
「夏の茶会、どんな着物を着ればいいの?」
そんな疑問をお持ちではありませんか?
特に茶道初心者〜中級者の方にとって、暑さとTPOの両立は難しいテーマです。
- 暑いけれど上品に見える着物はあるのか?
- 夏らしくすっきり見せるにはどうすればいい?
- 茶会にふさわしい小物や色合わせが知りたい
この記事では、夏の茶会に最適な着物コーディネートのポイントを詳しくご紹介します。
夏の茶会では「涼感」と「礼儀」がポイント
夏の茶会では、見た目の「涼しさ」と、茶道の礼儀をふまえた装いの両立が大切です。
7月・8月の本格的な夏場は特に、気温が高くなるため、素材選びや色使い、着付け方にも工夫が求められます。
着物の種類やコーディネートによっては、「暑そう」「カジュアルすぎる」といった印象を与えてしまうこともあるため、TPOに配慮した着こなしを心がけましょう。
以下では、夏の茶会でふさわしい着物素材や色柄の選び方について、具体的にご紹介します。
夏着物の素材選び|絽・紗・麻、それぞれの特徴と注意点
夏用の着物には、大きく分けて「絽(ろ)」「紗(しゃ)」「麻(あさ)」の3種類があります。
それぞれ透け感のある生地で、涼しげな印象を与えてくれるのが特徴です。
「絽」は、横方向に細かな筋が入った織り方で、見た目に上品な透け感があります。
絽の中でも絹素材のものは特にフォーマルな場に適しており、茶会には最適です。
「紗」は、全体的に格子状の織りで透け感が強めですが、柄によって印象が変わります。
少しカジュアル寄りになりますので、選ぶ柄によって茶席用かどうかを判断するとよいでしょう。
「麻」は風通しがよく、特に涼しさを重視したい場合におすすめの素材です。
ただし肌触りにやや張りがあるため、好みが分かれる点に注意が必要です。
カジュアル寄りとされることもあるため、茶会では色柄選びと着付けで格調を調整することが重要です。
また、ポリエステルなどの化繊は洗いやすく扱いやすい一方で、夏場は熱がこもりやすいため、通気性や涼しさを重視するなら避けた方が無難です。
茶道の場にふさわしい色柄とデザインの選び方
夏の茶会に着ていく着物の色や柄は、「涼しさ」と「控えめな上品さ」のバランスが求められます。
例えば、真っ白ではなく「生成り」や「薄グレー」といったやわらかな中間色は、光を反射しすぎず落ち着いた印象を与えるため、夏のフォーマルな場面に適しています。
柄については、露骨に季節を主張するモチーフ(ひまわり、金魚など)よりも、「秋草」などの少し先取り感のある柄を選ぶと、茶席に調和しやすくなります。
撫子や萩、桔梗など、上品な草花柄は、季節感を演出しつつも控えめな美しさを演出します。
また、幾何学模様や抽象的な柄は現代的な印象もあり、すっきりとした着姿を演出するのに有効です。
重要なのは「涼やかで目立ちすぎないこと」。
色味や柄の組み合わせで、茶道の精神を大切にした控えめな華やかさを意識しましょう。
補正・肌着でシルエットを整える
夏の補正は「涼しさ」と「着姿の安定感」のバランスが大切です。
基本的に、暑さが厳しい日には最小限の補正で軽やかに、フォーマルな場や汗対策が必要な日はタオル補正を活用するのが効果的です。
例えば、お腹まわりだけにタオルを入れることで、汗の吸収と帯の安定を両立させることができます。
また、下着には「半袖タイプの肌着」や「浴衣用ワンピーススリップ」など、脇汗をしっかり吸ってくれる素材を選ぶと快適さが増します。
加藤さんも動画の中で、「ユニクロのエアリズムを活用しつつ、キャミソールではなく半袖タイプを選ぶのが汗対策になる」と話しています(参考動画:肌着の種類)。
お太鼓を軽やかにまとめる帯周りのポイント
夏の帯は生地が薄く柔らかいため、お太鼓が「ぽよん」とした形になりがちです。
この問題を解決する裏技として、加藤さんは「お太鼓枕の裏に芯を足す」方法を紹介しています(※1)。
帯の張りが出て、横から見ても美しいフォルムを作り出せます。
また、おはしょりがごわついたりシワになってしまう場合は、「帯の下に指を入れて脇までスッと引く」だけで簡単に整える方法も動画で解説しています(※2)。
この動作を数回繰り返すだけで、着姿全体が引き締まり、すっきりとした印象に変わります。
特に茶会のように立ち座りの多い場面では、こまめにおはしょりや襟元を整えることで、常に美しい印象を保つことができます。
参考動画
