
「茶道のお稽古に着物を着るとき、どんな種類を選べばいいのか分からない…」
そんなふうに感じていませんか?
お稽古を始めたばかりの頃は、着物の格や種類、TPOの使い分けが分かりにくく、装いに自信が持てない方も多いはずです。
特に、初めて着物を揃える段階では、次のような疑問が出てきます。
- お稽古と茶会では、どんな着物を選べばいいの?
- 色無地・訪問着・小紋の違いと使い分けは?
- 季節や格に合ったコーディネートのコツは?
この記事では、そんな疑問にお応えしながら、茶道の場にふさわしい着物の種類や選び方を丁寧に解説します。
加藤咲季さんのYouTube動画をもとに、初心者でも迷わず着物選びができるよう、実践的な視点からご案内していきます。
さらに、「隠れた魅せ方のコツ」や、「季節感を取り入れた装いのセンス」についても触れていきます。
着物のある茶道の時間を、もっと気楽に、もっと楽しむために。この記事を通じて、自信を持って一歩踏み出しましょう。
初心者がまず知っておきたい“着物の格”と選び方
茶道のお稽古や茶会に参加する際、「どんな着物を選べばいいか迷ってしまう…」という声を多く耳にします。
その迷いの多くは、“着物の格”という概念を理解しきれていないことが原因です。
着物には明確な「格(フォーマル度)」があり、シーンに合った装いを選ぶことが茶道の所作や空間への敬意にもつながります。
本章では、「色無地」「訪問着」「小紋」など代表的な着物の種類とその格について解説し、さらに“紋の数”が格にどう影響するかも紹介します。
着物の格って何?色無地・訪問着・小紋の違い
「着物は種類が多すぎて、どれが茶道向きかわからない」という方も多いでしょう。代表的な着物を格の高さ順に並べると、おおよそ以下のようになります。
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訪問着(ほうもんぎ)
フォーマル度が高く、茶会や公式行事などに最適です。肩から袖、裾にかけて一枚絵のように模様が入っているのが特徴。上品な華やかさがあります。 -
付下げ(つけさげ)
訪問着と似ていますが模様の配置が控えめで、ややカジュアル寄り。上品ながらも柔らかい印象で、茶事の格式に応じて活用できます。 -
色無地(いろむじ)
無地一色の着物で、紋を入れることで格が上がります。一つ紋であれば略礼装として、お茶席全般で活躍します。派手すぎず、控えめな美しさが好印象。 -
小紋(こもん)
全体に細かい模様があるカジュアル着物。紬の小紋などは稽古着としても人気です。ただし、柄によっては茶会には不向きな場合もあります。 -
紬(つむぎ)
糸の質感が特徴的な織りの着物。着心地が良く、普段使いに最適ですが、光沢や柄によって茶会では控えたほうがいい場面もあります。
このように、着物には「色・模様・素材・縫製」によって格が定まります。
お稽古には動きやすく扱いやすい小紋や紬が適し、茶会などでは色無地や訪問着などTPOに応じた装いが求められます。
加藤咲季の動画「第五弾『化繊』着物に使われる素材」でも、化繊の気軽さと素材選びの基準について解説しています。
着物に紋がある意味と数による格の違い
着物における「紋(家紋)」は、見た目以上に重要な意味を持ちます。
紋の有無や数によって、その着物の格が大きく変わるのです。
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五つ紋:最も格が高く、結婚式や式典などで使われます。
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三つ紋:やや控えめながらも、改まった席に使えるフォーマル着。
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一つ紋:略礼装として使われる最も一般的な紋のつけ方。茶会ではこの一つ紋が推奨される場面が多いです。
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無紋:紋がない着物はカジュアル扱いとなります。
初心者が最初に選ぶなら、「一つ紋付きの色無地」が最もおすすめです。
