
「夏の着物にどんな帯締めを選べばいいの?」
「素材や色の違いが多すぎて、どう選べば正解かわからない……」
「涼しげに見える帯締めって、やっぱり素材や組み方が関係あるの?」
夏の着物や浴衣を美しく着こなすために欠かせないのが、帯まわりの小物選びです。
特に帯締めは、見た目の涼感やコーディネートのバランスを左右する重要な存在。
しかし、夏ならではの素材や組み方、色の選び方には迷いがつきものです。
この記事では、次のような疑問を持つ方に向けて、夏の帯締め選びのポイントを詳しく解説します。
- 夏に適した帯締め素材(絽・紗・麻・レースなど)の違いとは?
- 涼しく見せる色合わせとTPOにふさわしい配色ルール
- 帯締めの幅や組み方で変わる装いの格と印象
また、着付け現場でも好評の加藤咲季さんの動画【帯揚げの使える色、使えない色とは?】を参考にしながら、選び方のコツを丁寧にご紹介します。
夏の帯締めに見られる素材感と組み方の特徴
夏の着物や浴衣を涼やかに着こなすためには、見た目だけでなく体感的にも涼しく感じられる小物選びが大切です。
特に帯締めは面積こそ小さいものの、素材や編み方の違いによって大きく印象が変わります。
通気性や見た目の軽やかさを意識しながら、自分のスタイルに合った一本を選ぶことで、全体の装いに一層の品格と快適さが加わります。
ここでは、夏によく使われる帯締めの素材と特徴を中心に解説します。
夏向け帯締めに見る“透け感”と組みの工夫
夏用の帯締めは、見た目の「涼しさ」を演出するために、組み方や素材に特徴があります。
特に“透け感”のある組み方が夏帯締めの大きなポイントです。
代表的なのが「レース組」や「涼感組」と呼ばれるタイプで、組み目にあえて隙間を作ることで、光が通り抜けるような軽やかさを生み出しています。
帯締めそのものに絽や紗といった織り名を使うわけではありませんが、視覚的な涼やかさを意識した設計は共通しています。
たとえば、紗組風に緩く編んだ帯締めや、芯なしで柔らかく仕上げた平組の帯締めは、厚みが抑えられ、帯周りがスッキリ見えるため盛夏の着こなしにぴったりです。
透け感があることで、濃い色でも重くならず、上品で軽快な印象を与えます。
加藤咲季さんの動画でも「夏の小物は“重く見せない工夫”が大事」と語られており、帯締めの選び方一つで着姿全体の印象が大きく変わることが強調されています(※)。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
夏の帯締めに多い“組み方”のバリエーション
夏の帯締めでは、「素材」だけでなく「組み方」も涼しさを演出する重要な要素です。
通年の帯締めに比べて、夏用は空気を通しやすいゆるめの組み方がされていることが多く、見た目にも軽やかな印象を与えます。
代表的なのが「レース組」や「紗組風」の帯締めで、組み目に意図的な隙間があることで透け感が生まれ、清涼感が感じられます。
また、芯を入れず柔らかく編まれたタイプも多く、帯回りがふっくらせずスッキリまとまるのが特徴です。
加藤咲季さんの動画でも、「帯まわりがもたつくと暑苦しく見えるため、組み方や質感で“抜け”を作ることが大切」と紹介されています。
素材そのものに加え、組みの違いにも目を向けることで、見た目の爽やかさだけでなく着心地も格段にアップします。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
夏小物の衣替えルールと使える期間
夏用の帯締めを取り入れる際に迷いがちなのが、「いつから使えばいいのか」「どこまで使っていいのか」という時期の問題です。
着物の季節感を大切にするためには、素材だけでなく“いつ何を使うか”という衣替えのタイミングも押さえておく必要があります。
ここでは、夏の帯締めが活躍する具体的な時期や、通年使用との違いを解説します。
帯締めの“通年用”と“夏専用”の違い
帯締めには季節を問わず使える「通年用」と、夏の装いに合わせて作られた「夏専用」の2種類があります。
通年用は絹や化繊でできた丸組・平組が多く、比較的しっかりとした厚みと密度があるのが特徴です。
これに対して、夏専用の帯締めは、レース組などの“隙間のある組み方”で、通気性や透け感を重視して作られています。
通年用でも、淡い色や明るいトーンであれば夏に使えるケースもありますが、明確な透け感や涼感を演出したい場合は、夏専用の帯締めを選ぶ方が安心です。
着用時期(単衣~夏)に合わせる方法
帯締めを“夏仕様”に切り替える時期は、おおよそ6月から9月上旬までが目安です。
この期間は、着物も単衣から薄物(絽や紗)に変わり、見た目にも体感的にも涼やかなコーディネートが求められます。
6月の単衣には“涼しさを感じさせる色味”の帯締めからスタートし、7~8月の盛夏には本格的な透け感素材の帯締めに。
9月に入ると、地域や気候にもよりますが、少しずつ秋を意識した色味に戻していくと季節の変化を自然に演出できます。
なお、都市部の冷房環境や、行事の格によっても適した素材は変わります。そうした調整がしやすいのも、帯締めの奥深さの一つです。
