さを調整する方法を紹介しています(※)。
※参考動画:第五弾「化繊」着物に使われる素材
まとめ
袷の着物は、裏地があることで重厚感と格式を備え、式典や改まった場に安心して選べる仕立てです。
暦の上では10月から翌年5月までが基本の着用期間ですが、現代の気候では暦だけでなく気温や会場環境も判断材料に加えることが求められます。
迷ったときは次の流れで考えるとわかりやすくなります。
- 暦を基準にする(6月・9月は単衣、7月・8月は薄物、10月〜5月は袷)
- 気温を確認する(22℃前後を境に袷と単衣を使い分ける)
- 会場環境を考慮する(冷暖房完備の式場か、屋外かで快適さが変わる)
- TPOを優先する(式典では袷を基本に、小物や素材で快適さを調整)
この4ステップを意識すれば、暦を外さず、かつ無理のない着物選びが可能になります。
袷は一年の大半を支える仕立てだからこそ、基本を押さえつつ柔軟に応用していくことが大切です。
加藤咲季さんの動画【第五弾「化繊」着物に使われる素材】でも、素材や季節感の調整について詳しく解説していますので、あわせて確認すると実践に役立ちます。

着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
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