色の選び方にも注意が必要で、淡い色は春、深みのある色は秋冬と、季節に応じて選ぶことで茶道の精神にも通じる装いとなります。
お稽古用とお茶会用、それぞれのおすすめ着物
茶道を学び始めると、まず悩むのが「お稽古にはどんな着物を着たらいいのか?」ということです。
さらに、茶会やお茶席に招かれるようになると、「この装いで失礼にあたらないか」と気後れしてしまう方も多いはず。
ここでは、お稽古と茶会、それぞれに適した着物の選び方を具体的にご紹介します。
TPOを正しく把握すれば、場にふさわしい着物選びができるようになります。
お稽古にぴったりな小紋・紬・洗える着物
お稽古着としてもっともおすすめなのが「小紋(こもん)」です。
小紋は全体に同じ柄が施されたカジュアルな着物で、柄の雰囲気によって柔らかな印象にもシックな印象にも仕上がります。
特に落ち着いた色味の小紋は、茶道の場にもよく馴染みます。
もう一つ、お稽古着として人気なのが「紬(つむぎ)」です。
紬は糸の節が特徴の織物で、さらりとした肌触りと丈夫さが魅力。
着崩れしにくく、繰り返し着ても疲れにくいため、繰り返し練習する日々にぴったりです。
そして見逃せないのが「化繊(ポリエステル)の洗える着物」。
加藤咲季さんも、初心者には特におすすめと語っています(※)。
汚れを気にせず自宅で洗えるので、気楽に着ることができ、練習中の所作にも集中できます。
特に着物に慣れていない初心者のうちは、食事や動作で汚れやすい場面も多いため、まずはこうした「気軽で丈夫な着物」から始めると、着物を楽しむハードルがぐっと下がります。
※参考動画:第五弾『化繊』着物に使われる素材
茶会・お茶席に適した色無地・付下げ・訪問着
お茶会や正式なお茶席では、「場の格」にふさわしい着物を選ぶことが大切です。
特に“亭主への敬意”や“空間との調和”が重視される茶道では、着物の選び方にも慎重な判断が求められます。
茶会で最も多く選ばれているのが「色無地(いろむじ)」。
無地染めの一色で、落ち着いた雰囲気を持ちつつ、紋を入れることで礼装にもなります。
特に“一つ紋”入りの色無地は、略礼装として茶会や初釜に最適な装いです。
さらに格式が求められる場では、「付下げ」や「訪問着」が候補になります。
付下げは模様が控えめに施されており、訪問着はより豪華で華やか。
どちらも茶席の格式に応じて選びますが、華美になりすぎないよう、柄や色味は上品さを意識することが重要です。
茶道の場では、周囲の空間に馴染む“控えめな美しさ”が最も評価されます。
だからこそ、華やかすぎず、凛とした佇まいを意識した着物選びが、相手への敬意を示す第一歩となるのです。
季節で選ぶ・柄で選ぶ、着物の色と素材のポイント
茶道の世界では、「季節を装いに映す」ことも大切な所作のひとつとされています。
着物はその季節感を最も豊かに表現できる装いです。
だからこそ、色や柄、素材を上手に選ぶことは、茶道の心をより深く体現することにつながります。
この章では、四季ごとの着物選びのポイントと、季節を問わず安心して選べる柄について解説します。
知識としてだけでなく、日々の実践にも役立つ内容ですので、着物選びに迷ったときの指針にしてください。
四季ごとの素材と柄選びのコツ
まず意識すべきは、季節によって着物の素材を変えること。
特に春夏と秋冬では、見た目だけでなく体感温度にも大きな差が出ます。
春・秋には、袷(あわせ)と呼ばれる裏地付きの着物が基本です。
色は淡い桜色や若草色、柿色や深緑など、移りゆく自然をイメージしたものが好まれます。
模様も季節の花や草木を取り入れたものが上品です。
夏になると、単衣(ひとえ)や薄物の季節。
素材では、春秋は絹や交織(ポリエステル混)などの自然な風合いのもの、夏は麻や洗える化繊など、通気性や扱いやすさも重視しましょう。
特に初心者のうちは、気軽に洗えるものが重宝されます。
花柄以外の安心して選べる文様とは
季節感を表すといっても、「花柄=春」と決めつけてしまうと、コーディネートの幅が狭まってしまいます。
むしろ、年間通して安心して使える文様を知っておくことで、着物選びはぐっと楽になります。
たとえば、「格子」「縞(しま)」「流水」「雲取り」「雪輪」などの文様は、季節に左右されにくいモチーフです。
