失礼にならない着物マナー完全ガイド|フォーマル・セミフォーマルの場で安心して装うために

「フォーマルな場で着物を着たいけれど、『これってマナー違反?』と不安になっていませんか?」

着物に慣れていないと、場にふさわしい装いや立ち居振る舞いに戸惑うこともあります。

きちんと見せたいけれど、どこまで気を配ればよいのか迷うものです。

この記事では、以下のような疑問に応えながら、安心して着物を楽しむための基本をわかりやすく解説します。

  • TPOに合った着物や小物の選び方
  • 着崩れしにくい立ち方・座り方のコツ
  • 周囲に好印象を与えるふるまいのポイント

「着こなす」だけではない、着物にふさわしい所作と心配りの本質を一緒に確認していきましょう。

TPOに合わせた着物選びが印象を決める

はじめに、着物の格式とTPOに合った選び方について解説します。

着物は場にふさわしいものを選ぶことで、相手への礼儀が伝わり、自分も安心して振る舞えます。

着物には「格(きまり)」があり、理解せずに選ぶと場の雰囲気から浮いてしまうことも。

結婚式などでは控えめで華やかな装いが望まれ、会食や集まりでは動きやすさを重視した着物が合います。

TPOに応じた選び方は、調和と自分らしさを両立させる鍵。

格の基本を押さえ、季節や素材も考慮して整えることが大切です。

フォーマル・セミフォーマル・カジュアルの違いを理解する

着物の格は大きく3つに分けられます。

まず、最も格式が高いのが「フォーマル」。

代表的なのが留袖や訪問着で、結婚式や式典などの改まった場で着用されます。

柄の入り方や色の落ち着き、帯の豪華さなどが特徴です。

次に「セミフォーマル」。これは略礼装とも呼ばれ、友人の結婚披露宴や茶会、公式な食事会など、改まりすぎないけれども礼儀を求められる場面で着られます。

色無地や付け下げ、訪問着の中でも控えめな柄行きのものが選ばれます。

最後に「カジュアル」。

普段のお出かけや趣味の集まりなど、自由に楽しめる場で着る着物です。

小紋やウール、木綿の着物が中心で、柄も色も季節や気分で選べるのが魅力です。

このように、着物には明確な格の違いがあり、それぞれの場にふさわしい装いを心がけることが、失礼のない着物マナーの第一歩です。

昼・夜・訪問先など、場面別の装いの選び方

同じフォーマルな場であっても、時間帯や訪問先によって、適切な装いは変わります。

たとえば昼間の結婚式では、黒留袖や色留袖、華やかな訪問着が選ばれますが、夜になると光沢のある帯ややや重厚感のある装いがよりふさわしく感じられる場面もあります。

また、訪問先がご年配の方や格式を重んじる場所である場合には、控えめな色使いや古典的な柄が安心感を与えます。

逆に親しい友人宅への訪問であれば、少し柔らかく親しみのある雰囲気の着物も適しています。

迷ったときは「少し控えめなくらいがちょうどいい」と考えると、無難でありながらも品格を損なわない装いができます。

派手さや目立ちすぎる色柄よりも、場に馴染みながら清潔感と上品さが伝わるような組み合わせを意識しましょう。

小物・装飾のマナーで「清潔感と品格」をつくる

着物を装う際、小物や装飾の扱いにも細やかな配慮が求められます。

全体の印象を左右するのは、実はこうした「周辺の要素」であることも少なくありません。

帯や草履、バッグといったアイテムは単なる付属品ではなく、着物姿の完成度を高めるための重要な一部。

だからこそ、控えめで清潔感のある組み合わせや扱い方が、品格ある着こなしにつながります。

華美になりすぎず、場の格や季節に調和することが大切です。

草履・バッグ・帯まわりの選び方と扱い方

フォーマルな場では、草履やバッグも装いの格に合わせたものを選びましょう。

基本的には、光沢感のある素材や上品な色味が適しています。

草履は厚みがありすぎるものや、色や柄が派手なものは避け、淡く落ち着いた色調で、帯や着物の雰囲気と統一感のあるものを選びます。

バッグについても、あまりカジュアルな布製のものや大きすぎるものは控え、コンパクトで品の良いクラッチタイプが適しています。

ただし、実用性も大切なので、荷物が多くなる場合はサブバッグとの併用も検討するとよいでしょう。

その際、サブバッグも黒や無地で目立たないものにすると違和感がありません。

帯まわりでは、特に帯揚げと帯締めの色や結び方に気を配りたいところです。

淡い色味は品よく、きちんと感を演出できますが、しわが寄っていたり、左右のバランスが崩れていると、一気にだらしなく見えてしまいます。

