
「身長が高いと着物って似合わないのかな…?」
「レンタルやリサイクル着物、サイズが合わない気がする」
「裄丈とか身幅とか、どこを見て選べばいいのか分からない…」
そんなふうに、着物のサイズに不安を感じていませんか?
特に、現代の着物市場では「自分の体型にぴったりの一枚」に出会うのが難しいもの。
レンタルやリサイクル着物に惹かれても、身丈や裄丈が合わず、購入をためらってしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、着物初心者〜中級者の女性に向けて、以下の3つのポイントを中心に丁寧に解説していきます。
- 身丈・裄丈・身幅、それぞれの基準や測り方
- 背が高い・低い体型別に調整する具体的な工夫
- サイズの合わない着物でも快適に着る方法
着物は「ぴったり合うサイズでないと着られない」わけではありません。
調整次第で美しく着こなすことができるのです。
さらに、加藤咲季さんの動画の内容を参考にしながら、体型に合う着物の選び方と調整のコツを、わかりやすくお伝えしていきます。
身丈(みたけ):丈の長さを知ってぴったり合わせる
身丈は「着物の着姿」を決めるもっとも基本的な寸法の一つです。
身長とほぼ同じ長さで仕立てられていることが多く、「丈が足りない」「引きずってしまう」などの悩みが生じやすいポイントでもあります。
特にレンタルやリサイクル品では「自分の身長にぴったり」というわけにはいかない場合が多く、不安を感じる方も多いでしょう。
しかし、身丈にはある程度の「許容範囲」があり、さらに「おはしょり」と呼ばれる着付けの工夫によって、長さをある程度自由に調整できます。
この章では、身丈の基本知識と調整方法について解説します。
身丈とは?着物のどこを測る?
身丈(みたけ)は、「着物の背中心から裾までの長さ」を指します。
着物を着たとき、首の後ろ(衣紋の下)から足元までの長さがこれに該当します。
一般的には「身長=身丈」が理想とされますが、これは「対丈(ついたけ)」という、着物の裾を引きずらずにそのまま着る着方に基づいた考え方です。
現代ではほとんどの女性が「おはしょり」(帯の下で着物を折り返す部分)を作って着るため、身丈にはある程度の余裕があっても問題ありません。
そのため、身長よりも少し長めの着物であっても、折り返すことで調整できるのです。
反対に短すぎる場合は「おはしょりが作れない」「足首が見えてしまう」といった見た目の問題につながるため、短いものには注意が必要です。
身丈の許容範囲と調整方法
着物の身丈は「身長±5〜10cm」が目安とされています。
たとえば身長160cmの方であれば、150〜170cm程度の身丈であれば着用可能とされています。
重要なのは、「おはしょりでどのくらい調整できるか」という点です。
着物の前部分を内側で折り返し、帯の下に入れることで、多少長くても着丈を調節することができます。
この「おはしょり」をしっかり作れば、裾が引きずることもありません。
逆に、着物が短くておはしょりが取れない場合は、「対丈」で着るという選択もありますが、初心者にとっては難易度が高いためおすすめしません。
着丈が短い着物を着たい場合は、以下のような工夫が有効です。
- 腰紐を高めの位置(ウエストより上)に結ぶ
- 補整タオルなどで腰回りの高さを出し、丈を稼ぐ
- インナーや長襦袢で露出を調整する
これらの調整方法については、加藤咲季さんの動画【背中の紐が見えてしまうときの対処】でも紹介しています。
高身長で帯下から紐が見えてしまうという悩みにも、身丈と腰紐の位置が密接に関係していることがわかります。
裄丈(ゆきたけ):腕の長さが美しさを左右する
裄丈(ゆきたけ)は、着物を着たときの「袖の長さ」を決める重要な寸法です。
とくに手首から先が出すぎていたり、逆に手が隠れてしまったりすると、着姿全体のバランスが崩れてしまいます。
身丈よりも調整が難しく、購入やレンタルの際にも最も慎重になるべきポイントと言えるでしょう。
