「おはしょりを多めにしたほうがいいの?少なめにしたほうが着崩れしにくい?」
こんな疑問を持っていませんか。自分で着物を着るとき、特におはしょりの長さは悩みやすいポイントです。
短すぎれば帯から裾が出てしまい、長すぎればもたついて重たい印象になりがち。
着姿全体の美しさや安定感に直結するため、正しい調整方法を知ることが大切です。
特に知りたいのは次の3つではないでしょうか。
- おはしょりを「多め」「少なめ」にするときの基準や目安
- 腰紐や小物を使って長さを調整する方法
- 形が崩れたり膨らんだりするのを防ぐ整え方
この記事では、おはしょりを自在に整える具体的な方法を解説します。
加藤咲季さんの動画で紹介されている実践的な着付けのポイントも交えながら、初心者でも無理なく試せるコツをご紹介。
きちんとした印象を与えつつ、着崩れを防ぎ、動きやすさまで意識した着姿を叶えるための一歩をサポートします。
Contents
おはしょりの理想的な長さとは?「多め・少なめ」を使い分ける基準

おはしょりは着姿を美しく整えるために欠かせない要素です。
帯の下に余った布を折り上げて作る部分で、シルエットの安定や着崩れ防止の役割を果たします。
長さの加減ひとつで印象が変わり、すっきり見えるか、重たく見えるかが決まってきます。
一般的には4〜6センチほどが理想的とされ、振袖の場合は華やかさを出すために少し長めにとります。
しかし、身長や体型、着る場の格式によっても適した分量は異なります。
ここでは「多め」と「少なめ」をどのように使い分けるかを整理していきましょう。
基本ライン:理想は4〜6センチ(振袖はやや長め)
おはしょりの標準的な長さはおよそ4〜6センチです。
帯の下から少し見える程度で、裾のバランスも整いやすく、最も安定感のある仕上がりになります。
特に普段着や小紋、紬などではこの範囲に収めるのが無難です。
振袖のように華やかさを求める場では、5〜7センチほどとり、帯周りに余裕を出すと全体に若々しい印象が生まれます。
逆に短すぎると帯の下から裾が出てしまい、長すぎると帯の下で布がたまり不格好になります。
まずは標準値を基準にして、自分の着物や着用場面に合わせて微調整するとよいでしょう。
多め(長め)にする場合:身長が高い人・カジュアルな場におすすめ
身長が高い方や体格がしっかりしている方は、おはしょりをやや多めに取るとバランスが良くなります。
裾から帯までの距離が広く見えやすいため、余裕を持たせることで縦のラインが整い、安定感のある姿に仕上がります。
また、友人との食事や観劇などカジュアルな場では、少し多めにして柔らかさを出すと動きやすさも増します。
加藤咲季さんも動画【背中の紐が見えてしまうときの対処法】で、体型や場に応じて長さを調整することの大切さを解説しています。
少なめ(短め)にする場合:式典・改まった場でのきちんと感を演出
結婚式やお茶会など格式の高い場では、おはしょりを少なめに整えると引き締まった印象になります。
長さが短いほど帯周りがすっきりと見え、上品で端正な雰囲気に仕上がります。
特に訪問着や留袖では、控えめなおはしょりがふさわしいとされます。
短く整える際には腰紐や伊達締めを丁寧に扱い、布が浮いたり余ったりしないように意識することが重要です。
無駄のないラインを作ることで、動いたときの着崩れも少なくなり、安心して式典に臨めます。
“多め・少なめ”の調整方法|腰紐や小物で自在にコントロール