色選びとTPOを考える配色のコツ
夏の帯締めは、素材だけでなく「色」が印象を大きく左右します。
涼しげに見せるために寒色系を選ぶ方も多いですが、着物や帯との相性を考慮せずに選ぶと、全体のコーディネートがちぐはぐになってしまうことも。
特にフォーマルとカジュアルで求められる「格」や「華やかさ」も異なるため、TPOに応じた色選びが重要です。
ここでは基本の合わせ方と、シーン別の配色例を紹介します。
帯や着物との相性を考える基本ルール
帯締めの色は、帯や帯揚げの中に使われている色とリンクさせると、自然な一体感が生まれます。
加藤咲季さんも「薄い色を2色ほど持っているとかなり使いまわせる」と話されています。
たとえば、グレー・生成り・淡いピンク・ラベンダーといった「中間色」は、ほとんどの着物や帯に合わせやすく、色合わせが苦手な方にも安心です。
一方で、ビビッドなブルーやショッキングピンクなどの強い色は、差し色として非常に映える反面、帯との調和を考える必要があります。
色を選ぶ際は「着物・帯・帯揚げ・帯締め」のどこかに“共通する色み”を入れることで、全体に統一感が生まれます。
逆にすべてが違う色だと、チグハグな印象になりやすいため注意が必要です。
フォーマル/カジュアル別のおすすめ配色
フォーマルな場では、白・銀・淡い金・クリームなど、控えめで上品な色味の帯締めがふさわしいとされています。
特に絽の訪問着や色無地には、光沢感のある帯締めを選ぶと格調高くまとまります。
レースのように透けすぎる帯締めはフォーマルには不向きな場合もあるため、TPOを確認することが大切です。
一方、カジュアルな浴衣や小紋に合わせる場合は、遊び心のある色や柄の帯締めを取り入れてOKです。
季節感を出すなら、夏らしい水色・薄紫・ミントグリーン・珊瑚色なども人気です。
三分紐に帯留めを添えれば、アクセサリー感覚で楽しむこともできます。
加藤咲季さんも「ショッキングピンクは若干強いけれど、アンティーク好きには◎」「ブルーは年齢問わずアクセントになる」と具体的な配色例を紹介しています(※)。
自分の肌色や年代に合う色を少しずつ試していくのも、着物の楽しみの一つです。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
帯締めの格と幅で雰囲気を変える
帯締めは、単なる飾りではありません。
組み方や幅の違いによって、着姿全体の“格”や“印象”を大きく左右する重要なアイテムです。
特に夏の装いでは、軽やかさや爽やかさを意識しつつ、シーンに合った格式を守る必要があります。
ここでは、帯締めの幅や構造によってどのように印象が変わるのかを解説し、装いの雰囲気を自由に操るコツをご紹介します。
幅・組み方による礼装と普段着の違い
帯締めの「幅」は、見た目の印象とTPOを決める大切な要素です。
フォーマル向けには、しっかりとした平組や丸組の太めタイプが定番。
組み目も緻密で、安定感や格調を演出します。
特に絽や綴れ帯との組み合わせでは、帯締めも格を合わせて選ぶのが基本です。
一方、カジュアル向けには、レース組や細めの紐(例えば三分紐・四分紐)が人気です。
通気性や見た目の軽やかさがあり、夏の浴衣や単衣にもよく合います。
素材や組みのゆるやかさからも「涼しさ」を視覚的に伝えやすく、普段着感覚でのコーディネートにも向いています。
つまり色と幅のバランスも、選び方の鍵になるのです。
夏向けの細帯締めを活かした装い方
夏場におすすめなのは、やはり三分紐・四分紐のような“細め”の帯締めです。
特に三分紐は帯留めと組み合わせて使うのが一般的で、アクセサリー感覚で楽しめるのが魅力。
帯回りにさりげなく個性を加えたいときにもぴったりです。
ただし細い帯締めは、結び方や素材によっては緩みやすく、着崩れの原因になることもあります。
そのため、滑りにくくしっかり締まる素材を選ぶことが重要です。
麻素材やしっかり組まれたレース組であれば、見た目の軽やかさと実用性のバランスが取れます。
また、浴衣に合わせる場合は、あえて明るい差し色や透明感のある帯留めを合わせて“涼しげで遊び心のある”装いを楽しむのもおすすめ。
加藤咲季さんの教えでも「夏の装いは色より“抜け感”を出すことが大切」とあり、細めの帯締めはまさにその要になるアイテムです。
まとめ
夏の帯締めは、単なる季節アイテムではなく、見た目の涼感・着姿の印象・TPO対応といった、着物コーディネートの完成度を高めるための重要な小物です。
着用時期は主に6~9月、単衣から夏物へと移る季節に合わせて選ぶことが基本です。
また、帯締めの色は帯や帯揚げと連動させるのがポイント。
薄い中間色を2本ほど揃えることで、幅広いコーデに応用できます。
さらに、細さや組み方によって印象や格が変わるため、シーンに合わせた使い分けも大切です。
「涼しげで快適、でも自分らしくおしゃれに」──そんな夏の着物姿を目指すなら、帯締めこそが最初に見直すべきアイテムです。
ぜひこの記事を参考に、あなたらしい一本を選んでみてください。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。