裄丈を正しく理解し、自分の体型に合った長さを見極めることが、着物を美しく着るための第一歩となります。
裄丈の正確な測り方(背中心→手首)
裄丈とは、背中の「首の付け根(背中心)」から肩を通って手首のくるぶし(手首の突起部分)までの長さを指します。
通常、洋服の「袖丈」とは違い、肩幅と袖丈を足し合わせたような寸法と考えるとわかりやすいです。
具体的には以下の2つを足して計算します。
- 肩幅(背中心から肩先までの長さ)
- 袖丈(肩先から手首のくるぶしまでの長さ)
たとえば、肩幅が24cm、袖丈が46cmであれば、裄丈は70cmとなります。
着物や長襦袢を選ぶ際には、自分の裄丈±2〜3cm以内のものが望ましいとされます。
このように、裄丈の測り方には正確さが必要ですが、背が高い人や手の長い方など、既製品でぴったり合うものを見つけるのが難しい場合もあります。
裄丈の許容範囲と微調整テクニック
裄丈の許容範囲は±1.5〜3cm程度とされ、身丈よりも調整の自由度が小さいのが特徴です。それでも、着付けの際の工夫次第で見た目を整えることができます。
加藤咲季さんの動画、【着方だけで裄を長くする方法】では、裄丈が短い場合に「着付けだけで裄を3cm長く見せる方法」が紹介されています。
これを踏まえ、以下の3つの工夫が効果的です。
- 首回りに空間を作る:襟元を詰めすぎず、ほんの少し後ろに引いて首元に空間を作ると、袖が下に引っ張られて長く見えます。
- 襦袢と着物の襟をあえてずらす:通常は襟をぴったり重ねますが、意図的にずらすことで裄丈に余裕を持たせられます。
- 広襟の折り返しを浅めにする:襟の折り返しを浅くすることで、肩から袖へかかる生地の長さが増し、袖が下に下がります。
このように、着付けの段階で調整することで、裄丈の短さをある程度カバーすることができます。
ただし、3cm以上の差がある場合は、やや工夫が必要になります。
なお、裄丈が長すぎる場合は、袖口の折り返しや肌着でカバーする方法もありますが、初心者にとっては難易度が高いため、無理に合わない裄丈を選ばないように注意しましょう。
身幅(みはば):体型に合う幅で着崩れを防ぐ
身幅(みはば)は、着物を美しく、そして快適に着こなすための「ゆとり」を決める重要な寸法です。
身幅が合っていないと、着物がはだけたり、逆に余りすぎてモコモコとした印象になってしまいます。
とくにヒップラインにフィットしているかどうかが、立ち姿・座り姿の印象に大きな差を生みます。
体型に不安を感じる方や、リサイクル着物を着たい方にとって、身幅の基準と調整方法を知ることは安心して着物を選ぶための大きな助けとなります。
身幅の測り方・構成(前幅・後幅+衽)
身幅とは、「着物を前で重ねたときの全体の幅」を指し、以下の3つで構成されます:
- 前幅(まえはば):身頃の前側、衽(おくみ)と重なる部分
- 後幅(うしろはば):背中側の幅
- 衽幅(おくみはば):着物の前面で縫い付けられた布の幅(約15cm)
これらを合計した数値が「身幅」となり、一般的には「ヒップサイズ÷2+5〜6cm」が基準とされています。
たとえばヒップ90cmの場合、身幅は約50〜52cmが理想です。
ただし、寸法が合わない着物を調整して着る場合、少し幅が足りなくても問題ありません。
加藤咲季さんも、裾さばきや着付け方で十分にカバーできると解説しています。
身幅が合わない場合の対処法
身幅が足りない場合、着物を重ねる前幅が狭くなり、歩くときや座るときに「はだけやすくなる」「おはしょりが安定しない」といった問題が起きがちです。
しかし、着付け次第でこれらを回避することが可能です。
以下のような工夫が有効です。
➀腰紐の締め方で布をキープする
腰紐を強めに締めて着物をしっかり留めることで、はだけを防止できます。
➁布の重なりを工夫する
重なりの位置を少しずらし、前幅が狭くても裾が開かないように調整できます。
③補整で凹凸を減らす
ウエストやヒップにタオルを巻くことで、布の密着性が高まり着崩れを防ぎます。