※1:柔らかい帯でもお太鼓をびしっと決める裏技
※2:おはしょりを一瞬で綺麗に直す方法
夏らしさを演出する小物選び
夏の装いでは、着物そのものだけでなく、小物使いも「涼しげな印象」を左右します。
帯揚げや帯締め、草履やバッグに至るまで、素材や色、質感の選び方によって、装い全体の軽やかさが大きく変わります。
以下では、特に取り入れやすい小物選びの工夫を紹介します。
帯揚げ・帯締め・草履で軽やかさをプラス
夏用の帯揚げは、絽目のような透け感がある生地が特徴です。
横方向に筋が入った軽やかな素材で、見た目にも風通しの良さを感じさせます。
色は「オフホワイト」や「淡いグレー」などが特に使いやすいです。
帯締めは通年使えるものもありますが、夏場は細めのものや、編み込みで隙間のあるデザインが涼やかでおすすめです。
草履に関しては、「キラッとしたラメの花緒」や「光沢のある生地」「滑りにくいゴム底」といった要素があると、フォーマルからカジュアルまで幅広く対応できます。
涼やかな印象を与えるアクセントカラーと素材選び
帯揚げや帯締めの色選びで重要なのは、「軽やかで上品な淡色」をベースにしつつ、「差し色」を1点取り入れて変化をつけること。
たとえば、グレージュ系の着物に淡いミントグリーンや薄藤色の帯締めを合わせると、涼感と洒落感が両立できます。
一方で「ショッキングピンク」や「ビビッドブルー」といった強い色は、使い方に注意が必要です。
バッグはナイロンなどの素材だとカジュアル寄りになるため、茶会では避けた方が無難です。
代わりに、竹の持ち手やかご風素材、レースをあしらったデザインなどを選ぶと、季節感と品の良さを両立できます。
暑さ対策と快適さを両立するテクニック
夏の着物で最も気になるのは「暑さ」や「汗」ですよね。涼しく見せるだけでなく、実際に快適に過ごすためには、インナーや髪型にも工夫が必要です。
着物は洋服と異なり、重ね着が前提のため、通気性や吸湿性の高い素材、そして肌に貼りつきにくい設計が重要になります。
以下に、すぐに取り入れられる工夫を2つご紹介します。
汗対策におすすめの下着とインナー
加藤さんは夏のインナー選びについて、「ユニクロのエアリズムなどを活用しつつ、キャミソールより半袖タイプの方が汗を吸って快適」とアドバイスしています(参考動画:肌着の種類)。
特に、脇汗がそのまま垂れてしまうキャミソールよりも、脇下で吸収してくれる半袖インナーの方が安心です。
また、下半身には「ステテコ」や「長めのペチコート」を合わせると、汗を吸収しつつ通気性も確保できます。
ただし、夏着物は素材によっては透け感があるため、下着の色や丈にも要注意。
透けにくく、襟ぐりがしっかり開いた和装用肌着や浴衣用スリップを選ぶのが安全です。
ムレない髪型・ヘアスタイルの工夫
髪型にも夏らしさと涼しさを取り入れると、全体の印象がより軽やかになります。
特に低い位置でのお団子ヘアは、髪をしっかりまとめることで首まわりのムレを防ぎ、涼やかに見せることができます。
「マトメージュ」などのまとめ髪用ワックスを使うことで、アホ毛を抑えつつスッキリと清潔感のある印象に。
おくれ毛はあえて作らず、ピタッとしたシルエットにすると、年齢に応じた上品な雰囲気が出しやすくなります。
「髪型も着物の一部」と考え、着姿と統一感のあるスタイルを心がけることが、涼やかで清潔感のある印象をつくる秘訣です。
参考動画:浴衣に似合う大人のヘアアレンジ
まとめ
夏の茶会にふさわしい着物コーディネートは、「涼しさ」「礼儀」「快適さ」の三拍子をそろえることがポイントです。
絽や紗など透け感のある素材を選びつつ、控えめな色柄で茶席に調和した装いを意識しましょう。
すっきりとした着姿を作るには、帯まわりの整え方や補正の仕方、肌着の素材選びなど、細かな工夫が欠かせません。
さらに、帯揚げ・帯締め・草履といった小物も、軽やかな質感と色合いを選ぶことで、涼しげな印象を引き立ててくれます。
暑さ対策としては、通気性の良い肌着や汗取りインナー、まとめ髪の工夫が有効です。
記事中でご紹介した動画リンクを参考に、ぜひご自身の装いに取り入れてみてください。
夏の茶会も、装いが整えば気持ちに余裕が生まれます。
涼やかで上品な着物姿で、心地よいひとときをお過ごしください。

着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。