こうした柄は、抽象的・幾何学的な要素を含んでいるため、汎用性が高く、初心者にも安心しておすすめできます。
特に茶道の世界では、あまり主張の強すぎない、控えめで品のある柄が好まれます。
だからこそ、「主張しすぎない柄選び」は、見た目の美しさだけでなく“空間を尊重する”という意味でも大切なのです。
柄だけでなく「色」もまた、季節の表現手段。
春には淡いピンクや若草色、秋にはこっくりとした茶系や深緑、冬には紺やグレーなど、自然からヒントを得て選ぶと失敗がありません。
初心者のためのコーディネート&実例
初めて着物を揃えるとき、「着物と帯、小物の組み合わせが分からない」と感じる方は多いものです。
お店で見てもピンと来ず、「なんとなくバラバラに見える…」と悩むこともあるでしょう。
けれども、いくつかの基本ルールと実例を知っておくことで、誰でも調和の取れたコーディネートができるようになります。
この章では、初心者が失敗しないための組み合わせのコツと、加藤咲季さんが動画で実際に紹介している「実用的な装い例」をもとに、すぐに真似できるコーディネートをご紹介します。
着物+帯+小物のおすすめセット構成
まず基本となるのが「着物・帯・小物」のバランスです。初心者には以下のような組み合わせがおすすめです。
- 着物:落ち着いた色無地または小紋(淡い色〜グレー系)
- 帯:名古屋帯または半幅帯(シンプルな柄 or 無地)
- 帯揚げ・帯締め:白〜淡いピンク、ベージュ、グレーなどの中間色
加藤咲季さんは、「淡いピンク」や「生成りの白」が一年を通じて合わせやすい万能カラーだと解説しています(※)。
逆に、ビビッドな色やショッキングピンクは、他の小物との調和が難しくなるため、初心者には不向きです。
帯締めも同様で、「中間色×中間色」または「淡色×濃色」のように、どこかにコントラストを加えると引き締まった印象になります。
小物の色を統一しすぎると「のっぺり」した印象になりますので、ほんの少し色の幅を持たせるのがポイントです。
最初は「控えめでまとまりのある組み合わせ」から始めると、全体の印象が整いやすくなります。
※参考動画:帯揚げの使える色、使えない色とは?
汚れ対策や所作に配慮した素材選び
着物を着てお稽古や茶会に参加する際、意外と気になるのが「汚れ」や「動きにくさ」。
初心者のうちは、緊張や不慣れから、食べ物をこぼしたり、所作の途中で着崩れが起きたりすることも少なくありません。
加藤咲季さんは、ポリエステルなどの「化繊着物」のメリットを強調しています。
自宅で手軽に洗えること、しわになりにくく扱いやすいことは、練習着として非常に重要なポイントです。
また、お稽古では「脱ぎ着しやすいこと」も大切です。
加藤さんは、ワンピース型や上下セパレート型の肌着を使い分ける工夫を紹介しており、季節や動作に応じた快適な着こなしを提案しています(※1)。
さらに、足元にも注意が必要です。
加藤さんは、初心者には「クッション性があり鼻緒が太い草履」をすすめています(※2)。
疲れにくく、足の痛みを防げるため、安心して動くことができます。
所作の美しさは「着崩れしない装い」から生まれます。
練習用・お出かけ用のどちらであっても、無理のない素材選びが“美しい動き”をサポートしてくれるのです。
※1参考動画:肌着の種類
※2参考動画:着物の時の履物について語ります
まとめ
茶道のお稽古やお茶会にふさわしい着物選びは、決して難しいものではありません。
ポイントは、「TPOに応じた格の理解」「季節感のある色柄選び」「初心者にも扱いやすい素材」を押さえることにあります。
まず、日常のお稽古には動きやすく洗える小紋や紬が安心で、茶会では一つ紋の色無地や控えめな訪問着などが礼儀に適した装いになります。
そして、着物の素材や柄は季節に調和させることで、茶道の精神「和敬清寂」にも通じる美しさが表現されます。
「何を着ればいいか分からない」と悩む時間も、茶道を学ぶ喜びの一部です。
この記事をきっかけに、自分らしく、心地よく、茶道と向き合える一枚に出会っていただければ幸いです。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。