逆に身幅が広すぎる場合は、前合わせの位置を深く取りすぎないよう注意し、スッキリとした着姿になるよう布の処理を意識することが大切です。
なお、加藤咲季さんの動画【背中の紐が見えてしまうときの対処法】では、腰回りの補整によって紐や帯が安定しやすくなる工夫が紹介されています。
身幅が足りずに着崩れしやすい方にとっても、非常に参考になる内容です。
ケース別・実践サイズ調整のコツ
着物は「寸法がぴったり合っていないと着られない」と思われがちですが、実は着方や補整、着付けの工夫で調整できる部分が多く存在します。
とくにレンタルやリサイクル品、母娘間での着回しなど、現代の着物事情では“ちょっとサイズが合わない”という場面は珍しくありません。
この章では、具体的なケースごとに「実践的な対処法」を紹介します。着物をあきらめず、自分らしく着るための参考にしてください。
ママ振袖・母娘での着用ポイント
「ママ振」と呼ばれる母親の振袖を娘が着るケースでは、サイズ感にギャップが生じることがよくあります。
特に身丈や裄丈、身幅が合わず、「なんとなくしっくりこない」と感じることも。
こうした場合、着付けのポイントとして意識したいのは以下の点です。
- 腰紐の位置を調整する
背の高い娘さんが着る場合、おはしょりが短くなりやすいため、腰紐を低めに結ぶと丈を稼ぎやすくなります。 - 半襟や伊達衿で視覚的なバランスを取る
裄丈が短い場合には、襦袢の袖口や半襟の見せ方でカバーできます。半襟が多く出ることで華やかさも加わります。 - 補整で体型差を埋める
親世代と娘世代ではウエストの位置やヒップのボリュームが異なるため、タオルで凹凸を埋めて着崩れを防ぎます。
これらの調整は、咲季さんの動画【着方だけで裄を長くする方法】でも紹介されているように、「着付けで裄を伸ばす」「襟の位置をずらす」といった技術と組み合わせることで、より自然に仕上げることが可能です。
背の高い人・低い人それぞれの工夫
背の高さによって気になるポイントは異なります。以下、それぞれの調整ポイントをまとめます。
■ 背の高い人の場合■
・おはしょりが短くなりがち
→ 腰紐を低く結ぶ/裾を引き気味に着ておはしょりを確保
・紐や伊達締めが見えやすい
→ 背中の紐を低い位置に締め、補整でくびれを埋めてカバー
詳しくは【背中の紐が見えてしまうときの対処法】を参照。
■ 背の低い人の場合■
・着物が長すぎる
→ おはしょりを多めに折り返し、腰紐を高めに結ぶことで丈感を整える
・裾がもたつく
→ 下前(したまえ)のつま先を「手をひっくり返すようにして斜め上に上げる」と、裾がすぼまりすっきりとした印象に仕上がります。
この裾つぼまりのテクニックは、加藤咲季さんの動画【裾がすぼまらないなら◯◯をしましょう!】で実演されています。
また、動画【身幅の広い着物の着方】では、つま先を上げる際に「小指・薬指・中指を使って持ち上げる」という具体的な指使いまで紹介されています。
背の低い方にありがちな「裾が広がって短足に見える」悩みは、このような下前の扱いひとつで驚くほど改善されます。
ぜひ動画も参考に、試してみてください。
まとめ
着物は「サイズが合っていないと着られない」と思われがちですが、実際には着方や工夫次第でさまざまな体型に対応できる柔軟性があります。
本記事では、着物の三大寸法「身丈・裄丈・身幅」それぞれの意味や許容範囲、そして具体的な調整方法を紹介してきました。
身丈は「おはしょり」で、裄丈は「襟の調整」で、身幅は「補整と締め方」で対応できる――。
そう知ることで、「この着物、サイズが合わないから諦めよう」と思っていた一枚にも、もう一度チャレンジしたくなるはずです。
大切なのは、完璧に合うものを求めることよりも、「今あるものをどう着こなすか」。
着物は、工夫しながら自分の体に合わせていく文化です。
あなたらしい着姿を、安心して楽しめる一助になれば幸いです。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。