
「着付けを始めたいけど、道具が多すぎて何を揃えればいいのかわからない…」
そんなふうに感じていませんか?
はじめて着付けに挑戦する方にとって、名前も用途も聞き慣れないアイテムがたくさんあると、どうしても不安になりますよね。
とくに独学で始めたい人や、これから教室に通おうと思っている方にとっては「何から買えばいいの?」というのが一番の悩みどころです。
この記事では、以下のポイントを中心に、初心者さんが道具選びで迷わないよう丁寧にご案内します。
- 着付けに最低限必要な道具はどれ?
- 最初は“道具セット”で揃えるべき?
- コーリンベルトや帯板、どんな種類がある?
さらに、素材選びの注意点や、道具の使い方の基本もわかりやすく解説。
この記事を読み終えたころには、必要なものと優先順位が明確になり、自分に合ったスタートが切れるようになるでしょう。
最低限まず揃える6点セットとは?
着付けに必要な道具はたくさんあるように見えますが、実際に「最初に必要なもの」はそれほど多くありません。
初心者の方が最初に揃えるべきなのは、着物を着るための基本セット6〜8点。
これさえあれば、ご自宅での練習や教室への持ち込みも安心です。
どの道具にもそれぞれの役割があり、着崩れを防いだり、着姿を美しく整えるために欠かせません。
ここでは、まず揃えておきたい道具6点と、あると便利なプラスアイテムをご紹介します。
基本6点:腰紐・伊達締め・衿芯・帯板・足袋・長襦袢
初心者が必ず揃えるべき道具6点はこちらです。
① 腰紐(こしひも)
着物や長襦袢を仮留めするために使います。
3〜5本ほど用意すると安心。素材はモスリンやポリエステルなど、滑りにくいものが使いやすいです。
② 伊達締め(だてじめ)
胸元を平らに整えるために使います。
マジックテープ式や伸縮素材のものなど、初心者でも扱いやすいタイプがおすすめです。
③ 衿芯(えりしん)
長襦袢の半衿部分に差し込んで、衿元をシャキッとさせるための芯です。
柔らかすぎず、しっかり目の素材が◎。
④ 帯板(おびいた)
帯の前部分を平らに保ち、シワやたるみを防ぐための板状の道具。
ゴム付きタイプなら帯結びのあとでも装着しやすくなります。
⑤ 足袋(たび)
和装に欠かせない白足袋。
サイズはぴったりか、ややきつめを選ぶのがコツです。
初心者はストレッチ足袋もおすすめ。
⑥ 長襦袢(ながじゅばん)
着物の下に着るインナー。
汗や皮脂が直接着物につくのを防ぎ、着物の滑りも良くします。
ポリエステル製の洗えるものが便利です。
これらはどれも「着物を着る上での土台」となるアイテム。
中でも腰紐と伊達締めは複数本必要になるため、早めに揃えておきましょう。
参照動画:肌着の種類
+αであると便利な道具もチェック
基本6点のほか、着崩れ防止や仕上がりの美しさをサポートしてくれるアイテムもいくつかあります。
以下は、初心者の方に特におすすめの+αアイテムです。
➀コーリンベルト
長襦袢や着物の衿元を安定させるためのクリップ付きゴムベルト。
ピンポイントで着崩れを防いでくれる便利アイテムです。
➁和装ブラジャー
胸元のラインを平らに整え、帯や伊達締めがしっかり固定しやすくなります。
スポーツブラで代用する人もいますが、バストが大きい方には和装専用がおすすめ。
③補正用タオル
ウエストやくびれの凹凸を埋め、着物の落ち感を美しく整えるために使用。
フェイスタオル2~3枚あれば代用可能です。
④肌着・裾除けセット
下着として汗や皮脂汚れを防ぎます。
ワンピース型でも上下セパレート型でもOK。
ユニクロのエアリズム半袖インナーなども応用できます。
素材とサイズで選ぶ道具ガイド
着付け道具は「とりあえず一式揃えればいい」と思われがちですが、素材やサイズを意識して選ぶことで、着心地も見た目も格段に良くなります。
特に初心者にとっては、扱いやすさやお手入れのしやすさも重要なポイント。
ここでは、特に選び方に迷いやすい「腰紐・伊達締め」「帯板・帯枕・コーリンベルト」の選び方を、具体的な特徴とともにご紹介します。
素材・機能別に選ぶ腰紐・伊達締め
・腰紐(こしひも)
おすすめは「モスリン素材」。
