
「結婚式やお宮参り、夏のフォーマルには紗?それとも絽?」
暑さの厳しい季節に訪れる結婚式や式典、お宮参り。
そんな特別な日には、涼しげで上品な和装で臨みたいものです。
でもいざ夏着物を選ぼうとすると、「絽と紗って何が違うの?」「どちらがフォーマル向き?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、以下のような疑問に丁寧にお答えしていきます。
- 絽と紗、それぞれの素材の特徴と着用シーン
- 結婚式やお宮参りなど、シーン別の正しい選び方
- 長襦袢や帯、小物の合わせ方で印象を整えるコツ
また、単にTPOに合った装いを目指すだけでなく、「透け感の美しさ」「涼しさ」「上品さ」まで考慮した和装選びのコツも紹介します。
着物初心者の方でも安心して読める内容ですので、ぜひ参考になさってください。
紗と絽、それぞれの素材と特徴を理解しよう
夏着物の代表格とも言える「紗」と「絽」。
どちらも薄物でありながら、その織り方や質感には明確な違いがあります。
特にフォーマルな場で着用する場合、どちらを選ぶかで印象も変わります。
まずはそれぞれの素材の特徴とTPOへの適合度を整理しておきましょう。
絽(ろ)の特徴とTPO
絽は、平織りの中に一定間隔で「すき間(目)」を織り込んだ夏専用の織物です。
織り目が水平に並ぶことで、見た目に清涼感があり、通気性にも優れています。
絽は「夏のフォーマル着物の定番」として知られ、訪問着や色無地など礼装としての活用度が高いのが特徴です。
特に結婚式や式典など改まった席には、絽の訪問着や附下がふさわしいとされています。
絽の長襦袢や白系の半衿との組み合わせで、凛とした上品な印象が完成します。
一方で絽は「品の良さ」が引き立つ反面、着崩れが目立ちやすいため、初めて着る方は着付けに少し練習が必要です。
清潔感を大切にしたいフォーマルな夏の場面には、安心して選べる一枚です。
紗(しゃ)の特徴とTPO
紗は、絽よりも透け感が強く、縦糸と横糸を絡ませて隙間を作る「からみ織り」による生地です。
空気を通しやすく、見た目にも涼やかで軽やか。
そのため、絽に比べてややカジュアルな印象を持ちます。
とはいえ、紗の中でも織りの細かいものやデザインの落ち着いたものを選べば、セミフォーマルや略礼装の場にも十分対応できます。
たとえば、お宮参り、授業参観、茶会など、きちんと感は保ちつつも、多少柔らかさが求められる場面に適しています。
涼しさと柔らかな女性らしさを演出したい場面では、紗は強い味方になってくれるでしょう。
夏のフォーマルシーン別・素材選びのポイント
夏に訪れるフォーマルな場面は、シーンによって求められる装いの格や印象が微妙に異なります。
特に絽と紗はどちらも「薄物」ですが、TPOに合った選び方を誤ると場にそぐわない印象を与えることも。
ここでは、実際の場面別にふさわしい素材選びのポイントを整理しておきましょう。
結婚式・式典では絽
結婚式や叙勲、式典などの正礼装が求められる場では、迷わず「絽」の訪問着や附下を選びましょう。
絽は正式な薄物として認知されており、きちんとした品格と清涼感を両立できる素材です。
絽の訪問着にあわせる長襦袢や半衿も、必ず夏用の絽素材や絽目のあるものを選びます。
透け感があるため、下に着るものの色や柄が影響しやすく、白や淡色を基調にするとより上品な印象に整います。
帯は袋帯、草履も格のある夏用(エナメルや織物)を用意し、バッグもフォーマル寄りにまとめましょう。
結婚式では新郎新婦との親族関係、式の規模によっても求められる格が異なるため、控えめかつ正統な印象の絽を選ぶことで間違いのない装いが整います。
授業参観・お宮参りは紗・絽カジュアル
一方で、授業参観やお宮参り、ランチ会など「きちんと感」は求められつつも格式ばらないシーンでは、「紗」や柔らかい印象の「絽」を選ぶのがおすすめです。