帯揚げは丁寧に畳んで整え、脇まできれいに収めるよう意識しましょう。

帯締めも中央を基点にして左右が対称になるよう結び、ゆるみがないように仕上げることで、凛とした印象を保てます。

時計・香水・アクセサリーの使い方に注意する理由

着物に洋風の小物を合わせる場合は、控えめであることが第一です。

たとえば腕時計は、基本的には着物に合わせる必要のないものとされています。

どうしても必要な場合は、細身でシンプルなデザインを選び、肌なじみの良い色合いのベルトで目立たないように工夫するとよいでしょう。

また、香水も使用に注意が必要です。

和装の場は香りがこもりやすく、香水が強く香ると周囲に不快感を与えることがあります。

とくに食事を伴う場では、無香または極めて控えめに留めるのがマナーです。

アクセサリーについても、大ぶりなピアスやネックレスは避け、必要最低限の装いにとどめるのが無難です。

耳元が見えない場合は、ピアスそのものを省略するという選択肢もあります。

小物や装飾が主張しすぎないように心がけることが、着物本来の美しさを引き立てることにつながります。

相手の着物にも配慮を—和装の中での人付き合いマナー

着物を身につけると、自分の所作や装いだけでなく、周囲との関係性にも一層意識が向くようになります。

特にフォーマルな場では、自分の振る舞いが相手にどう映るかを大切に考えることが、思いやりある和装の心得です。

着物同士が集まる場では、それぞれの装いに込められた意図や背景を尊重し合うことが、心地よい空気を生み出します。

気遣いが自然にできる人こそ、和の場で一目置かれる存在です。

他人の着物に触れない・直さない・値段を聞かない

着物姿で集まる場では、つい「素敵ですね」と声をかけたくなることもありますが、そこにマナーがあります。

まず、たとえ親しい間柄であっても、他人の着物や帯に手を触れることは控えましょう。

生地や帯結びに興味を持っても、指で撫でたり、背後から帯を覗き込むといった行為は非常にデリケートな領域に入ります。

また、帯が曲がっていたり、裾が乱れていたりすると、つい手を伸ばしたくなりますが、本人からの依頼がない限り、自ら直すのは避けるのが礼儀です。

気づいたときは、そっと声をかける程度にとどめ、相手が自分で整える余地を残しましょう。

さらに気をつけたいのが、着物や帯の「値段」に関する話題です。どこで買ったのか、いくらだったのかといった質問は、場の空気を壊す恐れがあります。

和装は価格帯が非常に幅広く、思い入れや背景も人それぞれです。

評価や価値を値段で測るような印象を与えないよう、あくまで「素敵」「よくお似合いですね」といった感想にとどめることが大切です。

自然な視線と褒め方で好印象をつくるコツ

褒め言葉にも、受け手が心地よく感じられる伝え方があります。

たとえば「そのお着物、上品で素敵ですね」「色合いがとてもお似合いです」のように、全体の雰囲気や印象を言葉にするのが効果的です。

具体的な部位やブランドなどを強調するよりも、相手の空気感に触れるような表現が品よく伝わります。

また、相手の着姿をじろじろと見るのではなく、自然なアイコンタクトを保ちながら会話に集中することも、和装の場では重要です。

視線が帯や胸元にばかり向いてしまうと、たとえ悪気がなくても不快に感じる人もいます。

美しい装いをしている人に対しては、その努力や所作を称える気持ちを込めて、控えめに敬意を示すことが大人の振る舞いです。

言葉は柔らかく、態度は丁寧に。そんな振る舞いが、着物を通じた人との関わりを豊かにしてくれます。

まとめ

着物を着る場では、装いだけでなく所作や気配りも大切な要素です。

格式に合った選び方、小物の扱い、姿勢や動作の美しさが揃えば、自然と周囲に安心感を与えられます。

細かなマナーにとらわれすぎる必要はありませんが、基本を知っておくことで自信を持って振る舞えるようになります。

自分も周囲も心地よい時間を過ごすために、丁寧な装いとふるまいを心がけましょう。

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監修:加藤咲季
着付師・着付講師。一般社団法人日本スレンダー着付け協会代表理事。美容師から転身し、24歳で教室を開講。のちにオンライン講座に切り替え、累計2000名以上を指導。着姿の悩みをきっかけに「スレンダーに魅せる着付け術」を研究・体系化。現在はオンライン講座やアパレルブランド運営、SNSの発信を通じて着物の魅力を伝えている。YouTube登録者は3.9万人、Instagramフォロワー1.8万人。