ウール系でやや厚みがあり、滑りにくくしっかり結べるため、初心者にも安心です。
一方でナイロンやポリエステル素材の腰紐はつるつる滑りやすく、結び目が緩みがちなので、補助的な使用にとどめるのが良いでしょう。
・伊達締め(だてじめ)
伊達締めには「博多織タイプ」「ゴム付きマジックテープタイプ」があります。
- 博多織:しっかり締まり崩れにくく、見た目も美しい反面、初心者にはやや扱いにくい一面も。
- ゴム+面ファスナータイプ:簡単に着脱できる上、フィット感があるので初心者向けです。
帯板・帯枕・コーリンベルトの選び方ガイド
・帯板(おびいた)
帯の前部分を平らに保つための必須アイテム。
初心者には「ゴム付きのソフトタイプ」が特におすすめです。
帯を巻いた後でも装着でき、ウエストにフィットします。
硬すぎると動きにくく、柔らかすぎるとシワが出やすくなるため、ミドルクラスの硬さが◎。
・帯枕(おびまくら)
お太鼓のふくらみを作るための枕です。
初心者向けは「ガーゼ巻き」「紐付き」のもの。
固定しやすく、汗も吸いやすいので清潔に保てます。
形は「楕円型」や「細長タイプ」が主流。自分の背中の丸みに合うか試してみるのが理想です。
・コーリンベルト
両端がクリップになっており、ゴムで繋がっている便利道具。長襦袢や着物の衿を固定し、着崩れを防ぎます。
選ぶ際はゴムの「伸び具合」と「強度」に注目。
締めすぎず、しっかり支えるものがベストです。
道具の使い方を着付けの流れで覚えよう
着付け道具は、単体で使うのではなく「着付けの手順」に沿って活用することで、はじめて本来の効果を発揮します。
使い方を手順ごとに理解することで、より着姿が美しく、着崩れにくくなります。
ここでは、初心者が最初に覚えるべき基本の手順に沿って、各道具の使いどころや注意点をわかりやすく紹介します。
1.補正~腰紐・裾除けで形を整える
着物は身体の凹凸が少ないほど美しく着られるため、まずは補正タオルでシルエットを整えることが基本です。
くびれがある人はウエストにフェイスタオルを巻き、寸胴の形を作ります。これによって帯が下がりにくくなり、着崩れも防げます。
続いて肌着を着用したら、腰紐を2本使って長襦袢を固定。
裾が水平に保たれるよう、床と平行になる位置で結ぶのがポイントです。
※補正や肌着の着方については、「肌着の着方」で詳しく紹介しています。
2.衿周り~衿芯+コーリンベルトで美しく
衿元の美しさは、着姿の印象を左右する大切なポイント。
まずは長襦袢に衿芯を差し込んで、半衿のラインをシャープに整えます。
衿芯がないとシワが出たり、衿がへたってしまいやすくなります。
その上で、コーリンベルトを使って衿合わせを固定します。
クリップを左右の衿に留め、背中側でゴムを引っ張り気味にセットすることで、衿の開き具合をキープできます。苦しくない程度に締めるのがコツです。
3.帯まわり~帯板・帯枕・帯締めで安定
帯まわりの道具は、着姿の“仕上げ”を決定づける大切な要素です。
まずは帯を巻く前に帯板を装着します。ゴム付きの帯板であれば、先にウエストにセットしておくことで、帯のシワやたるみを防げます。
次に帯結びの工程では、帯枕を使ってお太鼓をふっくらと立体的に仕上げます。ガーゼ巻きタイプを使用すれば、滑りにくく初心者にも扱いやすいです。
最後に、帯締めで帯の中心をしっかり押さえることで、帯のズレを防止。装飾的な役割も果たすため、コーディネートのアクセントにもなります。
※帯枕や帯揚げの使い方については、動画「帯揚げを綺麗にするポイント」で詳しく解説しています。
まとめ
着付け初心者は、まず基本の6点セットを揃えるだけで十分です。
最初からすべてを完璧に用意しようとせず、必要に応じて徐々に買い足していくのがおすすめ。
教室に通う方は、講師の指示に合わせて準備すると安心です。
使い方に不安がある道具は、動画で手順を確認するとイメージしやすくなります。
自分のペースで、着物のある暮らしを楽しみましょう。
道具選びに迷ったときは「着やすさ」「扱いやすさ」を基準に。無理なく続けられることが何より大切です。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。