紗はからみ織りによる通気性の高い素材で、見た目にも軽やか。
紗の小紋や付下であれば、帯次第でセミフォーマルな場にも十分対応可能です。
たとえば絽綴れ帯や夏名古屋帯を合わせれば、やわらかい印象を保ちつつ「きちんと感」も演出できます。
授業参観や祖父母との食事会など、かしこまりすぎず上品に見せたい場面では、紗の淡い色目や落ち着いた柄を選ぶことで好印象を与えられるでしょう。
またお宮参りでは、白系の紗着物に柔らかな小物を合わせると、赤ちゃんとの写真映えも良く、清潔感を演出できます。
小物で完成させる夏の和装コーデ
夏のフォーマル和装は、着物の素材や柄だけでなく、長襦袢や半衿、帯まわりの小物、草履やバッグといった“周辺アイテム”によって格が大きく左右されます。
とくに透け感のある絽や紗では、下に着るものや小物選びが印象に直結します。
ここでは、TPOにふさわしい品格を保ちつつ、暑さに配慮した涼やかな小物の選び方を解説します。
長襦袢と半衿、透け対策の基本
絽や紗といった夏の薄物では、下に着る長襦袢や半衿が表から透けて見えるため、素材・色・質感の選び方に注意が必要です。
フォーマルシーンにふさわしいのは「絽の長襦袢」。
白や淡い色を選び、すっきりとした清潔感を保ちます。
加藤咲季さんも動画内で「夏用には絽の半衿と長襦袢を合わせるのが基本」と解説しています。
特に半衿は、白の絽を選ぶことで礼装感が出るとともに、襟元の清楚さを引き立てます。
麻や綿などのカジュアル素材の半衿は避け、正絹またはそれに準ずる見栄えのものを使用するのが安心です。
また、透け感が強く出る絽では、肌着や補正具のラインが浮かないよう、着用前に必ず鏡で確認を。
ユニクロのエアリズムや綿の和装肌着などを上手に使い、涼しさと品格を両立させましょう。
参考動画:肌着の種類
帯・帯締め・帯揚げの合わせ方
夏のフォーマル帯には、透け感のある「絽綴れ」「絽の袋帯」などが定番。
柔らかすぎず格がありながら、見た目に重さを感じさせない素材選びがポイントです。
帯締めや帯揚げも「夏用」の絽や紗素材が用意されているため、必ず季節に応じたものを選びます。
加藤咲季さんは、帯揚げについて「淡い色ほどコーディネートの幅が広がる」とアドバイスしており、気なりの白やグレーなど、涼感と清潔感のある色を推奨しています。
また、帯締めはラメや金銀を控えめに含んだ夏向きデザインを選ぶことで、上品な華やかさを添えることができます。
参考動画
・帯揚げの使える色、使えない色とは?
・帯揚げを綺麗にするポイントを超詳しく解説
草履バッグは夏素材で涼しさと上品さ
草履やバッグも、夏らしい素材感を取り入れることで、全体の装いに統一感が生まれます。
たとえば、エナメル加工ではなく、絽草履や籐・麻のバッグ、ラフィア風の夏用草履など、素材から季節感を演出するのがおすすめです。
加藤咲季さんの動画でも「履物は格も重要だが、見た目の涼しさと歩きやすさも大切」と語られており、鼻緒の太さやクッション性を重視した草履選びが紹介されています。
また、雨天が予想される場合には、塗りの草履にカバーをかけるなど、フォーマルを保ちながら実用性も加味した選択が有効です。
参考動画:着物の時の履物について語ります
まとめ
夏のフォーマルな場では、涼やかさと格式を両立できる「絽」が基本です。
一方、ややカジュアルな場には「紗」を上品に着こなす工夫も有効です。
どちらを選ぶ場合も、長襦袢や半衿、小物類を夏用に整え、透け感や色合わせに配慮しましょう。
帯や草履も、季節感のある素材と格を備えたものを選ぶことで、より洗練された印象に仕上がります。
TPOに応じた素材と小物選びで、夏の和装を美しく心地よく楽しんでください。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。