おはしょりの長さは、着物そのものの丈に左右されるだけではなく、腰紐や伊達締めといった小物の扱い方によって大きく変わります。
特に初心者の方は、紐の位置をわずかに動かすだけで仕上がりが違って見えることに驚くかもしれません。
ここでは、腰紐や補助アイテムを活用して、おはしょりを「多め」「少なめ」に自在に整えるための具体的な方法をご紹介します。
腰紐の位置で調整:高い位置なら短く、低い位置なら長く
最も基本的な調整方法は、腰紐の位置を上下させることです。
腰紐をやや高めに締めれば着物の裾が引き上げられるため、おはしょりは短くなります。
逆に腰骨より少し下に位置させれば布に余裕が生まれ、長めに仕上がります。
注意点は、腰紐を傾けずに水平に結ぶこと。
左右の高さが揃っていないと、おはしょりが片側だけ下がり、着姿が不安定になります。
結んだ後に鏡で正面と横を確認し、水平が保たれているか必ずチェックしましょう。
腰紐は強く締めすぎず、着物がずれない程度の力加減にするのがコツです。
腰紐の種類(太め/ウエストベルト)で調節のコツ
腰紐には細いものと太めのものがあり、太い腰紐やゴム製のウエストベルトは布を面で支えるため、おはしょりの長さを安定させやすい特徴があります。
細い腰紐では布が部分的に食い込み、仕上がりにムラが出ることがありますが、太めの紐を使えば均一に押さえられるので、長めにしてももたつきにくくなります。
また、ウエストベルトタイプは金具で長さを固定できるため、体型に合わせて微調整が容易です。
特に初心者や身幅に余裕がある着物を着るときは、ベルトを活用することでおはしょりの分量をコントロールしやすくなります。
伊達締め・コーリンベルト・帯での微調整・固定方法
腰紐で大まかな長さを決めたら、次は伊達締めやコーリンベルトで形を整えます。
伊達締めを帯の直下にしっかりと締めれば、おはしょりが布ごと押さえられ、長すぎる布の膨らみを抑えることが可能です。
コーリンベルトを使う場合は、左右のバランスをとるように布を挟み、きれいな直線を保ちます。
帯を結ぶ段階でも、おはしょりを軽く引き下げたり押し上げたりすることで微調整ができます。
布が余った場合は内側に小さく畳み込み、帯の中で固定するとすっきり収まります。
小物の重なりを利用して余分な布を隠すことで、短めにも長めにも自在に仕上げることができます。
斜め・膨らみ・着崩れ…よくあるお悩みとその対処法

おはしょりは長さを整えるだけでなく、形を安定させることも大切です。
せっかくきれいに着付けても、時間が経つと布が傾いたり膨らんだりして、着姿の美しさを損なうことがあります。
特に初心者は、紐の締め具合や布の処理に不慣れなため、思わぬところで乱れが出やすいものです。
ここでは、おはしょりに関する代表的なトラブルと、その解決策を具体的にご紹介します。
おはしょりが傾いてしまう時:腰紐の高さを左右で揃える
おはしょりが片方だけ下がってしまう原因の多くは、腰紐の位置にあります。
左右の高さが揃っていないと、引き上げた布が均等に落ちず、見た目に差が出てしまいます。
これを防ぐには、腰紐を結ぶときに正面だけでなく横姿も確認することが重要です。
一度結んだ後でも、手で軽く布を引き整えれば修正できます。
特に背中部分は鏡で確認しにくいので、紐を結ぶ際は「床と平行に」意識して締めると安定した仕上がりになります。
膨らんでしまう時:三角上げやタックで布を処理する
おはしょりが膨らんでしまうのは、布が余りすぎて帯の下にたまっているサインです。
そのままにすると着姿が重たく見え、動いたときにも崩れやすくなります。
余分な布は「三角上げ」と呼ばれる方法で処理するとすっきりします。
これは布を内側に折り込み、三角形を作るように押さえるやり方で、見た目が引き締まります。
また、少しだけ布をつまんで小さなタックを作り、帯の下に隠す方法も有効です。
タックは左右どちらかに寄せて処理すると正面から目立たず、自然なラインを作ることができます。
着崩れを防ぐ固定法:小物の重なりを利用する
おはしょりが動いて緩みやすいときは、小物を上手に使うことで安定感が増します。
たとえば伊達締めを帯の直下でしっかり押さえると、布がずれにくくなります。
さらにコーリンベルトを補助的に使えば、体の動きに合わせても形が乱れにくくなります。
動作中にどうしても着物がずれてしまう場合は、帯を結ぶ前に布を軽く下に引き、シワをならしてから固定することが大切です。
布の張りを均一に整えておくことで、時間が経っても美しいラインを保つことができます。
まとめ
おはしょりは、ただ余った布を折り上げるだけの部分ではなく、着姿全体を整える大切な要素です。
標準は4〜6センチを目安にしつつ、身長や体型、場の雰囲気に応じて「多め」「少なめ」を使い分けることが、美しく安定した装いにつながります。
腰紐の位置や種類を工夫すれば自在に長さを調整でき、さらに伊達締めやコーリンベルトを併用することで崩れにくさも加わります。
傾きや膨らみといったよくあるトラブルも、三角上げやタック処理を取り入れることで簡単に解決できます。
つまり、おはしょりを制することが、着姿を制する第一歩です。
日常のカジュアルな場から格式高い式典まで、自分らしい着物姿を安心して楽しむために、今回ご紹介した調整方法をぜひ実践してみてください。

着付師・着付講師。
一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。
美容師から転身し、24歳で教室を開講。
のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。
着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。
YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。
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